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(split) LDP: Update the version to 3.53 in PO files
[linuxjm/LDP_man-pages.git] / draft / man2 / clone.2
1 .\" Copyright (c) 1992 Drew Eckhardt <drew@cs.colorado.edu>, March 28, 1992
2 .\" and Copyright (c) Michael Kerrisk, 2001, 2002, 2005, 2013
3 .\"
4 .\" %%%LICENSE_START(GPL_NOVERSION_ONELINE)
5 .\" May be distributed under the GNU General Public License.
6 .\" %%%LICENSE_END
7 .\"
8 .\" Modified by Michael Haardt <michael@moria.de>
9 .\" Modified 24 Jul 1993 by Rik Faith <faith@cs.unc.edu>
10 .\" Modified 21 Aug 1994 by Michael Chastain <mec@shell.portal.com>:
11 .\"   New man page (copied from 'fork.2').
12 .\" Modified 10 June 1995 by Andries Brouwer <aeb@cwi.nl>
13 .\" Modified 25 April 1998 by Xavier Leroy <Xavier.Leroy@inria.fr>
14 .\" Modified 26 Jun 2001 by Michael Kerrisk
15 .\"     Mostly upgraded to 2.4.x
16 .\"     Added prototype for sys_clone() plus description
17 .\"     Added CLONE_THREAD with a brief description of thread groups
18 .\"     Added CLONE_PARENT and revised entire page remove ambiguity
19 .\"             between "calling process" and "parent process"
20 .\"     Added CLONE_PTRACE and CLONE_VFORK
21 .\"     Added EPERM and EINVAL error codes
22 .\"     Renamed "__clone" to "clone" (which is the prototype in <sched.h>)
23 .\"     various other minor tidy ups and clarifications.
24 .\" Modified 26 Jun 2001 by Michael Kerrisk <mtk.manpages@gmail.com>
25 .\"     Updated notes for 2.4.7+ behavior of CLONE_THREAD
26 .\" Modified 15 Oct 2002 by Michael Kerrisk <mtk.manpages@gmail.com>
27 .\"     Added description for CLONE_NEWNS, which was added in 2.4.19
28 .\" Slightly rephrased, aeb.
29 .\" Modified 1 Feb 2003 - added CLONE_SIGHAND restriction, aeb.
30 .\" Modified 1 Jan 2004 - various updates, aeb
31 .\" Modified 2004-09-10 - added CLONE_PARENT_SETTID etc. - aeb.
32 .\" 2005-04-12, mtk, noted the PID caching behavior of NPTL's getpid()
33 .\"     wrapper under BUGS.
34 .\" 2005-05-10, mtk, added CLONE_SYSVSEM, CLONE_UNTRACED, CLONE_STOPPED.
35 .\" 2005-05-17, mtk, Substantially enhanced discussion of CLONE_THREAD.
36 .\" 2008-11-18, mtk, order CLONE_* flags alphabetically
37 .\" 2008-11-18, mtk, document CLONE_NEWPID
38 .\" 2008-11-19, mtk, document CLONE_NEWUTS
39 .\" 2008-11-19, mtk, document CLONE_NEWIPC
40 .\" 2008-11-19, Jens Axboe, mtk, document CLONE_IO
41 .\"
42 .\" FIXME Document CLONE_NEWUSER, which is new in 2.6.23
43 .\"       (also supported for unshare()?)
44 .\"
45 .\"*******************************************************************
46 .\"
47 .\" This file was generated with po4a. Translate the source file.
48 .\"
49 .\"*******************************************************************
50 .TH CLONE 2 2013\-04\-16 Linux "Linux Programmer's Manual"
51 .SH 名前
52 clone, __clone2 \- 子プロセスを作成する
53 .SH 書式
54 .nf
55 /* glibc ラッパー関数のプロトタイプ */
56
57 \fB#include <sched.h>\fP
58
59 \fBint clone(int (*\fP\fIfn\fP\fB)(void *), void *\fP\fIchild_stack\fP\fB,\fP
60 \fB          int \fP\fIflags\fP\fB, void *\fP\fIarg\fP\fB, ... \fP
61 \fB          /* pid_t *\fP\fIptid\fP\fB, struct user_desc *\fP\fItls\fP\fB, pid_t *\fP\fIctid\fP\fB */ );\fP
62
63 /* 素のシステムコールのプロトタイプ */
64
65 \fBlong clone(unsigned long \fP\fIflags\fP\fB, void *\fP\fIchild_stack\fP\fB,\fP
66 \fB          void *\fP\fIptid\fP\fB, void *\fP\fIctid\fP\fB,\fP
67 \fB          struct pt_regs *\fP\fIregs\fP\fB);\fP
68 .fi
69 .sp
70 .in -4n
71 glibc ラッパー関数の機能検査マクロの要件 (\fBfeature_test_macros\fP(7) 参照):
72 .in
73 .sp
74 \fBclone\fP():
75 .ad l
76 .RS 4
77 .PD 0
78 .TP  4
79 glibc 2.14 以降:
80 _GNU_SOURCE
81 .TP  4
82 .\" FIXME See http://sources.redhat.com/bugzilla/show_bug.cgi?id=4749
83 glibc 2.14 より前:
84 _BSD_SOURCE || _SVID_SOURCE
85     /* _GNU_SOURCE も定義される */
86 .PD
87 .RE
88 .ad b
89 .SH 説明
90 \fBclone\fP() は、 \fBfork\fP(2) と似た方法で新しいプロセスを作成する。
91
92 このページでは、 glibc の \fBclone\fP() ラッパー関数とその裏で呼ばれるシステムコールの両方について説明している。
93 メインの説明はラッパー関数に関するものである。 素のシステムコールにおける差分はこのページの最後の方で説明する。
94
95 \fBfork\fP(2) とは異なり、\fBclone\fP() では、子プロセス (child process)
96 と呼び出し元のプロセスとが、メモリ空間、ファイルディスクリプタのテーブル、シグナル・ハンドラのテーブルなどの 実行コンテキストの一部を共有できる。
97 (このマニュアルにおける「呼び出し元のプロセス」は、通常は 「親プロセス」と一致する。但し、後述の \fBCLONE_PARENT\fP の項も参照のこと)
98
99 \fBclone\fP()  の主要な使用法はスレッド (threads) を実装することである:
100 一つのプログラムの中の複数のスレッドは共有されたメモリ空間で 同時に実行される。
101
102 \fBclone\fP()  で子プロセスが作成された時に、作成された子プロセスは関数 \fIfn\fP(\fIarg\fP)  を実行する。 (この点が
103 \fBfork\fP(2)  とは異なる。 \fBfork\fP(2)  の場合、子プロセスは \fBfork\fP(2)  が呼び出された場所から実行を続ける。)
104 \fIfn\fP 引き数は、子プロセスが実行を始める時に子プロセスが呼び出す 関数へのポインタである。 \fIarg\fP 引き数はそのまま \fIfn\fP
105 関数へと渡される。
106
107 \fIfn\fP(\fIarg\fP)  関数が終了すると、子プロセスは終了する。 \fIfn\fP によって返された整数が子プロセスの終了コードとなる。 子プロセスは、
108 \fBexit\fP(2)  を呼んで明示的に終了することもあるし、致命的なシグナルを受信した 場合に終了することもある。
109
110 \fIchild_stack\fP 引き数は、子プロセスによって使用されるスタックの位置を指定する。
111 子プロセスと呼び出し元のプロセスはメモリを共有することがあるため、 子プロセスは呼び出し元のプロセスと同じスタックで実行することができない。
112 このため、呼び出し元のプロセスは子プロセスのスタックのためのメモリ空間を 用意して、この空間へのポインタを \fBclone\fP()
113 へ渡さなければならない。 (HP PA プロセッサ以外の) Linux が動作する全てのプロセッサでは、 スタックは下方 (アドレスが小さい方向)
114 へと伸びる。このため、普通は \fIchild_stack\fP は子プロセスのスタックのために用意したメモリ空間の一番大きい アドレスを指すようにする。
115
116 \fIflags\fP の下位 1 バイトは子プロセスが死んだ場合に親プロセスへと送られる \fI終了シグナル (termination signal)\fP
117 の番号を指定する。このシグナルとして \fBSIGCHLD\fP 以外が指定された場合、親プロセスは、 \fBwait\fP(2)
118 で子プロセスを待つ際に、オプションとして \fB__WALL\fP または \fB__WCLONE\fP を指定しなければならない。
119 どのシグナルも指定されなかった場合、子プロセスが終了した時に親プロセス にシグナルは送られない。
120
121 \fIflags\fP には、以下の定数のうち 0個以上をビット毎の論理和 (bitwise\-or)
122 をとったものを指定できる。これらの定数は呼び出し元のプロセスと 子プロセスの間で何を共有するかを指定する:
123 .TP 
124 \fBCLONE_CHILD_CLEARTID\fP (Linux 2.5.49 以降)
125 子プロセスが終了したときに子プロセスのメモリ内の \fIctid\fP が指す場所にある子プロセスのスレッド ID を消去し、 そのアドレスで futex を
126 wake (起床) させる。 このアドレスは \fBset_tid_address\fP(2)  システムコールで変更することができる。
127 この機能はスレッドライブラリで使用される。
128 .TP 
129 \fBCLONE_CHILD_SETTID\fP (Linux 2.5.49 以降)
130 子プロセスのメモリ内の \fIctid\fP が指す場所に子プロセスのスレッド ID を格納する。
131 .TP 
132 \fBCLONE_FILES\fP (Linux 2.0 以降)
133 \fBCLONE_FILES\fP が設定された場合、呼び出し元のプロセスと子プロセスはファイルディスクリプタの テーブルを共有する。
134 呼び出し元プロセスとその子プロセスの一方が作成した ファイルディスクリプタは、もう一方においても有効である。
135 同じように、一方のプロセスがファイルディスクリプタを閉じたり、 (\fBfcntl\fP(2)  \fBF_SETFD\fP 操作を使って)
136 ディスクリプタに関連するフラグを変更したりすると、 もう一方のプロセスにも影響する。
137
138 \fBCLONE_FILES\fP が設定されていない場合、子プロセスは、 \fBclone\fP()
139 が実行された時点で、呼び出し元のプロセスがオープンしている全ての ファイルディスクリプタのコピーを継承する
140 (子プロセスの複製されたファイルディスクリプタは、 対応する呼び出し元のプロセスのファイルディスクリプタと 同じファイル記述 (\fBopen\fP(2)
141 参照) を参照する)。 これ以降に、呼び出し元のプロセスと子プロセスの一方が ファイルディスクリプタの操作 (ファイルディスクリプタの
142 オープン・クローズや、ファイルディスクリプタ・フラグの変更)  を行っても、もう一方のプロセスには影響を与えない。
143 .TP 
144 \fBCLONE_FS\fP (Linux 2.0 以降)
145 \fBCLONE_FS\fP が設定された場合、呼び出し元のプロセスと子プロセスが同じファイル・システム
146 情報を共有する。ファイル・システム情報は、ファイル・システムのルート (root)、 カレント・ワーキング・ディレクトリ (current
147 working directory)  や umask などである。 呼び出し元のプロセスや子プロセスのどちらか一方によって \fBchroot\fP(2),
148 \fBchdir\fP(2), \fBumask\fP(2)  が呼び出されると、もう一方のプロセスにも影響が及ぶ。
149
150 \fBCLONE_FS\fP が設定されていない場合、子プロセスは、 \fBclone\fP()
151 が実行された時点での、呼び出し元のプロセスのファイル・システム情報のコピーを 使用する。 これ以降は、呼び出し元のプロセスと子プロセスの一方が
152 \fBchroot\fP(2), \fBchdir\fP(2), \fBumask\fP(2)  を呼び出しても、もう一方のプロセスには影響を与えない。
153 .TP 
154 \fBCLONE_IO\fP (Linux 2.6.25 以降)
155 \fBCLONE_IO\fP が設定された場合、新しいプロセスは呼び出し元のプロセスと I/O コンテキストを共有する。
156 このフラグが設定されていない場合には、 (\fBfork\fP(2)  の場合と同様) 新しいプロセスは自分専用の I/O コンテキストを持つ。
157
158 .\" The following based on text from Jens Axboe
159 .\" the anticipatory and CFQ scheduler
160 .\" with CFQ and AS.
161 I/O コンテキストは、ディスクスケジュールの I/O スコープである (言い換えると、I/O コンテキストは I/O スケジューラがプロセス I/O
162 の スケジューリングをモデル化するのに使用される)。 複数のプロセスが同じ I/O コンテキストを共有する場合、 これらのプロセスは I/O
163 スケジューラからは一つとして扱われる。 結果として、これらのプロセスはディスクアクセスの時間を共有するようになる。 いくつかの I/O
164 スケジューラでは、 二つのプロセスが I/O コンテキストを共有している場合、 これらのプロセスはディスクアクセスを交互に行うことができる。
165 同じプロセスの複数のスレッドが I/O を実行している場合 (例えば \fBaio_read\fP(3))、 \fBCLONE_IO\fP を利用することで I/O
166 性能を良くすることができる。
167
168 カーネルの設定が \fBCONFIG_BLOCK\fP オプション付きでない場合、 このフラグは何の意味も持たない。
169 .TP 
170 \fBCLONE_NEWIPC\fP (Linux 2.6.19 以降)
171 \fBCLONE_NEWIPC\fP が設定された場合、新しい IPC 名前空間 (namespace) でプロセスを作成する。
172 このフラグが設定されていない場合、 (\fBfork\fP(2)  の場合と同様) 呼び出し元のプロセスと同じ IPC 名前空間でプロセスが 作成される。
173 このフラグは、コンテナの実装での使用を意図して用意されたものである。
174
175 .\" commit 7eafd7c74c3f2e67c27621b987b28397110d643f
176 .\" https://lwn.net/Articles/312232/
177 IPC 名前空間は、独立の System V IPC オブジェクト空間 (\fBsvipc\fP(7) 参照) を提供する 。 (Linux 2.6.30
178 以降では) 独立した POSIX メッセージキュー空間 (\fBmq_overview\fP(7) 参照) も提供される。 これらの IPC
179 機構に共通の特徴として、 IPC オブジェクトはファイルシステムのパス名とは違った仕組みで識別されるという点がある。
180
181 ある IPC 名前空間に作成されたオブジェクトは、 その名前空間のメンバーである他のすべてのプロセスからも見えるが、 違う IPC
182 名前空間のプロセスからは見えない。
183
184 IPC 名前空間が破棄される時 (すなわち、その名前空間のメンバーの最後のプロセスが終了する時)、 その名前空間の全ての IPC
185 オブジェクトは自動的に破棄される。
186
187 このフラグを使用するためには、 カーネルでオプション \fBCONFIG_SYSVIPC\fP と \fBCONFIG_IPC_NS\fP を有効になっていること、
188 プロセスが特権 (\fBCAP_SYS_ADMIN\fP)  を持っていることが必要である。 このフラグは \fBCLONE_SYSVSEM\fP
189 と組み合わせて使うことはできない。
190 .TP 
191 \fBCLONE_NEWNET\fP (Linux 2.6.24 以降)
192 .\" FIXME Check when the implementation was completed
193 (このフラグの実装は、Linux 2.6.29 あたりまでには完成した。)
194
195 \fBCLONE_NEWNET\fP が設定された場合、新しいネットワーク名前空間 (network namaspace)  でプロセスを作成する。
196 このフラグが設定されていない場合、 (\fBfork\fP(2)  の場合と同様) 呼び出し元のプロセスと同じネットワーク名前空間でプロセスが 作成される。
197 このフラグは、コンテナの実装での使用を意図して用意されたものである。
198
199 .\" FIXME Add pointer to veth(4) page when it is eventually completed
200 ネットワーク名前空間は、分離されたネットワークスタックを提供するものである (ネットワークスタックとは、 ネットワークデバイスインタフェース、IPv4
201 や IPv6 プロトコルスタック、 \fI/proc/net\fP、 \fI/sys/class/net\fP ディレクトリツリー、ソケットなどである)。
202 物理ネットワークデバイスが所属できるネットワーク名前空間は一つだけである。 仮想ネットワークデバイス ("veth") のペアにより パイプ風の抽象化
203 (abstraction) が実現されており、 これを使うことで、ネットワーク名前空間間のトンネルを作成したり、
204 別の名前空間の物理ネットワークデバイスへのブリッジを作成したり することができる。
205
206 ネットワーク名前空間が解放される時 (すなわち、その名前空間の最後のプロセスが終了する時)、 物理ネットワークデバイスは初期ネットワーク名前空間
207 (initial network namespace) に戻される (親プロセスのネットワーク名前空間に戻される訳ではない)。
208
209 このフラグを使用するためには、 カーネルでオプション \fBCONFIG_NET_NS\fP を有効になっていること、 プロセスが特権
210 (\fBCAP_SYS_ADMIN\fP)  を持っていることが必要である。
211 .TP 
212 \fBCLONE_NEWNS\fP (Linux 2.4.19 以降)
213 子プロセスを新しいマウント名前空間 (mount namespace) で開始する。
214
215 各プロセスはある一つのマウント名前空間中に存在する。プロセスの \fI名前空間 (namespace)\fP
216 は、そのプロセスから見えるファイル階層を表すデータ (mount の集合) である。 \fBCLONE_NEWNS\fP フラグがセットされずに
217 \fBfork\fP(2)  か \fBclone\fP()  が呼ばれると、子プロセスは親プロセスと同じマウント名前空間に作成される。 システムコール
218 \fBmount\fP(2)、 \fBumount\fP(2)  が呼ばれると呼び出し元のプロセスのマウント名前空間が変更され、この結果
219 呼び出し元のプロセスと同じ名前空間にいるプロセスはすべて影響を受けるが、 異なるマウント名前空間にいるプロセスは影響を受けない。
220
221 \fBCLONE_NEWNS\fP フラグがセットされて \fBclone\fP()  が呼ばれると、clone で作成された子プロセスは新しいマウント名前空間で
222 開始される。新しい名前空間は親プロセスの名前空間のコピーで初期化される。
223
224 特権プロセス (\fBCAP_SYS_ADMIN\fP ケーパビリティを持つプロセス) のみが \fBCLONE_NEWNS\fP フラグを指定することができる。
225 一つの \fBclone\fP()  呼び出しで、 \fBCLONE_NEWNS\fP と \fBCLONE_FS\fP の両方を指定することはできない。
226 .TP 
227 \fBCLONE_NEWPID\fP (Linux 2.6.24 以降)
228 .\" This explanation draws a lot of details from
229 .\" http://lwn.net/Articles/259217/
230 .\" Authors: Pavel Emelyanov <xemul@openvz.org>
231 .\" and Kir Kolyshkin <kir@openvz.org>
232 .\"
233 .\" The primary kernel commit is 30e49c263e36341b60b735cbef5ca37912549264
234 .\" Author: Pavel Emelyanov <xemul@openvz.org>
235 \fBCLONE_NEWPID\fP が設定された場合、新しい PID 名前空間でプロセスを作成する。 このフラグが設定されていない場合、
236 (\fBfork\fP(2)  の場合と同様) 呼び出し元のプロセスと同じ PID 名前空間で プロセスが作成される。
237 このフラグは、コンテナの実装での使用を意図して用意されたものである。
238
239 PID 名前空間は、PID に関して分離された環境を提供するものである。 新しい名前空間における PID は 1 から始まり
240 (これはスタンドアロンのシステムと似たような感じ)、 \fBfork\fP(2), \fBvfork\fP(2), \fBclone\fP()
241 を呼び出すと、その名前空間で一意な PID を持ったプロセスが作成される。
242
243 新しい名前空間で作成される最初のプロセス (つまり、 \fBCLONE_NEWPID\fP フラグを使って作成されたプロセス) の PID は 1 であり、
244 このプロセスはその名前空間における "init" プロセスとなる。 この名前空間において孤児 (orphaned) となった子プロセスについては、
245 \fBinit\fP(8)  ではなくこのプロセスが親プロセスとなる。 昔ながらの \fBinit\fP プロセスとは違い、PID 名前空間の "init"
246 プロセスは終了 (terminated) する ことができ、その場合には、この名前空間の全てのプロセスが終了される。
247
248 PID 名前空間間には階層構造が形成される。 新しい PID 名前空間が作成されると、その名前空間のプロセスは、 新しい名前空間を作成したプロセスの
249 PID 名前空間で見える。 同様に、親の PID 名前空間自体が別の PID 名前空間の子供の場合には、 子供の PID 名前空間と親の PID
250 名前空間のプロセスはどれも 親の親の PID 名前空間でも見えることになる。 反対に、「子供」の PID 名前空間のプロセスには、
251 親の名前空間のプロセスは見えない。 名前空間に階層構造が存在するということは、個々のプロセスは 複数の PID を持つということを意味している。
252 そのプロセスが見える名前空間一つにつき PID が一つあり、 それぞれの PID は対応する名前空間において一意である。 (\fBgetpid\fP(2)
253 を呼び出すと、常にそのプロセスが存在している名前空間における PID が返される。)
254
255 .\" mount -t proc proc /proc
256 新しい名前空間の作成後には、 子プロセスにおいて、 \fBps\fP(1)  といったツールが正しく動作するように、 自身の root ディレクトリを変更し、
257 \fI/proc\fP に新しい procfs インスタンスをマウントするのがよいだろう。 (\fBflags\fP に \fBCLONE_NEWNS\fP
258 も指定されていた場合には、root ディレクトリを変更する必要はなく、 いきなり新しい procfs インスタンスを \fI/proc\fP
259 にマウントすることができる。)
260
261 このフラグを使用するためには、 カーネルでオプション \fBCONFIG_PID_NS\fP を有効になっていること、 プロセスが特権
262 (\fBCAP_SYS_ADMIN\fP)  を持っていることが必要である。 このフラグは \fBCLONE_THREAD\fP と組み合わせて使うことはできない。
263 .TP 
264 \fBCLONE_NEWUTS\fP (Linux 2.6.19 以降)
265 \fBCLONE_NEWUTS\fP が設定された場合、新しい UTS 名前空間でプロセスを作成する。 新しい UTS
266 名前空間の識別子の初期値は、呼び出し元のプロセスの UTS 名前空間の識別子を複製したものとなる。 このフラグが設定されていない場合、
267 (\fBfork\fP(2)  の場合と同様) 呼び出し元のプロセスと同じ UTS 名前空間で プロセスが作成される。
268 このフラグは、コンテナの実装での使用を意図して用意されたものである。
269
270 UTS 名前空間は、 \fBuname\fP(2)  が返す識別子の集合である。 識別子としてはドメイン名とホスト名があり、 それぞれ
271 \fBsetdomainname\fP(2), \fBsethostname\fP(2)  で修正することができる。 ある UTS
272 名前空間における識別子の変更は同じ名前空間の他のすべての プロセスに見えるが、別の UTS 名前空間のプロセスには見えない。
273
274 このフラグを使用するためには、 カーネルでオプション \fBCONFIG_UTS_NS\fP を有効になっていること、 プロセスが特権
275 (\fBCAP_SYS_ADMIN\fP)  を持っていることが必要である。
276 .TP 
277 \fBCLONE_PARENT\fP (Linux 2.3.12 以降)
278 \fBCLONE_PARENT\fP が設定された場合、新しい子供の (\fBgetppid\fP(2)  で返される)
279 親プロセスは呼び出し元のプロセスの親プロセスと同じになる。
280
281 \fBCLONE_PARENT\fP が設定されていない場合、 (\fBfork\fP(2)  と同様に) 呼び出し元のプロセスがその子供の親になる。
282
283 子供が終了した時にシグナルが送られるのは \fBgetppid\fP(2)  が返す親プロセスである点に注意すること。このため \fBCLONE_PARENT\fP
284 が設定された場合、呼び出し元のプロセスではなく呼び出し元のプロセスの 親プロセスにシグナルが送られる。
285 .TP 
286 \fBCLONE_PARENT_SETTID\fP (Linux 2.5.49 以降)
287 親プロセスと子プロセスのメモリ内の \fIptid\fP が指す領域に子プロセスのスレッド ID を格納する。 (Linux 2.5.32\-2.5.48
288 では、 同じことをする \fBCLONE_SETTID\fP というフラグが存在した。)
289 .TP 
290 \fBCLONE_PID\fP (廃止予定)
291 \fBCLONE_PID\fP が設定された場合、子プロセスは呼び出し元のプロセスと同じプロセス ID
292 で作成される。これはシステムをハッキングするのには便利だが、 それ以外にはあまり使われない。 Linux 2.3.21 以降では、
293 システムのブートプロセス (PID 0) だけがこのフラグを指定できる。 Linux 2.5.16 で削除された。
294 .TP 
295 \fBCLONE_PTRACE\fP (Linux 2.2 以降)
296 \fBCLONE_PTRACE\fP が指定され、かつ呼び出し元のプロセスが追跡 (trace) されていた場合、子プロセスも 同様に追跡される。
297 (\fBptrace\fP(2)  を参照のこと)
298 .TP 
299 \fBCLONE_SETTLS\fP (Linux 2.5.32 以降)
300 \fInewtls\fP 引き数は、新しい TLS (Thread Local Storage) ディスクリプタである。
301 (\fBset_thread_area\fP(2)  を参照のこと)
302 .TP 
303 \fBCLONE_SIGHAND\fP (Linux 2.0 以降)
304 \fBCLONE_SIGHAND\fP が設定された場合、呼び出し元のプロセスと子プロセスは同じシグナル・ハン
305 ドラのテーブルを共有する。呼び出し元のプロセスまたは子プロセスのどちらかが \fBsigaction\fP(2)
306 を呼び出してシグナルに対応する動作を変更した場合、 もう一方のプロセスのシグナル動作も変更される。 但し、呼び出し元のプロセスと子プロセスは、
307 プロセス毎に、シグナル・マスク (signal mask) と処理待ちシグナルの集合 を持っている。このため、あるプロセスは、
308 \fBsigprocmask\fP(2)  を使用して、もう一方のプロセスに影響を与えずに シグナルを禁止 (block) したり許可 (unblock)
309 したりできる。
310
311 \fBCLONE_SIGHAND\fP が設定されていない場合、子プロセスは \fBclone\fP()
312 が実行された時点での、呼び出し元のプロセスのシグナル・ハンドラの コピーを継承する。これ以降は、一方のプロセスが \fBsigaction\fP(2)
313 を呼び出しても、もう一方のプロセスには影響を与えない。
314
315 Linux 2.6.0\-test6 以降では、 \fBCLONE_SIGHAND\fP を指定する場合、 \fBCLONE_VM\fP も \fIflags\fP
316 に含めなければならない。
317 .TP 
318 \fBCLONE_STOPPED\fP (Linux 2.6.0\-test2 以降)
319 \fBCLONE_STOPPED\fP が設定されると、子プロセスは最初 (\fBSIGSTOP\fP シグナルを送られたかのように) 停止した状態となる。
320 子プロセスを再開させるには \fBSIGCONT\fP シグナルを送信しなければならない。
321
322 .\" glibc 2.8 removed this defn from bits/sched.h
323 このフラグは Linux 2.6.25 以降では\fI非推奨\fPであり、
324 Linux 2.6.38 で完全に\fI削除\fPされた。
325 .TP 
326 \fBCLONE_SYSVSEM\fP (Linux 2.5.10 以降)
327 \fBCLONE_SYSVSEM\fP がセットされると、子プロセスと呼び出し元プロセスは一つの System V セマフォのアンドゥ値リスト
328 (\fBsemop\fP(2)  参照) を共有する。このフラグがセットされていなければ、 子プロセスは独自のアンドゥリストを持つ
329 (リストの初期値は空である)。
330 .TP 
331 \fBCLONE_THREAD\fP (Linux 2.4.0\-test8以降)
332 \fBCLONE_THREAD\fP が設定された場合、子プロセスは呼び出し元のプロセスと同じスレッド・グループに 置かれる。 \fBCLONE_THREAD\fP
333 についての以降の議論を読みやすくするため、 「スレッド」という用語はスレッド・グループの中のプロセスを 参照するのに使うこととする。
334
335 スレッド・グループは、 スレッド集合で一つの PID を共有するという POSIX スレッドの概念をサポートするために Linux 2.4
336 に加えられた機能であった。 内部的には、この共有 PID はいわゆるそのスレッドグループの スレッド・グループ識別子 (TGID) である。 Linux
337 2.4 以降では、 \fBgetpid\fP(2)  の呼び出しではそのプロセスのスレッド・グループ ID を返す。
338
339 あるグループに属するスレッドは (システム全体で) 一意なスレッド ID (TID)  で区別できる。新しいスレッドの TID は \fBclone\fP()
340 の呼び出し元へ関数の結果として返され、 スレッドは自分自身の TID を \fBgettid\fP(2)  で取得できる。
341
342 \fBCLONE_THREAD\fP を指定せずに \fBclone\fP()  の呼び出しが行われると、 生成されたスレッドはそのスレッドの TID と同じ値の
343 TGID を持つ 新しいスレッド・グループに置かれる。このスレッドは 新しいスレッド・グループの「リーダー」である。
344
345 \fBCLONE_THREAD\fP を指定して作成された新しいスレッドは、 (\fBCLONE_PARENT\fP の場合と同様に)  \fBclone\fP()
346 を呼び出し元と同じ親プロセスを持つ。 そのため、 \fBgetppid\fP(2)  を呼ぶと、一つのスレッド・グループに属すスレッドは全て同じ値を返す。
347 \fBCLONE_THREAD\fP で作られたスレッドが終了した際に、 そのスレッドを \fBclone\fP()  を使って生成したスレッドには
348 \fBSIGCHLD\fP (もしくは他の終了シグナル) は送信されない。 また、 \fBwait\fP(2)
349 を使って終了したスレッドの状態を取得することもできない (そのようなスレッドは \fIdetached\fP (分離された) といわれる)。
350
351 スレッド・グループに属す全てのスレッドが終了した後、 そのスレッド・グループの親プロセスに \fBSIGCHLD\fP (もしくは他の終了シグナル)
352 が送られる。
353
354 スレッド・グループに属すいずれかのスレッドが \fBexecve\fP(2)  を実行すると、スレッド・グループ・リーダー以外の全てのスレッドは
355 終了され、新しいプロセスがそのスレッド・グループ・リーダーの下で 実行される。
356
357 スレッド・グループに属すスレッドの一つが \fBfork\fP(2)  を使って子プロセスを作成した場合、 スレッド・グループのどのスレッドであっても
358 その子供を \fBwait\fP(2)  できる。
359
360 Linux 2.5.35 以降では、 \fBCLONE_THREAD\fP を指定する場合、 \fIflags\fP に \fBCLONE_SIGHAND\fP
361 も含まれていなければならない。
362
363 \fBkill\fP(2)  を使ってスレッド・グループ全体 (つまり TGID) にシグナルを送ることもできれば、 \fBtgkill\fP(2)
364 を使って特定のスレッド (つまり TID) にシグナルを送ることもできる。
365
366 シグナルの配送と処理はプロセス全体に影響する: ハンドラを設定していないシグナルがあるスレッドに配送されると、
367 そのシグナルはスレッド・グループの全メンバーに影響を及ぼす (終了したり、停止したり、動作を継続したり、無視されたりする)。
368
369 各々のスレッドは独自のシグナルマスクを持っており、 \fBsigprocmask\fP(2)  で設定できる。 だが、処理待ちのシグナルには、
370 \fBkill\fP(2)  で送信されるプロセス全体に対するもの (つまり、スレッド・グループの どのメンバーにも配送できるもの) と、
371 \fBtgkill\fP(2)  で送信される個々のスレッドに対するものがありえる。 \fBsigpending\fP(2)
372 を呼び出すと、プロセス全体に対する処理待ちシグナルと呼び出し元の スレッドに対する処理待ちシグナルを結合したシグナル集合が返される。
373
374 \fBkill\fP(2)  を使ってスレッド・グループにシグナルが送られた場合で、 そのスレッド・グループがそのシグナルに対するシグナル・ハンドラが
375 登録されていたときには、シグナル・ハンドラはスレッド・グループの メンバーのうち、ただ一つのスレッドでだけ起動される。ハンドラが
376 起動されるスレッドは、そのシグナルを禁止 (block) していない メンバーの中から一つだけが勝手に (arbitrarily) 選ばれる。
377 スレッド・グループに属す複数のスレッドが \fBsigwaitinfo\fP(2)  を使って同じシグナルを待っている場合、
378 これらのスレッドの中から一つをカーネルが勝手に選択し、 そのスレッドが \fBkill (2)\fP を使って送信されたシグナルを受信する。
379 .TP 
380 \fBCLONE_UNTRACED\fP (Linux 2.5.46 以降)
381 \fBCLONE_UNTRACED\fP が指定されると、 trace を行っているプロセスは この子プロセスに \fBCLONE_PTRACE\fP
382 を適用することができない。
383 .TP 
384 \fBCLONE_VFORK\fP (Linux 2.2 以降)
385 \fBCLONE_VFORK\fP が設定された場合、 (\fBvfork\fP(2)  と同様に) 子プロセスが \fBexecve\fP(2)  または
386 \fB_exit\fP(2)  によって仮想メモリを解放するまで、呼び出し元のプロセスの実行は停止される。
387
388 \fBCLONE_VFORK\fP が設定されていない場合、 \fBclone\fP()  呼び出し後は、呼び出し元のプロセスと子プロセスの
389 両方がスケジュール対象となり、アプリケーションはこれらのプロセスの 実行順序に依存しないようにすべきである。
390 .TP 
391 \fBCLONE_VM\fP (Linux 2.0 以降)
392 \fBCLONE_VM\fP が設定された場合、呼び出し元のプロセスと子プロセスは同じメモリ空間で
393 実行される。特に、呼び出し元のプロセスや子プロセスの一方がメモリに 書き込んだ内容はもう一方のプロセスからも見ることができる。さらに、
394 子プロセスや呼び出し元のプロセスの一方が \fBmmap\fP(2)  や \fBmunmap\fP(2)  を使ってメモリをマップしたりアンマップした場合、
395 もう一方のプロセスにも影響が及ぶ。
396
397 \fBCLONE_VM\fP が設定されていない場合、子プロセスは \fBclone\fP()  が実行された時点での、親プロセスのメモリ空間をコピーした
398 別のメモリ空間で実行される。 一方のプロセスが行ったメモリへの書き込みや ファイルのマップ/アンマップは、 \fBfork\fP(2)
399 の場合と同様、もう一方のプロセスには影響しない。
400 .SS 素のシステムコールのインターフェース
401 素の \fBclone\fP システムコールは、より \fBfork\fP(2) に近いかたちになっており、
402 子プロセスの実行が呼び出しが行われた場所から続けられる。 そのため、 \fBclone\fP() ラッパー関数の引き数 \fIfn\fP と \fIarg\fP
403 は省略される。 また、 引き数の順序も違っている。 x86 と他の多くのアーキテクチャにおける、 素のシステムコールのインターフェースは、
404 おおまかには次のようになっている。
405 .in +4
406 .nf
407
408 \fBlong clone(unsigned long \fP\fIflags\fP\fB, void *\fP\fIchild_stack\fP\fB,\fP
409 \fB           void *\fP\fIptid\fP\fB, void *\fP\fIctid\fP\fB,\fP
410 \fB           struct pt_regs *\fP\fIregs\fP\fB);\fP
411
412 .fi
413 .in
414 生のシステムコールのもう一つの違いは、 \fIchild_stack\fP 引き数がゼロでも良いことである。この場合には、どちらかのプロセスが
415 スタックを変更した時に、書き込み時コピー (copy\-on\-write) 方式により
416 子プロセスがスタック・ページの独立したコピーを得られることが保証される。 この場合、正常に動作させるためには、 \fBCLONE_VM\fP
417 オプションを指定してはならない。
418
419 いくつかのアーキテクチャでは、システムコールの引き数の順序は上記とは異なっている。 microblaze, ARM, ARM 64, PA\-RISC,
420 arc, Power PC, xtensa, MIPS アーキテクチャでは、 4 番目と 5 番目の引き数の順番が逆である。 cris と s390
421 アーキテクチャでは、最初と 2 番目の引き数の順番が逆である。
422 .SS "blackfin, m68k, sparc"
423 blackfin, m68k, sparc では引き数渡しの規約が上記の説明とは異なる。 詳細は、カーネル (と glibc) のソースを参照のこと。
424 .SS ia64
425 ia64 では、別のインターフェースが使用される:
426 .nf
427
428 \fBint __clone2(int (*\fP\fIfn\fP\fB)(void *), \fP
429 \fB             void *\fP\fIchild_stack_base\fP\fB, size_t \fP\fIstack_size\fP\fB,\fP
430 \fB             int \fP\fIflags\fP\fB, void *\fP\fIarg\fP\fB, ... \fP
431 \fB          /* pid_t *\fP\fIptid\fP\fB, struct user_desc *\fP\fItls\fP\fB, pid_t *\fP\fIctid\fP\fB */ );\fP
432 .fi
433 .PP
434 上記のプロトタイプは glibc ラッパー関数用のものである。 素のシステムコールのインターフェースには引き数 \fIfn\fP と \fIarg\fP がない。
435 また、引き数の順序が変わり、 \fIflags\fP が最初の引き数で、 \fItls\fP が最後の引き数である。
436 .PP
437 \fB__clone2\fP() は \fBclone\fP() と同じように動作するが、以下の点が異なる: \fIchild_stack_base\fP
438 は子プロセスのスタックエリアの最小のアドレスを指し、 \fIstack_size\fP は \fIchild_stack_base\fP
439 が指し示すスタックエリアの大きさを示す。
440 .SS "Linux 2.4 以前"
441 Linux 2.4 以前では、 \fBclone\fP()  は引き数 \fIptid\fP, \fItls\fP, \fIctid\fP を取らない。
442 .SH 返り値
443 .\" gettid(2) returns current->pid;
444 .\" getpid(2) returns current->tgid;
445 成功した場合、呼び出し元の実行スレッドには子プロセスのスレッドID が返される。 失敗した場合、 呼び出し元のコンテキストには \-1
446 が返され、子プロセスは 作成されず、 \fIerrno\fP が適切に設定される。
447 .SH エラー
448 .TP 
449 \fBEAGAIN\fP
450 すでに実行中のプロセスが多すぎる。
451 .TP 
452 \fBEINVAL\fP
453 \fBCLONE_SIGHAND\fP が指定されていたが、 \fBCLONE_VM\fP が指定されていなかった。 (Linux 2.6.0\-test6 以降)
454 .TP 
455 \fBEINVAL\fP
456 .\" .TP
457 .\" .B EINVAL
458 .\" Precisely one of
459 .\" .B CLONE_DETACHED
460 .\" and
461 .\" .B CLONE_THREAD
462 .\" was specified.
463 .\" (Since Linux 2.6.0-test6.)
464 \fBCLONE_THREAD\fP が指定されていたが、 \fBCLONE_SIGHAND\fP が指定されていなかった。 (Linux 2.5.35 以降)
465 .TP 
466 \fBEINVAL\fP
467 \fBCLONE_FS\fP と \fBCLONE_NEWNS\fP の両方が \fIflags\fP に指定された。
468 .TP 
469 \fBEINVAL\fP
470 \fBCLONE_NEWIPC\fP と \fBCLONE_SYSVSEM\fP の両方が \fIflags\fP に指定された。
471 .TP 
472 \fBEINVAL\fP
473 \fBCLONE_NEWPID\fP と \fBCLONE_THREAD\fP の両方が \fIflags\fP に指定された。
474 .TP 
475 \fBEINVAL\fP
476 \fIchild_stack\fP にゼロを指定した場合に \fBclone\fP()  が返す。
477 .TP 
478 \fBEINVAL\fP
479 \fIflags\fP に \fBCLONE_NEWIPC\fP が指定されたが、カーネルでオプション \fBCONFIG_SYSVIPC\fP と
480 \fBCONFIG_IPC_NS\fP が有効になっていなかった。
481 .TP 
482 \fBEINVAL\fP
483 \fIflags\fP に \fBCLONE_NEWNET\fP が指定されたが、カーネルでオプション \fBCONFIG_NET_NS\fP が有効になっていなかった。
484 .TP 
485 \fBEINVAL\fP
486 \fIflags\fP に \fBCLONE_NEWPID\fP が指定されたが、カーネルでオプション \fBCONFIG_PID_NS\fP が有効になっていなかった。
487 .TP 
488 \fBEINVAL\fP
489 \fIflags\fP に \fBCLONE_NEWUTS\fP が指定されたが、カーネルでオプション \fBCONFIG_UTS\fP が有効になっていなかった。
490 .TP 
491 \fBENOMEM\fP
492 子プロセスのために確保すべきタスク構造体や、呼び出し元のコンテキストの 一部をコピーするのに必要なメモリを十分に割り当てることができない。
493 .TP 
494 \fBEPERM\fP
495 非特権プロセス (\fBCAP_SYS_ADMIN\fP を持たないプロセス) が \fBCLONE_NEWIPC\fP, \fBCLONE_NEWNET\fP,
496 \fBCLONE_NEWNS\fP, \fBCLONE_NEWPID\fP, \fBCLONE_NEWUTS\fP を指定した。
497 .TP 
498 \fBEPERM\fP
499 PID が 0 以外のプロセスによって \fBCLONE_PID\fP が指定された。
500 .SH バージョン
501 libc5 には \fBclone\fP()  はない。glibc2 では \fBclone\fP()  が提供されており、このマニュアルページに記載の通りである。
502 .SH 準拠
503 \fBclone\fP() は Linux 特有であり、移植を考慮したプログラムでは使用すべき ではない。
504 .SH 注意
505 カーネル 2.4.x 系列では、一般的には \fBCLONE_THREAD\fP フラグを指定しても新しいスレッドの親を
506 呼び出し元プロセスの親と同じにはしない。 しかし、バージョン 2.4.7〜2.4.18 のカーネルでは、 (カーネル 2.6 と同じように)
507 CLONE_THREAD フラグを指定すると、 暗黙のうちに CLONE_PARENT フラグを指定したことになる。
508
509 \fBCLONE_DETACHED\fP というフラグが、2.5.32 で導入されて以来しばらくの間存在した。
510 このフラグは親プロセスが子プロセス終了のシグナルを必要としないことを 表すものである。 2.6.2 で、 CLONE_DETATCHED を
511 CLONE_THREAD と一緒に指定する必要はなくなった。 このフラグはまだ定義されているが、何の効果もない。
512
513 i386 上では、 \fBclone\fP()  は vsyscall 経由ではなく、直接 \fIint $0x80\fP 経由で呼び出すべきである。
514 .SH バグ
515 NPTL スレッド・ライブラリを含んでいる GNU C ライブラリのいくつかのバージョン には、 \fBgetpid\fP(2)
516 のラッパー関数が含まれており、このラッパー関数は PID をキャッシュする。 このキャッシュ処理が正しく動作するためには glibc の
517 \fBclone\fP()  のラッパー関数での助けが必要だが、現状の実装では、 ある状況下においてキャッシュが最新とならない可能性がある。 特に、
518 \fBclone\fP()  の呼び出し直後にシグナルが子プロセスに配送された場合に、 そのシグナルに対するハンドラ内で \fBgetpid\fP(2)
519 を呼び出すと、それまでに clone のラッパー関数が子プロセスの PID キャッシュを 更新する機会が得られていなければ、呼び出し元プロセス
520 ("親プロセス") の PID が 返される可能性がある。 (この議論では、子プロセスが \fBCLONE_THREAD\fP
521 を使って作成された場合のことは無視している。 子プロセスが \fBCLONE_THREAD\fP を作って作成された場合には、
522 呼び出し元と子プロセスは同じスレッド・グループに属すので、 \fBgetpid\fP(2)  は子プロセスと \fBclone\fP()
523 を呼び出したプロセスで同じ値を返すのが「正しい」。 キャッシュが最新とならない問題 (stale\-cache problem) は、 \fIflags\fP
524 に \fBCLONE_VM\fP が含まれている場合にも発生しない。)  本当の値を得るためには、次のようなコードを使う必要があるかもしれない。
525 .nf
526
527     #include <syscall.h>
528
529     pid_t mypid;
530
531     mypid = syscall(SYS_getpid);
532 .fi
533 .\" See also the following bug reports
534 .\" https://bugzilla.redhat.com/show_bug.cgi?id=417521
535 .\" http://sourceware.org/bugzilla/show_bug.cgi?id=6910
536 .SH 例
537 .SS "別の UTS 名前空間で動作する子プロセスを作成する"
538 以下のプログラムは、 別の UTS 名前空間で動作する子プロセスを \fBclone\fP() を使って作成する例である。 子プロセスは、自分の UTS
539 名前空間においてホスト名を変更する。 それから、親プロセスと子プロセスの両方でシステムのホスト名を表示し、 親プロセスと子プロセスの UTS
540 名前空間でホスト名が異なることを確認する。 このプログラムの使用方法については \fBsetns\fP(2) を参照。
541
542 .nf
543 #define _GNU_SOURCE
544 #include <sys/wait.h>
545 #include <sys/utsname.h>
546 #include <sched.h>
547 #include <string.h>
548 #include <stdio.h>
549 #include <stdlib.h>
550 #include <unistd.h>
551
552 #define errExit(msg)    do { perror(msg); exit(EXIT_FAILURE); \e
553                         } while (0)
554
555 static int              /* clone された子プロセスの開始関数 */
556 childFunc(void *arg)
557 {
558     struct utsname uts;
559
560     /* 子プロセスの UTS 名前空間でホスト名を変更する */
561
562     if (sethostname(arg, strlen(arg)) == \-1)
563         errExit("sethostname");
564
565     /* ホスト名を取得し表示する */
566
567     if (uname(&uts) == \-1)
568         errExit("uname");
569     printf("uts.nodename in child:  %s\en", uts.nodename);
570
571     /* sleep を使ってしばらく名前空間をオープンされたままにする。
572        これにより実験を行うことができる \-\- 例えば、
573        別のプロセスがこの名前空間に参加するなど。 */
574
575     sleep(200);
576
577     return 0;           /* 子プロセスを終了する */
578 }
579
580 #define STACK_SIZE (1024 * 1024)    /* clone される子プロセスのスタックサイズ */
581
582 int
583 main(int argc, char *argv[])
584 {
585     char *stack;                    /* スタックバッファの先頭 */
586     char *stackTop;                 /* スタックバッファの末尾 */
587     pid_t pid;
588     struct utsname uts;
589
590     if (argc < 2) {
591         fprintf(stderr, "Usage: %s <child\-hostname>\en", argv[0]);
592         exit(EXIT_SUCCESS);
593     }
594
595     /* 子プロセス用のスタックを割り当てる */
596
597     stack = malloc(STACK_SIZE);
598     if (stack == NULL)
599         errExit("malloc");
600     stackTop = stack + STACK_SIZE;  /* スタックは下方向に伸びるものとする */
601
602     /* 自分専用の UTS 名前空間を持つ子プロセスを作成する;
603        子プロセスは childFunc() の実行を開始する */
604
605     pid = clone(childFunc, stackTop, CLONE_NEWUTS | SIGCHLD, argv[1]);
606     if (pid == \-1)
607         errExit("clone");
608     printf("clone() returned %ld\en", (long) pid);
609
610     /* 親プロセスの実行はここに来る */
611
612     sleep(1);           /* 子プロセスがホスト名を変更する時間を与える */
613
614     /* 親プロセスの UTS 名前空間でのホスト名を表示する;
615        これは子プロセスの UTS 名前空間でのホスト名とは異なる */
616
617     if (uname(&uts) == \-1)
618         errExit("uname");
619     printf("uts.nodename in parent: %s\en", uts.nodename);
620
621     if (waitpid(pid, NULL, 0) == \-1)    /* 子プロセスを待つ */
622         errExit("waitpid");
623     printf("child has terminated\en");
624
625     exit(EXIT_SUCCESS);
626 }
627 .fi
628 .SH 関連項目
629 \fBfork\fP(2), \fBfutex\fP(2), \fBgetpid\fP(2), \fBgettid\fP(2), \fBkcmp\fP(2),
630 \fBset_thread_area\fP(2), \fBset_tid_address\fP(2), \fBsetns\fP(2), \fBtkill\fP(2),
631 \fBunshare\fP(2), \fBwait\fP(2), \fBcapabilities\fP(7), \fBpthreads\fP(7)
632 .SH この文書について
633 この man ページは Linux \fIman\-pages\fP プロジェクトのリリース 3.53 の一部
634 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は
635 http://www.kernel.org/doc/man\-pages/ に書かれている。