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6 .\" preserved on all copies.
7 .\"
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9 .\" manual under the conditions for verbatim copying, provided that the
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23 .\"
24 .\" aeb, various minor fixes
25 .\"
26 .\" Japanese Version Copyright (c) 2001 Yuichi SATO
27 .\"         all rights reserved.
28 .\" Translated 2001-11-04, Yuichi SATO <ysato@h4.dion.ne.jp>
29 .\" Updated 2001-12-09, Yuichi SATO
30 .\" Updated 2005-11-04, Akihiro MOTOKI <amotoki@dd.iij4u.or.jp>
31 .\" Updated 2006-01-04, Akihiro MOTOKI, Catch up to LDP 2.20
32 .\"
33 .\"WORD:        alternate signal stack  代替シグナルスタック
34 .\"WORD:        establish       (スタックの) 確立
35 .\"
36 .TH SIGALTSTACK 2 2010-09-26 "Linux" "Linux Programmer's Manual"
37 .SH 名前
38 sigaltstack \- シグナルスタックのコンテキストを設定・取得する
39 .SH 書式
40 .B #include <signal.h>
41 .sp
42 .BI "int sigaltstack(const stack_t *" ss ", stack_t *" oss );
43 .sp
44 .in -4n
45 glibc 向けの機能検査マクロの要件
46 .RB ( feature_test_macros (7)
47 参照):
48 .in
49 .sp
50 .BR sigaltstack ():
51 .ad l
52 .RS 4
53 .PD 0
54 _BSD_SOURCE || _XOPEN_SOURCE\ >=\ 500 ||
55 _XOPEN_SOURCE\ &&\ _XOPEN_SOURCE_EXTENDED
56 .br
57 || /* glibc 2.12 以降: */ _POSIX_C_SOURCE\ >=\ 200809L
58 .PD
59 .RE
60 .ad
61 .SH 説明
62 .BR sigaltstack ()
63 を使うと、
64 プロセスは新しい代替シグナルスタックを定義したり、
65 既存の代替シグナルスタックの状態を取得できる。
66 シグナルハンドラが代替シグナルスタックを要求するように設定されていると
67 .RB ( sigaction (2)
68 参照)、ハンドラの実行中はそのシグナルスタックが使われる。
69
70 代替シグナルスタックを使う際の一般的な手順は、以下の通りである:
71 .TP 3
72 1.
73 代替シグナルスタックで使うメモリ領域を確保する。
74 .TP
75 2.
76 .BR sigaltstack ()
77 を使って、
78 代替シグナルスタックの存在と場所をシステムに知らせる。
79 .TP
80 3.
81 .BR sigaction (2)
82 を使ってシグナルハンドラを確立する際、
83 \fBSA_ONSTACK\fP フラグを指定することにより、
84 そのシグナルハンドラを代替シグナルスタック上で実行することを
85 システムに知らせる。
86 .P
87 \fIss\fP 引き数は、新しいシグナルスタックを指定するために使う。
88 また \fIoss\fP 引き数は、現在確立されている
89 シグナルスタックの情報を取得するために使う。
90 この操作のうち 1 つだけを実行させるには、
91 使用しない引き数を NULL に指定すればよい。
92 引き数となる構造体は、以下のような型である:
93 .sp
94 .in +4n
95 .nf
96 typedef struct {
97     void  *ss_sp;     /* スタックのベースアドレス */
98     int    ss_flags;  /* フラグ */
99     size_t ss_size;   /* スタックのバイト数 */
100 } stack_t;
101 .fi
102 .in
103
104 新規の代替シグナルスタックを確立するには、
105 \fIss.ss_flags\fP を 0 に設定し、
106 \fIss.ss_sp\fP と \fIss.ss_size\fP に
107 スタックの開始アドレスとスタックサイズを指定する。
108 定数 \fBSIGSTKSZ\fP は、代替シグナルスタックが通常必要する
109 サイズよりも充分大きく定義されている。
110 また定数 \fBMINSIGSTKSZ\fP は、
111 シグナルハンドラの実行に必要な最小サイズに定義されている。
112
113 代替スタックでシグナルハンドラが起動された場合には、
114 カーネルにより自動的に、\fIss.ss_sp\fP で指定されたアドレスは
115 動作しているハードウェアアーキテクチャに適したアドレス境界に
116 調整される。
117
118 既存のスタックを無効にするには、
119 \fIss.ss_flags\fP を \fBSS_DISABLE\fP に指定する。
120 この場合、\fIss\fP の他のフィールドは無視される。
121
122 \fIoss\fP が NULL 以外の場合、
123 \fIoss\fP に代替シグナルスタックの情報が返される。
124 これは (実質的に)
125 .BR sigaltstack ()
126 の呼び出しより先に行われる。
127 \fIoss.ss_sp\fP と \fIoss.ss_size\fP フィールドに
128 スタックの開始アドレスとスタックサイズが返される。
129 \fIoss.ss_flags\fP には以下のどちらかの値が返される:
130 .TP
131 .B SS_ONSTACK
132 プロセスが代替シグナルスタック上で実行されている
133 (プロセスが既にそのシグナルスタック上で実行されている場合は、
134 それと同じシグナルスタックには変更できない点に注意すること)。
135 .TP
136 .B SS_DISABLE
137 代替シグナルスタックが現在無効になっている。
138 .SH 返り値
139 .BR sigaltstack ()
140 は成功した場合 0 を返す。
141 失敗した場合は \-1 を返して、
142 エラーを示す値に \fIerrno\fP を設定する。
143 .SH エラー
144 .TP
145 .B EFAULT
146 \fIss\fP または \fIoss\fP のどちらが、NULL 以外で、
147 かつプロセスのアドレス空間の外を指している。
148 .TP
149 .B EINVAL
150 \fIss\fP が NULL 以外で、\fIss_flags\fP フィールドが
151 .B SS_DISABLE
152 以外の 0 でない値になっている。
153 .TP
154 .B ENOMEM
155 新しい代替シグナルスタック (\fIss.ss_size\fP) に指定したサイズが
156 \fBMINSTKSZ\fP より小さい。
157 .TP
158 .B EPERM
159 代替シグナルスタックが有効であるときに変更を行おうとした
160 (つまり、プロセスが既に現在の代替シグナルスタック上で実行されていた)。
161 .SH 準拠
162 SUSv2, SVr4, POSIX.1-2001.
163 .SH 注意
164 代替シグナルスタックを使用する最もよくある場面は、
165 .B SIGSEGV
166 シグナルを扱うときである。
167 .B SIGSEGV
168 はプロセスの通常のスタックが利用できる空間が使い果たされた際に
169 生成されるシグナルである。この場合には、
170 .B SIGSEGV
171 用のシグナルハンドラをプロセスのスタック上では起動することができない。
172 そのため、このシグナルを扱おうとする場合には、
173 代替シグナルスタックを使用しなければならない。
174 .P
175 プロセスが標準のシグナルスタックを使い果たすことが予想される場合は、
176 代替シグナルスタックを確立すると便利である。
177 例えば、スタックが最上位アドレスから
178 下位アドレス方向に非常にたくさん積まれてしまうことで、
179 最下位アドレスから上位アドレス方向に積まれるヒープとぶつかってしまう場合や、
180 \fBsetrlimit(RLIMIT_STACK, &rlim)\fP の呼び出しで確立された
181 制限に達してしまった場合に、この様な事が起こる。
182 標準のスタックを使い果たしてしまうと、
183 カーネルはプロセスに \fBSIGSEGV\fP シグナルを送る。
184 このような状況では、代替シグナルスタック上でしかシグナルをキャッチできない。
185 .P
186 Linux がサポートする多くのハードウェアアーキテクチャでは、
187 スタックは下位アドレス方向に積まれる。
188 .BR sigaltstack ()
189 はスタックが積まれる方向を自動的に決定する。
190 .P
191 代替シグナルスタック上で実行されている
192 シグナルハンドラから呼ばれる関数も、代替シグナルハンドラを使う
193 (プロセスが代替シグナルスタック上で実行されている場合、
194 他のシグナルで呼び出されるハンドラもこの代替シグナルハンドラを使う)。
195 標準のスタックとは異なり、
196 システムは代替シグナルスタックを自動的に拡張しない。
197 代替シグナルスタック用に確保したサイズを越えた場合、
198 結果は予想できない。
199 .P
200 .BR execve (2)
201 の呼び出しが成功すると、
202 既存の全ての代替シグナルスタックが削除される。
203 .BR fork (2)
204 経由で作成された子プロセスは、親プロセスの代替シグナルスタックの
205 設定のコピーを継承する。
206 .P
207 .BR sigaltstack ()
208 は以前の
209 .BR sigstack ()
210 を置き換えるものである。
211 過去プログラムとの互換性のため、glibc では
212 .BR sigstack ()
213 も提供している。
214 新しいのアプリケーションは全て
215 .BR sigaltstack ()
216 を使って書くべきである。
217 .SS 歴史
218 4.2BSD には
219 .BR sigstack ()
220 システムコールがあった。
221 この関数は少し異なった構造体を使っており、
222 呼び出した側がスタックの積まれる方向を知っていなければならないという
223 大きな欠点があった。
224 .SH 例
225 以下のコードで
226 .BR sigaltstack ()
227 の使用法の一部を示す:
228
229 .in +4n
230 .nf
231 stack_t ss;
232
233 ss.ss_sp = malloc(SIGSTKSZ);
234 if (ss.ss_sp == NULL)
235     /* ハンドルエラー */;
236 ss.ss_size = SIGSTKSZ;
237 ss.ss_flags = 0;
238 if (sigaltstack(&ss, NULL) == \-1)
239     /* ハンドルエラー */;
240 .fi
241 .in
242 .SH 関連項目
243 .BR execve (2),
244 .BR setrlimit (2),
245 .BR sigaction (2),
246 .BR siglongjmp (3),
247 .BR sigsetjmp (3),
248 .BR signal (7)