1 .\" Copyright (C) 2008 Michael Kerrisk <mtk.manpages@gmail.com>
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16 .\" Foundation, Inc., 59 Temple Place, Suite 330, Boston,
19 .\" 2008-10-10, mtk: describe eventfd2(), and EFD_NONBLOCK and EFD_CLOEXEC
21 .\"*******************************************************************
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25 .\"*******************************************************************
26 .TH EVENTFD 2 2010\-08\-30 Linux "Linux Programmer's Manual"
28 eventfd \- イベント通知用のファイルディスクリプタを生成する
30 \fB#include <sys/eventfd.h>\fP
32 \fBint eventfd(unsigned int \fP\fIinitval\fP\fB, int \fP\fIflags\fP\fB);\fP
34 \fBeventfd\fP() は "eventfd オブジェクト" を生成する。 eventfd
35 オブジェクトはユーザ空間アプリケーションがイベント待ち受け/通知用の 仕組みとして使うことができる。また、カーネルがユーザ空間アプリケーションに
36 イベントを通知するためにも使うことができる。 このオブジェクトには、unsigned の 64 ビット整数 (\fIuint64_t\fP)
37 型のカウンタが含まれており、このカウンタはカーネルにより管理される。 このカウンタは \fIinitval\fP 引き数で指定された値で初期化される。
39 以下の値のいくつかをビット単位の論理和 (OR) で指定することで、
40 \fBeventfd\fP() の振舞いを変更することができる。
42 \fBEFD_CLOEXEC\fP (Linux 2.6.27 以降)
43 新しいファイルディスクリプタに対して close\-on\-exec (\fBFD_CLOEXEC\fP) フラグをセットする。
44 このフラグが役に立つ理由については、 \fBopen\fP(2) の \fBO_CLOEXEC\fP フラグの説明を参照のこと。
46 \fBEFD_NONBLOCK\fP (Linux 2.6.27 以降)
47 新しく生成されるオープンファイル記述 (open file description) の \fBO_NONBLOCK\fP
48 ファイルステータスフラグをセットする。 このフラグを使うことで、 \fBO_NONBLOCK\fP をセットするために \fBfcntl\fP(2)
51 \fBEFD_SEMAPHORE\fP (Linux 2.6.30 以降)
52 新しいファイルディスクリプタからの読み出しにおいて、セマフォ風の動作を行う。
55 バージョン 2.6.26 以前の Linux では、 \fIflags\fP 引き数は未使用であり、0 を指定しなければならない。
57 \fBeventfd\fP() は eventfd オブジェクトを参照するのに使用できる新しいファイルディスクリプタ
58 を返す。返されたファイルディスクリプタに対しては以下の操作を実行できる。
61 \fBread\fP(2) は成功すると、8 バイトの整数を返す。
62 渡されたバッファの大きさが 8 バイト未満の場合、
63 \fBread\fP(2) はエラー \fBEINVAL\fP で失敗する。
65 \fBread\fP(2) が返す値は、ホストバイトオーダ、つまり
66 そのホストマシンにおける整数の通常のバイトオーダである。
68 \fBread\fP(2) の動作は、 eventfd カウンタの現在の値が 0 以外であるかと、
69 eventfd ファイルディスクリプタを作成する際に \fBEFD_SEMAPHORE\fP フラグが
73 \fBEFD_SEMAPHORE\fP が指定されておらず、eventfd カウンタが 0 以外の値
74 の場合、 \fBread\fP(2) はカウンタ値を格納した 8 バイトの値を返し、
77 \fBEFD_SEMAPHORE\fP が指定されていて eventfd カウンタが 0 以外の値の場合、
78 \fBread\fP(2) は値 1 の 8 バイト値を返し、カウンタ値は 1 減算される。
80 \fBread\fP(2) を呼び出した時点で eventfd カウンタが 0 の場合、 \fBread\fP(2)
81 はカウンタが 0 以外になるまで停止 (block) する (0 以外になった時点で
82 \fBread\fP(2) は上記で述べた通り実行を再開する)、 もしくはファイルディスク
83 リプタが非停止 (nonblocking) に設定されている場合はエラー \fBEAGAIN\fPで
88 \fBwrite\fP(2) は、引き数のバッファで渡された 8 バイトの整数値をカウンタに加算する。 カウンタに格納可能な最大値は unsigned の
89 64 ビット整数の最大値から 1 を引いた値 (すなわち 0xfffffffffffffffe) である。
90 加算を行うとカウンタ値が最大値を超過する場合には、 そのファイルディスクリプタに対して \fBread\fP(2) が実行されるまで、
91 \fBwrite\fP(2) は停止 (block) する、 もしくはファイルディスクリプタが非停止 (nonblocking)
92 に設定されている場合はエラー \fBEAGAIN\fP で失敗する。
94 渡されたバッファの大きさが 8 バイト未満の場合、もしくは 値 0xffffffffffffffff を書き込もうとした場合、 \fBwrite\fP(2)
95 はエラー \fBEINVAL\fP で失敗する。
97 \fBpoll\fP(2), \fBselect\fP(2) (と同様の操作)
98 返されたファイルディスクリプタは、 \fBpoll\fP(2) (\fBepoll\fP(7) も同じ) や \fBselect\fP(2)
99 をサポートしており、以下のような動作をする。
102 カウンタが 0 より大きい値の場合、 ファイルディスクリプタは読み出し可能となる (\fBselect\fP(2) の \fIreadfds\fP 引き数や
103 \fBpoll\fP(2) の \fBPOLLIN\fP フラグ)。
105 少なくとも値 "1" を、停止 (block) を伴わずに書き込める場合、 ファイルディスクリプタは書き込み可能となる (\fBselect\fP(2) の
106 \fIwritefds\fP 引き数や \fBpoll\fP(2) の \fBPOLLOUT\fP フラグ)。
108 カウンタ値のオーバーフローが検出された場合、 \fBselect\fP(2) はファイルディスクリプタは読み出し可能と書き込み可能の両方を通知し、
109 \fBpoll\fP(2) は \fBPOLLERR\fP イベントを返す。 上述の通り、 \fBwrite\fP(2)
110 でカウンタがオーバーフローすることは決してない。 しかしながら、 KAIO サブシステムによって 2^64 回の eventfd "signal
111 posts" が 実行された場合にはオーバーフローが起こり得る (理論的にはあり得るが、実用的にはあり得ない)。 オーバーフローが発生した場合、
112 \fBread\fP(2) は \fIuint64_t\fP の最大値 (すなわち 0xffffffffffffffff) を返す。
115 eventfd ファイルディスクリプタは、これ以外のファイルディスクリプタ 多重 API である \fBpselect\fP(2), \fBppoll\fP(2),
116 \fBepoll\fP(7) もサポートしている。
119 ファイルディスクリプタがそれ以降は必要なくなった際には、クローズすべきである。 同じ eventfd
120 オブジェクトに関連付けられたファイルディスクリプタが全て クローズされると、そのオブジェクト用の資源がカーネルにより解放される。
122 \fBfork\fP(2) で生成された子プロセスは、 \fBeventfd\fP() で生成されたファイル
123 ディスクリプタのコピーを継承する。 複製されたファイルディスクリプタは同
124 じ eventfd オブジェクトに関連付けられる。
125 close\-on\-exec フラグが設定されていない場合、 \fBexecve\fP(2) の前後で
126 \fBeventfd\fP() で生成されたファイルディスクリプタは保持される。
128 成功すると、 \fBeventfd\fP() は新規の eventfd ファイルディスクリプタを返す。 エラーの場合、\-1 を返し、 \fIerrno\fP
133 \fIflags\fP にサポートされていない値が指定された。
136 オープン済みのファイルディスクリプタの数がプロセスあたりの上限に 達していた。
139 オープン済みのファイル総数がシステム全体の上限に達していた。
142 .\" Note from Davide:
143 .\" The ENODEV error is basically never going to happen if
144 .\" the kernel boots correctly. That error happen only if during
145 .\" the kernel initialization, some error occur in the anonymous
146 .\" inode source initialization.
147 (カーネル内の) 無名 inode デバイスをマウントできなかった。
150 新しい eventfd ファイルディスクリプタを生成するのに十分なメモリがなかった。
152 .\" eventfd() is in glibc 2.7, but reportedly does not build
153 \fBeventfd\fP() はカーネル 2.6.22 以降の Linux で利用可能である。 正しく動作する glibc 側のサポートはバージョン
154 2.8 以降で提供されている。 \fBeventfd2\fP() システムコール (「注意」参照) は カーネル 2.6.27 以降の Linux
155 で利用可能である。 バージョン 2.9 以降では、glibc の \fBeventfd\fP() のラッパー関数は、カーネルが対応していれば
156 \fBeventfd2\fP() システムコールを利用する。
158 \fBeventfd\fP() と \fBeventfd2\fP() は Linux 固有である。
160 アプリケーションは、パイプをイベントを通知するためだけに使用している 全ての場面において、パイプの代わりに eventfd ファイルディスクリプタを
161 使用することができる。 eventfd ファイルディスクリプタを使う方が、パイプを使う場合に比べて
162 カーネルでのオーバヘッドは比べるとずっと小さく、ファイルディスクリプタも 一つしか必要としない (パイプの場合は二つ必要である)。
164 .\" or eventually syslets/threadlets
165 カーネル内で使用すると、eventfd ファイルディスクリプタは カーネル空間とユーザ空間のブリッジ機能を提供することができ、 例えば KAIO
166 (kernel AIO) のような機能が、あるファイルディスクリプタに何らかの操作が完了したことを 通知することができる。
168 eventfd ファイルディスクリプタの重要な点は、 eventfd ファイルディスクリプタが \fBselect\fP(2), \fBpoll\fP(2),
169 \fBepoll\fP(7) を使って他のファイルディスクリプタと全く同様に監視できる点である。 このことは、アプリケーションは「従来の
170 (traditional)」 ファイルの状態変化と eventfd インタフェースをサポートする他のカーネル機構の状態変化を同時に監視
171 できることを意味する (\fBeventfd\fP() インタフェースがない時には、これらのカーネル機構は \fBselect\fP(2),
172 \fBpoll\fP(2), \fBepoll\fP(7) 経由で多重することはできなかった)。
173 .SS "下層にある Linux のシステムコール"
174 下層にある Linux システムコールは二種類あり、 \fBeventfd\fP() と、もっと新しい \fBeventfd2\fP() である。
175 \fBeventfd\fP() は \fIflags\fP 引き数を実装していない。 \fBeventfd2\fP() では上記の値の \fIflags\fP
176 が実装されている。 glibc のラッパー関数は、 \fBeventfd2\fP() が利用可能であれば、これを使用する。
178 GNU C ライブラリは、eventfd ファイルディスクリプタの読み出しと書き込みに
179 を関する詳細のいくつか抽象化するために、一つの型と、二つの関数を追加で 定義している。
183 typedef uint64_t eventfd_t;
185 int eventfd_read(int fd, eventfd_t *value);
186 int eventfd_write(int fd, eventfd_t value);
190 これらの関数は、eventfd ファイルディスクリプタに対する読み出しと 書き込みの操作を実行し、正しいバイト数が転送された場合には 0
191 を返し、そうでない場合は \-1 を返す。
194 以下のプログラムは eventfd ファイルディスクリプタを生成し、 その後 fork を実行して子プロセスを生成する。 親プロセスが少しの間
195 sleep する間に、子プロセスは プログラムのコマンドライン引き数で指定された整数(列)をそれぞれ eventfd ファイルディスクリプタに書き込む。
196 親プロセスは sleep を完了すると eventfd ファイルディスクリプタから 読み出しを行う。
198 以下に示すシェルセッションにこのプログラムの使い方を示す。
202 $\fB ./a.out 1 2 4 7 14\fP
203 Child writing 1 to efd
204 Child writing 2 to efd
205 Child writing 4 to efd
206 Child writing 7 to efd
207 Child writing 14 to efd
208 Child completed write loop
210 Parent read 28 (0x1c) from efd
216 #include <sys/eventfd.h>
220 #include <stdint.h> /* Definition of uint64_t */
222 #define handle_error(msg) \e
223 do { perror(msg); exit(EXIT_FAILURE); } while (0)
226 main(int argc, char *argv[])
233 fprintf(stderr, "Usage: %s <num>...\en", argv[0]);
239 handle_error("eventfd");
243 for (j = 1; j < argc; j++) {
244 printf("Child writing %s to efd\en", argv[j]);
245 u = strtoull(argv[j], NULL, 0);
246 /* strtoull() allows various bases */
247 s = write(efd, &u, sizeof(uint64_t));
248 if (s != sizeof(uint64_t))
249 handle_error("write");
251 printf("Child completed write loop\en");
258 printf("Parent about to read\en");
259 s = read(efd, &u, sizeof(uint64_t));
260 if (s != sizeof(uint64_t))
261 handle_error("read");
262 printf("Parent read %llu (0x%llx) from efd\en",
263 (unsigned long long) u, (unsigned long long) u);
267 handle_error("fork");
272 \fBfutex\fP(2), \fBpipe\fP(2), \fBpoll\fP(2), \fBread\fP(2), \fBselect\fP(2),
273 \fBsignalfd\fP(2), \fBtimerfd_create\fP(2), \fBwrite\fP(2), \fBepoll\fP(7),
274 \fBsem_overview\fP(7)
276 この man ページは Linux \fIman\-pages\fP プロジェクトのリリース 3.41 の一部
277 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は
278 http://www.kernel.org/doc/man\-pages/ に書かれている。