OSDN Git Service

(split) LDP: Force update POT and ja.po
[linuxjm/LDP_man-pages.git] / draft / man7 / capabilities.7
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2 .\"
3 .\" Permission is granted to make and distribute verbatim copies of this
4 .\" manual provided the copyright notice and this permission notice are
5 .\" preserved on all copies.
6 .\"
7 .\" Permission is granted to copy and distribute modified versions of this
8 .\" manual under the conditions for verbatim copying, provided that the
9 .\" entire resulting derived work is distributed under the terms of a
10 .\" permission notice identical to this one.
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20 .\" Formatted or processed versions of this manual, if unaccompanied by
21 .\" the source, must acknowledge the copyright and authors of this work.
22 .\"
23 .\" 6 Aug 2002 - Initial Creation
24 .\" Modified 2003-05-23, Michael Kerrisk, <mtk.manpages@gmail.com>
25 .\" Modified 2004-05-27, Michael Kerrisk, <mtk.manpages@gmail.com>
26 .\" 2004-12-08, mtk Added O_NOATIME for CAP_FOWNER
27 .\" 2005-08-16, mtk, Added CAP_AUDIT_CONTROL and CAP_AUDIT_WRITE
28 .\" 2008-07-15, Serge Hallyn <serue@us.bbm.com>
29 .\"     Document file capabilities, per-process capability
30 .\"     bounding set, changed semantics for CAP_SETPCAP,
31 .\"     and other changes in 2.6.2[45].
32 .\"     Add CAP_MAC_ADMIN, CAP_MAC_OVERRIDE, CAP_SETFCAP.
33 .\" 2008-07-15, mtk
34 .\"     Add text describing circumstances in which CAP_SETPCAP
35 .\"     (theoretically) permits a thread to change the
36 .\"     capability sets of another thread.
37 .\"     Add section describing rules for programmatically
38 .\"     adjusting thread capability sets.
39 .\"     Describe rationale for capability bounding set.
40 .\"     Document "securebits" flags.
41 .\"     Add text noting that if we set the effective flag for one file
42 .\"     capability, then we must also set the effective flag for all
43 .\"     other capabilities where the permitted or inheritable bit is set.
44 .\" 2011-09-07, mtk/Serge hallyn: Add CAP_SYSLOG
45 .\"
46 .\"*******************************************************************
47 .\"
48 .\" This file was generated with po4a. Translate the source file.
49 .\"
50 .\"*******************************************************************
51 .TH CAPABILITIES 7 2012\-04\-15 Linux "Linux Programmer's Manual"
52 .SH 名前
53 capabilities \- Linux のケーパビリティ (capability) の概要
54 .SH 説明
55 権限のチェックを行う観点から見ると、伝統的な UNIX の実装では プロセスは二つのカテゴリに分類できる: \fI特権\fP プロセス (実効ユーザID が
56 0 のプロセス。ユーザID 0 は スーパーユーザや root と呼ばれる) と \fI非特権\fP プロセス (実効ユーザID が 0 以外のプロセス)
57 である。 非特権プロセスでは、プロセスの資格情報 (通常は、実効UID 、実効GID と追加のグループリスト) に基づく権限チェックが行われるのに対し、
58 特権プロセスでは全てのカーネルの権限チェックがバイパスされる。
59
60 .\"
61 バージョン 2.2 以降の Linux では、 これまでスーパーユーザに結び付けられてきた権限を、 いくつかのグループに分割している。これらのグループは
62 \fIケーパビリティ\fP(capability)  と呼ばれ、グループ毎に独立に有効、無効を設定できる。 ケーパビリティはスレッド単位の属性である。
63 .SS ケーパビリティのリスト
64 以下のリストは、 Linux で実装されているケーパビリティと 各ケーパビリティが許可する操作と動作をまとめたものである。
65 .TP 
66 \fBCAP_AUDIT_CONTROL\fP (Linux 2.6.11 以降)
67 カーネル監査 (audit) の有効無効の切り替え、 監査のフィルタルールの変更、 監査の状況やフィルタルールの取得ができる。
68 .TP 
69 \fBCAP_AUDIT_WRITE\fP (Linux 2.6.11 以降)
70 カーネル監査のログにレコードを書き込む。
71 .TP 
72 \fBCAP_CHOWN\fP
73 ファイルの UID とGID を任意に変更する (\fBchown\fP(2)  参照)。
74 .TP 
75 \fBCAP_DAC_OVERRIDE\fP
76 ファイルの読み出し、書き込み、実行の権限チェックをバイパスする (DAC は "discretionary access control
77 (任意のアクセス制御)" の略である)。
78 .TP 
79 \fBCAP_DAC_READ_SEARCH\fP
80 ファイルの読み出し権限のチェックとディレクトリの読み出しと実行 の権限チェックをバイパスする。
81 .TP 
82 \fBCAP_FOWNER\fP
83 .PD 0
84 .RS
85 .IP * 2
86 通常、プロセスのファイルシステム UID がファイルの UID に一致することが 要求される操作 (例えば \fBchmod\fP(2),
87 \fButime\fP(2))  における権限チェックをバイパスする。 但し、 \fBCAP_DAC_OVERRIDE\fP か
88 \fBCAP_DAC_READ_SEARCH\fP によりチェックが行われる操作は除く。
89 .IP *
90 任意のファイルに対して拡張ファイル属性を設定する (\fBchattr\fP(1)  参照)。
91 .IP *
92 任意のファイルに対してアクセス制御リスト (ACL) を設定する。
93 .IP *
94 ファイルの削除の際にディレクトリのスティッキービットを無視する。
95 .IP *
96 \fBopen\fP(2)  や \fBfcntl\fP(2)  で任意のファイルに対して \fBO_NOATIME\fP を指定する。
97 .RE
98 .PD
99 .TP 
100 \fBCAP_FSETID\fP
101 ファイルが変更されたときに set\-user\-ID とset\-group\-ID の許可ビットをクリア しない。呼び出し元プロセスのファイルシステム
102 GID と追加の GID のいずれとも GID が一致しないファイルに対して set\-group\-ID ビットを設定する。
103 .TP 
104 \fBCAP_IPC_LOCK\fP
105 .\" FIXME As at Linux 3.2, there are some strange uses of this capability
106 .\" in other places; they probably should be replaced with something else.
107 メモリーのロック (\fBmlock\fP(2), \fBmlockall\fP(2), \fBmmap\fP(2), \fBshmctl\fP(2))  を行う。
108 .TP 
109 \fBCAP_IPC_OWNER\fP
110 System V IPC オブジェクトに対する操作に関して権限チェックをバイパスする。
111 .TP 
112 \fBCAP_KILL\fP
113 .\" FIXME CAP_KILL also has an effect for threads + setting child
114 .\"       termination signal to other than SIGCHLD: without this
115 .\"       capability, the termination signal reverts to SIGCHLD
116 .\"       if the child does an exec().  What is the rationale
117 .\"       for this?
118 シグナルを送信する際に権限チェックをバイパスする (\fBkill\fP(2)  参照)。これには \fBioctl\fP(2)  の \fBKDSIGACCEPT\fP
119 操作の使用も含まれる。
120 .TP 
121 \fBCAP_LEASE\fP (Linux 2.4 以降)
122 任意のファイルに対して ファイルリースを設定する (\fBfcntl\fP(2)  参照)。
123 .TP 
124 \fBCAP_LINUX_IMMUTABLE\fP
125 .\" These attributes are now available on ext2, ext3, Reiserfs, XFS, JFS
126 拡張ファイル属性 \fBFS_APPEND_FL\fP と \fBFS_IMMUTABLE_FL\fP を設定する (\fBchattr\fP(1)  参照)。
127 .TP 
128 \fBCAP_MAC_ADMIN\fP (Linux 2.6.25 以降)
129 強制アクセス制御 (MAC) を上書きする。 Smack Linux Security Module (LSM) 用に実装されている。
130 .TP 
131 \fBCAP_MAC_OVERRIDE\fP (Linux 2.6.25 以降)
132 MAC の設定や状態を変更する。 Smack LSM 用に実装されている。
133 .TP 
134 \fBCAP_MKNOD\fP (Linux 2.4 以降)
135 (Linux 2.4 以降)  \fBmknod\fP(2)  を使用してスペシャルファイルを作成する。
136 .TP 
137 \fBCAP_NET_ADMIN\fP
138 各種のネットワーク関係の操作を実行する:
139 .PD 0
140 .RS
141 .IP * 2
142 インターフェースの設定
143 .IP *
144 IP のファイアウォール、マスカレード、アカウンティング
145 .IP *
146 ルーティングテーブルの変更
147 .IP *
148 透過的プロキシでの任意のアドレスの割り当て (bind)
149 .IP *
150 サービス種別 (type\-of\-service; TOS) のセット
151 .IP *
152 ドライバの統計情報のクリア
153 .IP *
154 promiscuous モードをセットする
155 .IP *
156 マルチキャストを有効にする
157 .IP *
158 \fBsetsockopt\fP(2) を使って以下のソケットオプションを設定する:
159 \fBSO_DEBUG\fP, \fBSO_MARK\fP,
160 \fBSO_PRIORITY\fP (優先度を 0 から 6 以外に設定する場合),
161 \fBSO_RCVBUFFORCE\fP, and \fBSO_SNDBUFFORCE\fP
162 .RE
163 .PD
164 .TP 
165 \fBCAP_NET_BIND_SERVICE\fP
166 インターネットドメインの特権ポート (ポート番号が 1024 番未満)  をバインドできる。
167 .TP 
168 \fBCAP_NET_BROADCAST\fP
169 (未使用) ソケットのブロードキャストと、マルチキャストの待ち受けを行う。
170 .TP 
171 \fBCAP_NET_RAW\fP
172 .PD 0
173 .RS
174 .IP * 2
175 RAW ソケットと PACKET ソケットを使用する。
176 .IP *
177 透過的プロキシでの任意のアドレスの割り当て (bind)
178 .RE
179 .PD
180 .\" Also various IP options and setsockopt(SO_BINDTODEVICE)
181 .TP 
182 \fBCAP_SETGID\fP
183 プロセスの GID と追加の GID リストに対する任意の操作を行う。 UNIX ドメインソケット経由でソケットの資格情報 (credential)
184 を渡す際に 偽の GID を渡すことができる。
185 .TP 
186 \fBCAP_SETFCAP\fP (Linux 2.6.24 以降)
187 ファイルケーパビリティを設定する。
188 .TP 
189 \fBCAP_SETPCAP\fP
190 ファイルケーパビリティがサポートされていない場合: 呼び出し元が許可されているケーパビリティセットに含まれる任意のケーパビリティを、
191 他のプロセスに付与したり、削除したりできる。 (カーネルがファイルケーパビリティをサポートしている場合、 \fBCAP_SETPCAP\fP
192 はこの役割を持たない。 なぜなら、ファイルケーパビリティをサポートしているカーネルでは \fBCAP_SETPCAP\fP は全く別の意味を持つからである。)
193
194 ファイルケーパビリティがサポートされている場合: 呼び出し元スレッドのバウンディングセットの任意のケーパビリティを
195 自身の継承可能ケーパビリティセットに追加できる。 (\fBprctl\fP(2)  \fBPR_CAPBSET_DROP\fP を使って)
196 バウンディングセットからケーパビリティを削除できる。 \fIsecurebits\fP フラグを変更できる。
197 .TP 
198 \fBCAP_SETUID\fP
199 .\" FIXME CAP_SETUID also an effect in exec(); document this.
200 プロセスの UID に対する任意の操作 (\fBsetuid\fP(2), \fBsetreuid\fP(2), \fBsetresuid\fP(2),
201 \fBsetfsuid\fP(2))  を行う。 UNIX ドメインソケット経由でソケットの資格情報 (credential) を渡す際に 偽の UID
202 を渡すことができる。
203 .TP 
204 \fBCAP_SYS_ADMIN\fP
205 .PD 0
206 .RS
207 .IP * 2
208 以下のシステム管理用の操作を実行する: \fBquotactl\fP(2), \fBmount\fP(2), \fBumount\fP(2), \fBswapon\fP(2),
209 \fBswapoff\fP(2), \fBsethostname\fP(2), \fBsetdomainname\fP(2).
210 .IP *
211 特権が必要な \fBsyslog\fP(2) の操作を実行する
212 (Linux 2.6.37 以降では、このような操作を許可するには
213 \fBCAP_SYSLOG\fP を使うべきである)
214 .IP *
215 \fBVM86_REQUEST_IRQ\fP \fBvm86\fP(2) コマンドを実行する。
216 .IP *
217 任意の System V IPC オブジェクトに対する \fBIPC_SET\fP と \fBIPC_RMID\fP 操作を実行する。
218 .IP *
219 拡張属性 \fItrusted\fP と \fIsecurity\fP に対する操作を実行する (\fBattr\fP(5)  参照)。
220 .IP *
221 \fBlookup_dcookie\fP(2)  を呼び出す。
222 .IP *
223 \fBioprio_set\fP(2)  を使って I/O スケジューリングクラス \fBIOPRIO_CLASS_RT\fP,
224 \fBIOPRIO_CLASS_IDLE\fP を割り当てる (\fBIOPRIO_CLASS_IDLE\fP は Linux 2.6.25
225 より前のバージョンのみ)。
226 .IP *
227 ソケットの資格情報 (credential) を渡す際に偽の UID を渡す。
228 .IP *
229 ファイルをオープンするシステムコール (例えば \fBaccept\fP(2), \fBexecve\fP(2), \fBopen\fP(2), \fBpipe\fP(2))
230 でシステム全体でオープンできるファイル数の上限 \fI/proc/sys/fs/file\-max\fP を超過する。
231 .IP *
232 \fBclone\fP(2) と \fBunshare\fP(2) で新しい名前空間を作成する \fBCLONE_*\fP
233 フラグを利用する。
234 .IP *
235 \fBperf_event_open\fP(2) を呼び出す。
236 .IP *
237 特権が必要な \fIperf\fP イベントの情報にアクセスする。
238 .IP *
239 \fBsetns\fP(2) を呼び出す。
240 .IP *
241 \fBfanotify_init\fP(2) を呼び出す。
242 .IP *
243 \fBkeyctl\fP(2)  の \fBKEYCTL_CHOWN\fP と \fBKEYCTL_SETPERM\fP 操作を実行する。
244 .IP *
245 \fBmadvise\fP(2)  の \fBMADV_HWPOISON\fP 操作を実行する。
246 .IP *
247 \fBTIOCSTI\fP \fBioctl\fP(2) を使って、
248 呼び出し元の制御端末以外の端末の入力キューに文字を挿入する。
249 .IP *
250 廃止予定の \fBnfsservctl\fP(2) システムコールを使用する。
251 .IP *
252 廃止予定の \fBbdflush\fP(2) システムコールを使用する。
253 .IP *
254 特権が必要なブロックデバイスに対する各種の \fBioctl\fP(2) 操作を
255 実行する。
256 .IP *
257 特権が必要なファイルシステムに対する各種の \fBioctl\fP(2) 操作を
258 実行する。
259 .IP *
260 多くのデバイスドライバに対する管理命令を実行する。
261 .RE
262 .PD
263 .TP 
264 \fBCAP_SYS_BOOT\fP
265 \fBreboot\fP(2)  と \fBkexec_load\fP(2)  を呼び出す。
266 .TP 
267 \fBCAP_SYS_CHROOT\fP
268 \fBchroot\fP(2).  を呼び出す。
269 .TP 
270 \fBCAP_SYS_MODULE\fP
271 カーネルモジュールのロード、アンロードを行う (\fBinit_module\fP(2)  と \fBdelete_module\fP(2)  を参照のこと)。
272 バージョン 2.6.25 より前のカーネルで、 システム全体のケーパビリティバウンディングセット (capability bounding set)
273 からケーパビリティを外す。
274 .TP 
275 \fBCAP_SYS_NICE\fP
276 .PD 0
277 .RS
278 .IP * 2
279 プロセスの nice 値の引き上げ (\fBnice\fP(2), \fBsetpriority\fP(2))  や、任意のプロセスの nice 値の変更を行う。
280 .IP *
281 呼び出し元プロセスに対するリアルタイムスケジューリングポリシーと、 任意のプロセスに対するスケジューリングポリシーと優先度を設定する
282 (\fBsched_setscheduler\fP(2), \fBsched_setparam\fP(2))。
283 .IP *
284 任意のプロセスに対する CPU affinity を設定できる (\fBsched_setaffinity\fP(2))。
285 .IP *
286 任意のプロセスに対して I/O スケジューリングクラスと優先度を設定できる (\fBioprio_set\fP(2))。
287 .IP *
288 .\" FIXME CAP_SYS_NICE also has the following effect for
289 .\" migrate_pages(2):
290 .\"     do_migrate_pages(mm, &old, &new,
291 .\"         capable(CAP_SYS_NICE) ? MPOL_MF_MOVE_ALL : MPOL_MF_MOVE);
292 \fBmigrate_pages\fP(2)  を任意のプロセスに適用し、プロセスを任意のノードに移動する。
293 .IP *
294 \fBmove_pages\fP(2)  を任意のプロセスに対して行う。
295 .IP *
296 \fBmbind\fP(2)  と \fBmove_pages\fP(2)  で \fBMPOL_MF_MOVE_ALL\fP フラグを使用する。
297 .RE
298 .PD
299 .TP 
300 \fBCAP_SYS_PACCT\fP
301 \fBacct\fP(2)  を呼び出す。
302 .TP 
303 \fBCAP_SYS_PTRACE\fP
304 \fBptrace\fP(2)  を使って任意のプロセスをトレースする。 任意のプロセスに \fBget_robust_list\fP(2)  を適用する。
305 .TP 
306 \fBCAP_SYS_RAWIO\fP
307 I/O ポート操作を実行する (\fBiopl\fP(2)、 \fBioperm\fP(2))。
308 \fI/proc/kcore\fP にアクセスする。
309 \fBFIBMAP\fP \fBioctl\fP(2) 操作を使用する。
310 .TP 
311 \fBCAP_SYS_RESOURCE\fP
312 .PD 0
313 .RS
314 .IP * 2
315 ext2 ファイルシステム上の予約されている領域を使用する。
316 .IP *
317 ext3 のジャーナル機能を制御する \fBioctl\fP(2)  を使用する。
318 .IP *
319 ディスク quota の上限を上書きする。
320 .IP *
321 リソース上限を増やす (\fBsetrlimit\fP(2))。
322 .IP *
323 \fBRLIMIT_NPROC\fP リソース制限を上書きする。
324 .IP *
325 コンソール割り当てにおいてコンソールの最大数を上書きする。
326 .IP *
327 キーマップの最大数を上書きする。
328 .IP *
329 リアルタイムクロックから秒間 64 回を越える回数の割り当てが許可する。
330 .IP *
331 メッセージキューに関する上限 \fImsg_qbytes\fP を
332 \fI/proc/sys/kernel/msgmnb\fP に指定されている上限よりも大きく設定する
333 (\fBmsgop\fP(2) と \fBmsgctl\fP(2) 参照)。
334 .IP *
335 \fBF_SETPIPE_SZ\fP \fBfcntl\fP(2) を使ってパイプの容量を設定する際に
336 上限 \fI/proc/sys/fs/pipe\-size\-max\fP を上書きする。
337 .IP *
338 \fI/proc/sys/fs/pipe\-max\-size\fP に指定されている上限を超えてパイプの容量
339 を増やすのに \fBF_SETPIPE_SZ\fP を使用する。
340 .IP *
341 POSIX メッセージキューを作成する際に、
342 上限 \fI/proc/sys/fs/mqueue/queues_max\fP を上書きする
343 (\fBmq_overview\fP(7) 参照)。
344 .IP *
345 \fBprctl\fP(2) の \fBPR_SET_MM\fP 操作を使用する。
346 .RE
347 .PD
348 .TP 
349 \fBCAP_SYS_TIME\fP
350 システムクロックを変更する (\fBsettimeofday\fP(2), \fBstime\fP(2), \fBadjtimex\fP(2))。 リアルタイム
351 (ハードウェア) クロックを変更する。
352 .TP 
353 \fBCAP_SYS_TTY_CONFIG\fP
354 \fBvhangup\fP(2) を使用する。
355 特権が必要な仮想端末に関する各種の \fBioctl\fP(2) 操作を利用できる。
356 .TP 
357 \fBCAP_SYSLOG\fP (Linux 2.6.37 以降)
358 特権が必要な \fBsyslog\fP(2) 操作を実行できる。
359 どの操作が特権が必要かについての情報は \fBsyslog\fP(2) を参照。
360 .TP 
361 \fBCAP_WAKE_ALARM\fP (Linux 3.0 以降)
362 .\"
363 システムを起こすトリガーを有効にする (タイマー \fBCLOCK_REALTIME_ALARM\fP
364 や \fBCLOCK_BOOTTIME_ALARM\fP を設定する)。
365 .SS 過去と現在の実装
366 完全な形のケーパビリティを実装するには、以下の要件を満たす必要がある:
367 .IP 1. 3
368 全ての特権操作について、カーネルはそのスレッドの実効ケーパビリティセットに 必要なケーパビリティがあるかを確認する。
369 .IP 2.
370 カーネルで、あるスレッドのケーパビリティセットを変更したり、 取得したりできるシステムコールが提供される。
371 .IP 3.
372 ファイルシステムが、実行可能ファイルにケーパビリティを付与でき、ファイル 実行時にそのケーパビリティをプロセスが取得できるような機能をサポートする。
373 .PP
374 .\"
375 カーネル 2.6.24 より前では、最初の 2つの要件のみが満たされている。 カーネル 2.6.24 以降では、3つの要件すべてが満たされている。
376 .SS スレッドケーパビリティセット
377 各スレッドは以下の 3種類のケーパビリティセットを持つ。各々のケーパビリティセットは 上記のケーパビリティの組み合わせである
378 (全てのケーパビリティが無効でもよい)。
379 .TP 
380 \fI許可 (permitted)\fP:
381 そのスレッドが持つことになっている実効ケーパビリティの 限定的なスーパーセットである。 これは、実効ケーパビリティセットに \fBCAP_SETPCAP\fP
382 ケーパビリティを持っていないスレッドが継承可能ケーパビリティセットに 追加可能なケーパビリティの限定的なスーパーセットでもある。
383
384 許可ケーパビリティセットから削除してしまったケーパビリティは、 (set\-user\-ID\-root プログラムか、
385 そのケーパビリティをファイルケーパビリティで許可しているプログラムを \fBexecve\fP(2)  しない限りは) もう一度獲得することはできない。
386 .TP 
387 \fI継承可能 (inheritable)\fP:
388 \fBexecve\fP(2)  を前後で保持されるケーパビリティセットである。 この仕組みを使うことで、あるプロセスが \fBexecve\fP(2)
389 を行う際に新しいプログラムの許可ケーパビリティセットとして 割り当てるケーパビリティを指定することができる。
390 .TP 
391 \fI実効 (effective)\fP:
392 カーネルがスレッドの権限 (permission) をチェックするときに 使用するケーパビリティセットである。
393 .PP
394 \fBfork\fP(2)  で作成される子プロセスは、親のケーパビリティセットのコピーを継承する。 \fBexecve\fP(2)
395 中のケーパビリティの扱いについては下記を参照のこと。
396 .PP
397 .\"
398 \fBcapset\fP(2)  を使うと、プロセスは自分自身のケーパビリティセット を操作することができる (下記参照)。
399 .SS ファイルケーパビリティ
400 カーネル 2.6.24 以降では、 \fBsetcap\fP(8)  を使って実行ファイルにケーパビリティセットを対応付けることができる。
401 ファイルケーパビリティセットは \fIsecurity.capability\fP という名前の拡張属性に保存される (\fBsetxattr\fP(2)
402 参照)。この拡張属性への書き込みには \fBCAP_SETFCAP\fP ケーパビリティが必要である。
403 ファイルケーパビリティセットとスレッドのケーパビリティセットの両方が 考慮され、 \fBexecve\fP(2)
404 後のスレッドのケーパビリティセットが決定される。
405
406 3 つのファイルケーパビリティセットが定義されている。
407 .TP 
408 \fI許可 (Permitted)\fP (以前の\fI強制 (Forced)\fP):
409 スレッドの継承可能ケーパビリティに関わらず、そのスレッドに自動的に 認められるケーパビリティ。
410 .TP 
411 \fI継承可能 (Inheritable)\fP (以前の \fI許容 (Allowed)\fP):
412 このセットと、スレッドの継承可能ケーパビリティセットとの 論理積 (AND) がとられ、 \fBexecve\fP(2)
413 の後にそのスレッドの許可ケーパビリティセットで有効となる 継承可能ケーパビリティが決定される。
414 .TP 
415 \fI実効 (effective)\fP:
416 これは集合ではなく、1 ビットの情報である。 このビットがセットされていると、 \fBexecve\fP(2)
417 実行中に、そのスレッドの新しい許可ケーパビリティが全て 実効ケーパビリティ集合においてもセットされる。 このビットがセットされていない場合、
418 \fBexecve\fP(2)  後には新しい許可ケーパビリティのどれも新しい実効ケーパビリティ集合 にセットされない。
419
420 .\"
421 ファイルの実効ケーパビリティビットを有効にするというのは、 \fBexecve\fP(2)
422 実行時に、ファイルの許可ケーパビリティと継承ケーパビリティに対応するものが スレッドの許可ケーパビリティセットとしてセットされるが、
423 これが実効ケーパビリティセットにもセットされるということである (ケーパビリティの変換ルールは下記参照)。
424 したがって、ファイルにケーパビリティを割り当てる際 (\fBsetcap\fP(8), \fBcap_set_file\fP(3),
425 \fBcap_set_fd\fP(3))、 いずれかのケーパビリティに対して実効フラグを有効と指定する場合、
426 許可フラグや継承可能フラグを有効にした他の全てのケーパビリティ についても実効フラグを有効と指定しなければならない。
427 .SS "execve() 中のケーパビリティの変換"
428 .PP
429 \fBexecve\fP(2)  実行時に、カーネルはプロセスの新しいケーパビリティを次の アルゴリズムを用いて計算する:
430 .in +4n
431 .nf
432
433 P'(permitted) = (P(inheritable) & F(inheritable)) |
434                 (F(permitted) & cap_bset)
435
436 P'(effective) = F(effective) ? P'(permitted) : 0
437
438 P'(inheritable) = P(inheritable)    [つまり、変更されない]
439
440 .fi
441 .in
442 各変数の意味は以下の通り:
443 .RS 4
444 .IP P 10
445 \fBexecve\fP(2)  前のスレッドのケーパビリティセットの値
446 .IP P'
447 \fBexecve\fP(2)  後のスレッドのケーパビリティセットの値
448 .IP F
449 ファイルケーパビリティセットの値
450 .IP cap_bset
451 ケーパビリティバウンディングセットの値 (下記参照)
452 .RE
453 .\"
454 .SS ケーパビリティと、ルートによるプログラムの実行
455 \fBexecve\fP(2)  時に、ケーパビリティセットを使って、全ての権限を持った \fIroot\fP を実現するには、以下のようにする。
456 .IP 1. 3
457 set\-user\-ID\-root プログラムが実行される場合、 またはプロセスの実ユーザ ID が 0 (root) の場合、
458 ファイルの継承可能セットと許可セットを全て 1 (全てのケーパビリティが有効) に定義する。
459 .IP 2.
460 set\-user\-ID\-root プログラムが実行される場合、 ファイルの実効ケーパビリティビットを 1 (enabled) に定義する。
461 .PP
462 .\" If a process with real UID 0, and nonzero effective UID does an
463 .\" exec(), then it gets all capabilities in its
464 .\" permitted set, and no effective capabilities
465 上記のルールにケーパビリティ変換を適用した結果をまとめると、 プロセスが set\-user\-ID\-root プログラムを \fBexecve\fP(2)
466 する場合、または実効 UID が 0 のプロセスがプログラムを \fBexecve\fP(2)  する場合、許可と実効のケーパビリティセットの全ケーパビリティ
467 (正確には、ケーパビリティバウンディングセットによるマスクで除外されるもの 以外の全てのケーパビリティ) を取得するということである。
468 これにより、伝統的な UNIX システムと同じ振る舞いができるようになっている。
469 .SS ケーパビリティ・バウンディングセット
470 ケーパビリティ・バウンディングセット (capability bounding set) は、 \fBexecve\fP(2)
471 時に獲得できるケーパビリティを制限するために使われる セキュリティ機構である。 バウンディングセットは以下のように使用される。
472 .IP * 2
473 \fBexecve\fP(2)  実行時に、ケーパビリティ・バウンディングセットと ファイルの許可ケーパビリティセットの論理和 (AND) を取ったものが、
474 そのスレッドの許可ケーパビリティセットに割り当てられる。 つまり、ケーパビリティ・バウンディングセットは、
475 実行ファイルが認めている許可ケーパビリティに対して 制限を課す働きをする。
476 .IP *
477 (Linux 2.6.25 以降)  ケーパビリティ・バウンディングセットは、スレッドが \fBcapset\fP(2)
478 により自身の継承可能セットに追加可能なケーパビリティの母集団を 制限する役割を持つ。
479 スレッドに許可されたケーパビリティであっても、バウンディングセットに 含まれていなければ、スレッドはそのケーパビリティは自身の継承可能セットに
480 追加できず、その結果、継承可能セットにそのケーパビリティを含むファイルを \fBexecve\fP(2)
481 する場合、そのケーパビリティを許可セットに持ち続けることができない、 ということである。
482 .PP
483 バウンディングセットがマスクを行うのは、継承可能ケーパビリティではなく、 ファイルの許可ケーパビリティのマスクを行う点に注意すること。
484 あるスレッドの継承可能セットにそのスレッドのバウンディングセットに 存在しないケーパビリティが含まれている場合、そのスレッドは、
485 継承可能セットに含まれるケーパビリティを持つファイルを実行することにより、 許可セットに含まれるケーパビリティも獲得できるということである。
486 .PP
487 カーネルのバージョンにより、ケーパビリティ・バウンディングセットは システム共通の属性の場合と、プロセス単位の属性の場合がある。
488 .PP
489 \fBLinux 2.6.25 より前のケーパビリティ・バウンディングセット\fP
490 .PP
491 2.6.25 より前のカーネルでは、ケーパビリティ・バウンディングセットは システム共通の属性で、システム上の全てのスレッドに適用される。
492 バウンディングセットは \fI/proc/sys/kernel/cap\-bound\fP ファイル経由で参照できる。
493 (間違えやすいが、このビットマスク形式のパラメータは、 \fI/proc/sys/kernel/cap\-bound\fP では符号付きの十進数で表現される。)
494
495 \fBinit\fP プロセスだけがケーパビリティ・バウンディングセットで ケーパビリティをセットすることができる。 それ以外では、スーパーユーザ
496 (より正確には、 \fBCAP_SYS_MODULE\fP ケーパビリティを持ったプログラム) が、
497 ケーパビリティ・バウンディングセットのケーパビリティのクリアが できるだけである。
498
499 通常のシステムでは、ケーパビリティ・バウンディングセットは、 \fBCAP_SETPCAP\fP が無効になっている。 この制限を取り去るには
500 (取り去るのは危険!)、 \fIinclude/linux/capability.h\fP 内の \fBCAP_INIT_EFF_SET\fP
501 の定義を修正し、カーネルを再構築する必要がある。
502
503 .\"
504 システム共通のケーパビリティ・バウンディングセット機能は、 カーネル 2.2.11 以降で Linux に追加された。
505 .PP
506 \fBLinux 2.6.25 以降のケーパビリティ・バウンディングセット\fP
507 .PP
508 Linux 2.6.25 以降では、 「ケーパビリティ・バウンディングセット」はスレッド単位の属性である
509 (システム共通のケーパビリティ・バウンディングセットはもはや存在しない)。
510
511 バウンディングセットは \fBfork\fP(2)  時にはスレッドの親プロセスから継承され、 \fBexecve\fP(2)  の前後では保持される。
512
513 スレッドが \fBCAP_SETPCAP\fP ケーパビリティを持っている場合、そのスレッドは \fBprctl\fP(2)  の
514 \fBPR_CAPBSET_DROP\fP 操作を使って自身のケーパビリティ・バウンディングセットから ケーパビリティを削除することができる。
515 いったんケーパビリティをバウンディングセットから削除してしまうと、 スレッドはそのケーパビリティを再度セットすることはできない。 \fBprctl\fP(2)
516 の \fBPR_CAPBSET_READ\fP 操作を使うことで、スレッドがあるケーパビリティが自身のバウンディングセット
517 に含まれているかを知ることができる。
518
519 バウンディングセットからのケーパビリティの削除がサポートされるのは、
520 カーネルのコンパイル時にファイルケーパビリティが有効になっている場合
521 だけである。Linux 2.6.33 より前のカーネルでは、ファイルケーパビリティは
522 設定オプション CONFIG_SECURITY_FILE_CAPABILITIES で切り替えられる追加の
523 機能であった。Linux 2.6.33 以降では、この設定オプションは削除され、
524 ファイルケーパビリティは常にカーネルに組込まれるようになった。
525 ファイルケーパビリティがカーネルにコンパイル時に組み込まれている場合、
526 (全てのプロセスの先祖である) \fIinit\fP プロセスはバウンディングセットで
527 全てのケーパビリティが セットされた状態で開始する。ファイルケーパビリティ
528 が有効になっていない場合には、 \fIinit\fP はバウンディングセットで
529 \fBCAP_SETPCAP\fP 以外の全てのケーパビリティがセットされた状態で開始する。
530 このようになっているのは、 \fBCAP_SETPCAP\fP ケーパビリティがファイルケー
531 パビリティがサポートされていない場合には 違った意味を持つからである。
532
533 .\"
534 .\"
535 バウンディングセットからケーパビリティを削除しても、 スレッドの継承可能セットからはそのケーパビリティは削除されない。
536 しかしながら、バウンディングセットからの削除により、 この先そのケーパビリティをスレッドの継承可能セットに追加すること はできなくなる。
537 .SS "ユーザ ID 変更のケーパビリティへの影響"
538 ユーザ ID が 0 と 0 以外の間で変化する際の振る舞いを従来と同じにするため、 スレッドの実 UID、実効 UID、保存
539 set\-user\-ID、ファイルシステム UID が (\fBsetuid\fP(2), \fBsetresuid\fP(2)  などを使って)
540 変更された際に、カーネルはそのスレッドのケーパビリティセットに 以下の変更を行う:
541 .IP 1. 3
542 UID の変更前には実 UID、実効 UID、保存 set\-user\-ID のうち 少なくとも一つが 0 で、変更後に実 UID、実効 UID、保存
543 set\-user\-ID が すべて 0 以外の値になった場合、許可と実効のケーパビリティセットの 全ケーパビリティをクリアする。
544 .IP 2.
545 実効 UID が 0 から 0 以外に変更された場合、 実効ケーパビリティセットの全ケーパビリティをクリアする。
546 .IP 3.
547 実効 UID が 0 以外から 0 に変更された場合、 許可ケーパビリティセットの内容を実効ケーパビリティセットにコピーする。
548 .IP 4.
549 ファイルシステム UID が 0 から 0 以外に変更された場合 (\fBsetfsuid\fP(2)
550 参照)、実効ケーパビリティセットの以下のケーパビリティがクリアされる: \fBCAP_CHOWN\fP, \fBCAP_DAC_OVERRIDE\fP,
551 \fBCAP_DAC_READ_SEARCH\fP, \fBCAP_FOWNER\fP, \fBCAP_FSETID\fP, \fBCAP_LINUX_IMMUTABLE\fP
552 (Linux 2.2.30 以降), \fBCAP_MAC_OVERRIDE\fP, \fBCAP_MKNOD\fP (Linux 2.2.30 以降)。
553 ファイルシステム UID が 0 以外から 0 に変更された場合、 上記のケーパビリティのうち許可ケーパビリティセットで有効になっているものが
554 実効ケーパビリティセットで有効にされる。
555 .PP
556 .\"
557 各種 UID のうち少なくとも一つが 0 であるスレッドが、 その UID の全てが 0 以外になったときに許可ケーパビリティセットが
558 クリアされないようにしたい場合には、 \fBprctl\fP(2)  の \fBPR_SET_KEEPCAPS\fP 操作を使えばよい。
559 .SS プログラムでケーパビリティセットを調整する
560 各スレッドは、 \fBcapget\fP(2)  や \fBcapset\fP(2)  を使って、自身のケーパビリティセットを取得したり変更したりできる。
561 ただし、これを行うには、 \fIlibcap\fP パッケージで提供されている \fBcap_get_proc\fP(3)  や
562 \fBcap_set_proc\fP(3)  を使うのが望ましい。 スレッドのケーパビリティセットの変更には以下のルールが適用される。
563 .IP 1. 3
564 呼び出し側が \fBCAP_SETPCAP\fP ケーパビリティを持っていない場合、新しい継承可能セットは、 既存の継承可能セットと許可セットの積集合
565 (AND) の部分集合で なければならない。
566 .IP 2.
567 (カーネル 2.6.25 以降)  新しい継承可能セットは、既存の継承可能セットとケーパビリティ・ バウンディングセットの積集合 (AND)
568 の部分集合でなければならない。
569 .IP 3.
570 新しい許可セットは、既存の許可セットの部分集合でなければならない (つまり、そのスレッドが現在持っていない許可ケーパビリティを
571 獲得することはできない)。
572 .IP 4.
573 新しい実効ケーパビリティセットは新しい許可ケーパビリティセットの 部分集合になっていなければならない。
574 .SS "securebits フラグ: ケーパビリティだけの環境を構築する"
575 .\" For some background:
576 .\"       see http://lwn.net/Articles/280279/ and
577 .\"       http://article.gmane.org/gmane.linux.kernel.lsm/5476/
578 カーネル 2.6.26 以降で、 ファイルケーパビリティが有効になったカーネルでは、 スレッド単位の \fIsecurebits\fP
579 フラグが実装されており、このフラグを使うと UID 0 (\fIroot\fP)  に対するケーパビリティの特別扱いを無効することができる。
580 以下のようなフラグがある。
581 .TP 
582 \fBSECBIT_KEEP_CAPS\fP
583 このフラグをセットされている場合、UID が 0 のスレッドの UID が 0 以外の値に
584 切り替わる際に、そのスレッドはケーパビリティを維持することができる。 このフラグがセットされていない場合には、UID が 0 から 0 以外の値に
585 切り替わると、そのスレッドは全てのケーパビリティを失う。 このフラグは \fBexecve\fP(2)  時には全てクリアされる (このフラグは、以前の
586 \fBprctl\fP(2)  の \fBPR_SET_KEEPCAPS\fP 操作と同じ機能を提供するものである)。
587 .TP 
588 \fBSECBIT_NO_SETUID_FIXUP\fP
589 このフラグをセットすると、スレッドの実効 UID とファイルシステム UID が 0 と 0 以外の間で切り替わった場合に、
590 カーネルはケーパビリティセットの調整を行わなくなる (「ユーザ ID 変更のケーパビリティへの影響」の節を参照)。
591 .TP 
592 \fBSECBIT_NOROOT\fP
593 このビットがセットされている場合、 set\-user\-ID\-root プログラムの実行時や、 実効 UID か 実 UID が 0 のプロセスが
594 \fBexecve\fP(2)  を呼び出した時に、カーネルはケーパビリティを許可しない (「ケーパビリティと、ルートによるプログラムの実行」の節を参照)。
595 .PP
596 上記の "base" フラグの各々には対応する "locked" フラグが存在する。 いずれの "locked"
597 フラグも一度セットされると戻すことはできず、 それ以降は対応する "base" フラグを変更することができなくなる。 "locked" フラグは
598 \fBSECBIT_KEEP_CAPS_LOCKED\fP, \fBSECBIT_NO_SETUID_FIXUP_LOCKED\fP,
599 \fBSECBIT_NOROOT_LOCKED\fP という名前である。
600 .PP
601 \fIsecurebits\fP フラグは、 \fBprctl\fP(2)  の操作 \fBPR_SET_SECUREBITS\fP や
602 \fBPR_GET_SECUREBITS\fP を使うことで変更したり取得したりできる。 フラグを変更するには \fBCAP_SETPCAP\fP
603 ケーパビリティが必要である。
604
605 \fIsecurebits\fP フラグは子プロセスに継承される。 \fBexecve\fP(2) においては、
606 \fBSECBIT_KEEP_CAPS\fP が常にクリアされる以外は、全てのフラグが保持される。
607
608 アプリケーションは、以下の呼び出しを行うことにより、 自分自身および子孫となるプロセス全てに対して、
609 必要なファイルケーパビリティを持ったプログラムを実行しない限り、 対応するケーパビリティを獲得できないような状況に閉じこめることができる。
610 .in +4n
611 .nf
612
613 prctl(PR_SET_SECUREBITS,
614         SECBIT_KEEP_CAPS_LOCKED |
615         SECBIT_NO_SETUID_FIXUP |
616         SECBIT_NO_SETUID_FIXUP_LOCKED |
617         SECBIT_NOROOT |
618         SECBIT_NOROOT_LOCKED);
619 .fi
620 .in
621 .SH 準拠
622 .PP
623 ケーパビリティに関する標準はないが、 Linux のケーパビリティは廃案になった POSIX.1e 草案に基づいて実装されている。
624 \fIhttp://wt.xpilot.org/publications/posix.1e/\fP を参照。
625 .SH 注意
626 カーネル 2.5.27 以降、ケーパビリティは選択式のカーネルコンポーネント となっており、カーネル設定オプション
627 CONFIG_SECURITY_CAPABILITIES により有効/無効を切り替えることができる。
628
629 \fI/proc/PID/task/TID/status\fP ファイルを使うと、スレッドのケーパビリティセットを見ることができる。
630 \fI/proc/PID/status\fP ファイルには、プロセスのメインスレッドのケーパビリティセットが表示される。
631
632 \fIlibcap\fP パッケージは、ケーパビリティを設定・取得するための ルーチン群を提供している。これらのインタフェースは、 \fBcapset\fP(2)
633 と \fBcapget\fP(2)  が提供するインターフェースと比べて、より使いやすく、変更される可能性が少ない。 このパッケージでは、
634 \fBsetcap\fP(8), \fBgetcap\fP(8)  というプログラムも提供されている。 パッケージは以下で入手できる。
635 .br
636 \fIhttp://www.kernel.org/pub/linux/libs/security/linux\-privs\fP
637
638 バージョン 2.6.24 より前、およびファイルケーパビリティが 有効になっていない2.6.24 以降のカーネルでは、 \fBCAP_SETPCAP\fP
639 ケーパビリティを持ったスレッドは自分以外のスレッドの ケーパビリティを操作できる。 しかしながら、これは理論的に可能というだけである。
640 以下のいずれかの場合においても、どのスレッドも \fBCAP_SETPCAP\fP ケーパビリティを持つことはないからである。
641 .IP * 2
642 2.6.25 より前の実装では、システム共通のケーパビリティ・バウンディングセット \fI/proc/sys/kernel/cap\-bound\fP
643 ではこのケーパビリティは常に無効になっており、 ソースを変更してカーネルを再コンパイルしない限り、 これを変更することはできない。
644 .IP *
645 現在の実装ではファイルケーパビリティが無効になっている場合、 プロセス毎のバウンディングセットからこのケーパビリティを抜いて \fBinit\fP
646 は開始され、 システム上で生成される他の全てのプロセスでこのバウンディングセットが 継承される。
647 .SH 関連項目
648 \fBcapget\fP(2), \fBprctl\fP(2), \fBsetfsuid\fP(2), \fBcap_clear\fP(3),
649 \fBcap_copy_ext\fP(3), \fBcap_from_text\fP(3), \fBcap_get_file\fP(3),
650 \fBcap_get_proc\fP(3), \fBcap_init\fP(3), \fBcapgetp\fP(3), \fBcapsetp\fP(3),
651 \fBlibcap\fP(3), \fBcredentials\fP(7), \fBpthreads\fP(7), \fBgetcap\fP(8), \fBsetcap\fP(8)
652 .PP
653 カーネルソース内の \fIinclude/linux/capability.h\fP に
654 各種のケーパビリティの目的についてのコメント
655 .SH この文書について
656 この man ページは Linux \fIman\-pages\fP プロジェクトのリリース 3.41 の一部
657 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は
658 http://www.kernel.org/doc/man\-pages/ に書かれている。