+%</ja>
+
+%<*ja>
+\section{和文の行長補正方法}
+\label{sec-adjspec}
+\texttt{luatexja-adjust.sty} で提供される優先順位付きの行長調整の詳細を述
+べる.大まかに述べると,次のようになる.
+\begin{itemize}
+\item 通常の\TeX の行分割方法に従って,段落を行分割する.この段階では,行
+ 長に半端が出た場合,その半端分は\Param{\hyperlink{fld:xks}{xkanjiskip}},
+ \Param{\hyperlink{fld:kanjiskip}{kanjiskip}},JFMグルーの全てで(優先順位なく)負担される.
+\item その後,\texttt{post\_linebreak\_filter} callbackを使い,\textbf{段
+ 落中の各行ごとに},行末文字の位置を調整したり,優先度付きの行長調整
+ を実現するためにグルーの伸縮度を調整する.
+\texttt{luatexja-adjust.sty} の作用は,このcallbackを追加するだけであり,
+ この章の残りではcallbackでの処理について解説する.
+\end{itemize}
+
+\paragraph{準備:合計伸縮量の計算}
+グルーの伸縮度(\texttt{plus} や \texttt{minus} で指定されている値)には,
+有限値の他に,\texttt{fi},\texttt{fil},\texttt{fill},\texttt{filll}と
+いう4つの無限大レベル(後ろの方ほど大きい)があり,行の調整に
+\texttt{fi} などの\textbf{無限大レベルの伸縮度が用いられている場合は,そ
+の行に対しての処理を中止}する.
+
+よって,以降,問題にしている行の行長調整は伸縮度が有限長のグルーを用いて
+行われているとして良い.まず,段落中の行中のグルーを
+\begin{itemize}
+\item 下のどれにも該当しないグルー
+\item JFMグルー(優先度別にまとめられる)
+\item 和欧文間空白(\Param{\hyperlink{fld:xks}{xkanjiskip}})
+\item 和文間空白(\Param{\hyperlink{fld:kanjiskip}{kanjiskip}})
+\end{itemize}
+の$1+1+5+1=8$つに類別し,それぞれの種別ごとに許容されている伸縮度の合計を計算する.
+また,行長と自然長との差の絶対値を計算し,それを\textit{total}とおく.
+
+\subsection{行末文字の位置調整}
+まず,行末が文字クラス$n$の\textbf{Jachar}であった場合,
+それを動かすことによって,\textbf{JAglue} が負担する調整量を少なくしようとする.
+この行末文字の左右の移動可能量は,JFM中にある文字クラス$n$の定義の
+\texttt{end\_stretch},~\texttt{end\_shrink}フィールドに全角単位の値として記述されている.
+
+例えば,行末文字が句点「。」であり,そこで用いられているJFM中に
+\begin{verbatim}
+ [2] = {
+ chars = { '。', ... }, width = 0.5, ...,
+ end_stretch = 0.5, end_shrink = 0.5,
+ },
+\end{verbatim}
+という指定があった場合,この行末の句点は
+\begin{itemize}
+\item 通常の\TeX の行分割処理で「半角以上の詰め」が行われていた場合,
+この分の行中の\textbf{JAglue}の負担を軽減するため,
+行末の句点を半角だけ右に移動する(ぶら下げ組を行う).
+\item 通常の\TeX の行分割処理で「半角以上の空き」が行われていた場合,
+逆に行末句点を半角左に移動させる(見た目的に全角取りとなる).
+\item 以上のどちらでもない場合,行末句点の位置調整は行わない.
+\end{itemize}
+となる.
+
+行末文字を移動した場合,その分だけ\textit{total}の値を引いておく.
+
+\subsection{グルーの調整}
+\textit{total}の分だけが,行中のグルーの伸縮度に応じて負担されることになる.
+……