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2 .\" Copyright (c) 1993 by Thomas Koenig (ig25@rz.uni-karlsruhe.de)
3 .\" and Copyright (c) 2002, 2006 by Michael Kerrisk <mtk.manpages@gmail.com>
4 .\" and Copyright (c) 2008 Linux Foundation, written by Michael Kerrisk
5 .\"     <mtk.manpages@gmail.com>
6 .\"
7 .\" Permission is granted to make and distribute verbatim copies of this
8 .\" manual provided the copyright notice and this permission notice are
9 .\" preserved on all copies.
10 .\"
11 .\" Permission is granted to copy and distribute modified versions of this
12 .\" manual under the conditions for verbatim copying, provided that the
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26 .\"
27 .\" Modified Sat Jul 24 17:34:08 1993 by Rik Faith (faith@cs.unc.edu)
28 .\" Modified Sun Jan  7 01:41:27 1996 by Andries Brouwer (aeb@cwi.nl)
29 .\" Modified Sun Apr 14 12:02:29 1996 by Andries Brouwer (aeb@cwi.nl)
30 .\" Modified Sat Nov 13 16:28:23 1999 by Andries Brouwer (aeb@cwi.nl)
31 .\" Modified 10 Apr 2002, by Michael Kerrisk <mtk.manpages@gmail.com>
32 .\" Modified  7 Jun 2002, by Michael Kerrisk <mtk.manpages@gmail.com>
33 .\"     Added information on real-time signals
34 .\" Modified 13 Jun 2002, by Michael Kerrisk <mtk.manpages@gmail.com>
35 .\"     Noted that SIGSTKFLT is in fact unused
36 .\" 2004-12-03, Modified mtk, added notes on RLIMIT_SIGPENDING
37 .\" 2006-04-24, mtk, Added text on changing signal dispositions,
38 .\"             signal mask, and pending signals.
39 .\" 2008-07-04, mtk:
40 .\"     Added section on system call restarting (SA_RESTART)
41 .\"     Added section on stop/cont signals interrupting syscalls.
42 .\" 2008-10-05, mtk: various additions
43 .\"
44 .\"*******************************************************************
45 .\"
46 .\" This file was generated with po4a. Translate the source file.
47 .\"
48 .\"*******************************************************************
49 .TH SIGNAL 7 2011\-09\-18 Linux "Linux Programmer's Manual"
50 .SH 名前
51 signal \- シグナルの概要
52 .SH 説明
53 Linux は POSIX 信頼シグナル (reliable signal; 以後 "標準シグナル"と表記)  と POSIX
54 リアルタイムシグナルの両方に対応している。
55 .SS シグナル処理方法
56 シグナルはそれぞれ現在の「処理方法 (disposition)」を保持しており、 この処理方法によりシグナルが配送された際にプロセスが
57 どのような振舞いをするかが決まる。
58
59 後述の表の "動作" の欄のエントリは各シグナルのデフォルトの 処理方法を示しており、以下のような意味を持つ。
60 .IP Term
61 デフォルトの動作はプロセス終了。
62 .IP Ign
63 デフォルトの動作はこのシグナルの無視。
64 .IP Core
65 デフォルトの動作はプロセス終了とコアダンプ出力 (\fBcore\fP(5)  参照)。
66 .IP Stop
67 デフォルトの動作はプロセスの一時停止。
68 .IP Cont
69 デフォルトの動作は、プロセスが停止中の場合にその実行の再開。
70 .PP
71 プロセスは、 \fBsigaction\fP(2)  や \fBsignal\fP(2)  を使って、シグナルの処理方法を変更することができる
72 (\fBsignal\fP(2)  の方がシグナルハンドラを設定する際の移植性が低い; 詳細は \fBsignal\fP(2)  を参照)。
73 シグナルの配送時に起こる動作として プロセスが選択できるのは、次のいずれか一つである。 デフォルトの動作を実行する、シグナルを無視する、
74 \fIシグナルハンドラ (signal handler)\fP でシグナルを捕捉する。シグナルハンドラとは、シグナル配送時に
75 自動的に起動されるプログラマ定義の関数である。 (デフォルトでは、シグナルハンドラは通常のプロセスのスタック上で起動される。
76 シグナルハンドラが代替スタック (alternate stack) を使用するように設定する
77 こともできる。代替スタックを使用するように設定する方法と、どのような際に 代替スタックが役に立つかについての議論については
78 \fBsigaltstack\fP(2)  を参照のこと。
79
80 シグナルの処理方法はプロセス単位の属性である。 マルチスレッドのアプリケーションでは、あるシグナルの処理方法は 全てのスレッドで同じである。
81
82 \fBfork\fP(2) 経由で作成された子プロセスは、親プロセスのシグナルの処理方法の コピーを継承する。
83 \fBexecve\fP(2) の前後で、ハンドラが設定されているシグナルの処理方法はデフォルトにリセットされ、
84 無視が設定されているシグナルの処理方法は変更されずそのままとなる。
85 .SS シグナルの送信
86 以下のシステムコールとライブラリ関数を使って、 呼び出し者はシグナルを送信することができる。
87 .TP  16
88 \fBraise\fP(3)
89 呼び出したスレッドにシグナルを送る。
90 .TP 
91 \fBkill\fP(2)
92 指定されたプロセスや、指定されたプロセスグループの全メンバー、 システムの全プロセスにシグナルを送る。
93 .TP 
94 \fBkillpg\fP(2)
95 指定されたプロセスグループの全メンバーにシグナルを送る。
96 .TP 
97 \fBpthread_kill\fP(3)
98 呼び出し者と同じプロセス内の指定された POSIX スレッドにシグナルを送る。
99 .TP 
100 \fBtgkill\fP(2)
101 指定されたプロセス内の指定されたスレッドにシグナルを送る (このシステムコールを使って \fBpthread_kill\fP(3)  は実装されている)。
102 .TP 
103 \fBsigqueue\fP(3)
104 指定されたプロセスに付属データとともにリアルタイムシグナルを送る。
105 .SS シグナルが捕捉されるのを待つ
106 以下のシステムコールを使って、シグナルが捕捉されるまで 呼び出したプロセスやスレッドの実行を中断 (suspend) することができる
107 (ハンドラが設定されていないシグナルによりそのプロセスが終了した 場合にも実行の停止は終了する)。
108 .TP  16
109 \fBpause\fP(2)
110 何かシグナルが捕捉されるまで実行を停止する。
111 .TP 
112 \fBsigsuspend\fP(2)
113 一時的にシグナルマスク (下記参照) を変更し、 マスクされていないシグナルのいずれかが捕捉されるまで 実行を中断する。
114 .SS シグナルの同期受信
115 シグナルハンドラ経由でシグナルを非同期 (asynchronously) で捕捉する以外にも、 シグナルを同期 (synchronously)
116 して受け付けることもできる。 同期して受け付けるとは、シグナルが配送されるまで実行を停止 (block)
117 するということである。シグナルを受け付けた際に、カーネルは そのシグナルに関する情報を呼び出し者に返す。 これを行う一般的な方法が二つある。
118 .IP * 2
119 \fBsigwaitinfo\fP(2), \fBsigtimedwait\fP(2), \fBsigwait\fP(3)
120 は、指定されたシグナル集合のシグナルの一つが配送されるまで実行を中断する。 どのシステムコールや関数でも、配送されたシグナルに関する情報が返される。
121 .IP *
122 \fBsignalfd\fP(2)  が返すファイルディスクリプタを使うと、呼び出し元に配送された シグナルに関する情報を読み出すことができる。
123 このファイルディスクリプタからの \fBread\fP(2)  は、 \fBsignalfd\fP(2)
124 の呼び出し時に指定されたシグナル集合のシグナルの一つが呼び出し元に 配送されるまで停止 (block) する。 \fBread\fP(2)
125 が返すバッファにはシグナルに関する情報を格納した構造体が入っている。
126 .SS シグナルマスクと処理待ちシグナル
127 シグナルは \fIブロック (block)\fP されることがある。ブロックされると、そのシグナルは その後ブロックを解除されるまで配送されなくなる。
128 シグナルが生成されてから配送されるまでの間、そのシグナルは \fI処理待ち (pending)\fP であると呼ばれる。
129
130 プロセス内の各スレッドは、それぞれ独立な \fIシグナルマスク (signal mask)\fP を持つ。シグナルマスクはそのスレッドが現在ブロックしている
131 シグナル集合を示すものである。 スレッドは、 \fBpthread_sigmask\fP(3)  を使って自分のシグナルマスクを操作できる。
132 伝統的なシングルスレッドのアプリケーションでは、 \fBsigprocmask\fP(2)  を使って、シグナルマスクを操作できる。
133
134 \fBfork\fP(2)  経由で作成された子プロセスは親プロセスのシグナルマスクのコピーを継承する。 \fBexecve\fP(2)
135 の前後でシグナルマスクは保持される。
136
137 生成されるシグナル (したがって処理待ちとなるシグナル) には、 プロセス全体宛てと特定のスレッド宛てがある。 例えば、プロセス全体宛てのシグナルは
138 \fBkill\fP(2)  を使って送信される。 特定のマシン語の命令の実行の結果として生成される、 \fBSIGSEGV\fP や \fBSIGFPE\fP
139 などのシグナルは、スレッド宛てとなる。 また、 \fBpthread_kill\fP(3)  を使って特定のスレッド宛てに生成されたシグナルも
140 スレッド宛てとなる。 プロセス宛てのシグナルは、そのシグナルをブロックしていないスレッドのうち
141 いずれかの一つに配送することができる。そのシグナルをブロックしていない スレッドが複数ある場合、シグナルを配送するスレッドはカーネルが
142 無作為に選択する。
143
144 スレッドは、 \fBsigpending\fP(2)  を使って、現在処理待ちのシグナル集合を取得することができる。
145 この集合は、プロセス宛ての処理待ちシグナルと 呼び出したスレッド宛てのシグナルの両方から構成される。
146
147 \fBfork\fP(2)  経由で作成された子プロセスでは、処理待ちのシグナル集合は空の集合で初期化される。 \fBexecve\fP(2)
148 の前後で、処理待ちのシグナル集合は保持される。
149 .SS 標準シグナル
150 .\" parisc is a law unto itself
151 Linux は以下に示す標準シグナルに対応している。 シグナル番号の一部はアーキテクチャ依存であり、"値" 欄に示す通りである。
152 (3つの値が書かれているものは、 1つ目が alpha と sparc で通常有効な値、 真ん中が ix86, ia64, ppc, s390,
153 arm, sh での値、最後が mips での値である。 \- はそのアーキテクチャにおいて対応するシグナルがないことを示す。)
154
155 最初に、POSIX.1\-1990 に定義されているシグナルを示す。
156 .TS
157 l c c l
158 ____
159 lB c c l.
160 シグナル    値     動作  コメント
161 SIGHUP  \01     Term    制御端末(controlling terminal)のハングアップ検出、
162                         または制御しているプロセスの死
163 SIGINT  \02     Term    キーボードからの割り込み (Interrupt)
164 SIGQUIT \03     Core    キーボードによる中止 (Quit)
165 SIGILL  \04     Core    不正な命令
166 SIGABRT \06     Core    \fBabort\fP(3) からの中断 (Abort) シグナル
167 SIGFPE  \08     Core    浮動小数点例外
168 SIGKILL \09     Term    Kill シグナル
169 SIGSEGV 11      Core    不正なメモリ参照
170 SIGPIPE 13      Term    パイプ破壊:
171                         読み手の無いパイプへの書き出し
172 SIGALRM 14      Term    \fBalarm\fP(2) からのタイマーシグナル
173 SIGTERM 15      Term    終了 (termination) シグナル
174 SIGUSR1 30,10,16        Term    ユーザ定義シグナル 1
175 SIGUSR2 31,12,17        Term    ユーザ定義シグナル 2
176 SIGCHLD 20,17,18        Ign     子プロセスの一時停止 (stop) または終了
177 SIGCONT 19,18,25        Cont    一時停止 (stop) からの再開
178 SIGSTOP 17,19,23        Stop    プロセスの一時停止 (stop)
179 SIGTSTP 18,20,24        Stop    端末 (tty) より入力された一時停止 (stop)
180 SIGTTIN 21,21,26        Stop    バックグランドプロセスの tty 入力
181 SIGTTOU 22,22,27        Stop    バックグランドプロセスの tty 出力
182 .TE
183
184 シグナル \fBSIGKILL\fP と \fBSIGSTOP\fP はキャッチ、ブロック、無視できない。
185
186 次に、 POSIX.1\-1990 標準にはないが、 SUSv2 と POSIX.1\-2001 に記述されているシグナルを示す。
187 .TS
188 l c c l
189 ____
190 lB c c l.
191 シグナル    値     動作  コメント
192 SIGBUS  10,7,10 Core    バスエラー (不正なメモリアクセス)
193 SIGPOLL         Term    ポーリング可能なイベント (Sys V)。
194                         \fBSIGIO\fP と同義
195 SIGPROF 27,27,29        Term    profiling タイマの時間切れ
196 SIGSYS  12,31,12        Core    ルーチンへの引き数が不正 (SVr4)
197 SIGTRAP 5       Core    トレース/ブレークポイント トラップ
198 SIGURG  16,23,21        Ign     ソケットの緊急事態 (urgent condition) (4.2BSD)
199 SIGVTALRM       26,26,28        Term    仮想アラームクロック (4.2BSD)
200 SIGXCPU 24,24,30        Core    CPU時間制限超過 (4.2BSD)
201 SIGXFSZ 25,25,31        Core    ファイルサイズ制限の超過 (4.2BSD)
202 .TE
203
204 Linux 2.2 以前では、 \fBSIGSYS\fP, \fBSIGXCPU\fP, \fBSIGXFSZ\fP および SPARC と MIPS
205 以外のアーキテクチャでの \fBSIGBUS\fP のデフォルトの振る舞いは (コアダンプ出力なしの) プロセス終了であった。 (他の UNIX システムにも
206 \fBSIGXCPU\fP と \fBSIGXFSZ\fP のデフォルトの動作がコアダンプなしのプロセス終了のものがある。)  Linux 2.4
207 では、POSIX.1\-2001 での要求仕様に準拠して、 これらのシグナルで、プロセスを終了させ、コアダンプを出力する ようになっている。
208
209 次にその他の各種シグナルを示す。
210 .TS
211 l c c l
212 ____
213 lB c c l.
214 シグナル    値     動作  コメント
215 SIGIOT  6       Core    IOT トラップ。\fBSIGABRT\fP と同義
216 SIGEMT  7,\-,7  Term
217 SIGSTKFLT       \-,16,\-        A       数値演算プロセッサにおけるスタックフォルト (未使用)
218 SIGIO   23,29,22        Term    入出力が可能になった (4.2BSD)
219 SIGCLD  \-,\-,18        Ign     \fBSIGCHLD\fP と同義
220 SIGPWR  29,30,19        Term    電源喪失 (Power failure) (System V)
221 SIGINFO 29,\-,\-                \fBSIGPWR\fP と同義
222 SIGLOST \-,\-,\-        Term    ファイルロックが失われた
223 SIGWINCH        28,28,20        Ign     ウィンドウ リサイズ シグナル (4.3BSD, Sun)
224 SIGUNUSED       \-,31,\-        Core    \fBSIGSYS\fP と同義
225 .TE
226
227 (シグナル 29 は alpha では \fBSIGINFO\fP / \fBSIGPWR\fP だが、sparc では \fBSIGLOST\fP である。)
228
229 \fBSIGEMT\fP は POSIX.1\-2001 に規定されていないが、 その他の多くの UNIX システムに存在する。
230 デフォルトの動作は多くの場合、コアダンプ出力を伴うプロセスの終了である。
231
232 \fBSIGPWR\fP は (POSIX.1\-2001 に規定されていないが) このシグナルが存在する 他の UNIX
233 システムでは多くの場合、デフォルト動作は無視である。
234
235 \fBSIGIO\fP は (POSIX.1\-2001 に規定されていないが) いくつかの他の UNIX システムでは デフォルト動作は無視である。
236
237 .\" parisc is the only exception: SIGSYS is 12, SIGUNUSED is 31
238 \fBSIGUNUSED\fP が定義されている場合には、ほとんどのアーキテクチャで \fBSIGSYS\fP の同義語となっている。
239 .SS リアルタイムシグナル
240 Linux はリアルタイムシグナルをサポートしている。 リアルタイムシグナルは元々 POSIX.1b のリアルタイム拡張で定義されて
241 いるものであり、現在では POSIX.1\-2001 に含まれている。 対応しているリアルタイムシグナルの範囲は、マクロ \fBSIGRTMIN\fP と
242 \fBSIGRTMAX\fP で定義される。 POSIX.1\-2001 では、少なくとも \fB_POSIX_RTSIG_MAX\fP (8)
243 個のリアルタイムシグナルに対応した実装が要求されている。
244 .PP
245 Linux は、32 個の異なるリアルタイムシグナルに対応しており、 その番号は 33 から 64 である。 しかしながら、glibc の POSIX
246 スレッド実装は、 内部で 2個 (NPTL の場合) か 3個 (LinuxThreads の場合) の リアルタイムシグナルを使用しており
247 (\fBpthreads\fP(7)  参照)、 \fBSIGRTMIN\fP の値を適切に (34 か 35 に) 調整する。
248 利用可能なリアルタイムシグナルの範囲は glibc のスレッド実装により 異なるし (使用するカーネルと glibc により実行時にも変化する)、
249 UNIX システムの種類によっても異なる。したがって、 プログラムでは「ハードコーディングした数字を使ってのリアルタイムシグナルの
250 参照は決してすべきではなく」、代わりに \fBSIGRTMIN\fP+n の形で参照すべきである。また、 \fBSIGRTMIN\fP+n が
251 \fBSIGRTMAX\fP を超えていないかのチェックを (実行時に) 適切に行うべきである。
252 .PP
253 標準シグナルと異なり、リアルタイムシグナルには 事前に定義された意味はない。 リアルタイムシグナルの全部をアプリケーションで定義した用途に使える。
254 .PP
255 ハンドリングしないリアルタイムシグナルのデフォルトの動作は 受信したプロセスの終了である。
256 .PP
257 リアルタイムシグナルは以下の特徴がある:
258 .IP 1. 4
259 リアルタイムシグナルは複数の実体をキューに入れることができる。 一方、標準シグナルの場合、そのシグナルがブロックされている間に
260 同じシグナルの複数のインスタンスが配送されても、 1 つだけがキューに入れられる。
261 .IP 2. 4
262 シグナルが \fBsigqueue\fP(3)  を用いて送信された場合、 付属データ (整数かポインタ) をシグナルと共に送信できる。 受信側プロセスが
263 \fBsigaction\fP(2)  に \fBSA_SIGINFO\fP フラグを指定してシグナルハンドラを設定した場合、 このデータは
264 \fIsiginfo_t\fP 構造体の \fIsi_value\fP フィールド経由でハンドラの第 2 引き数として渡され、 利用することができる。
265 さらに、この構造体の \fIsi_pid\fP と \fIsi_uid\fP フィールドでシグナルを送信したプロセスの PID と実ユーザ ID を
266 得ることができる。
267 .IP 3. 4
268 リアルタイムシグナルでは配送される順序が保証される。 同じタイプのリアルタイムシグナルは送信された順番に到着する。
269 異なるリアルタイムシグナルが一つのプロセスに送信された場合、 番号の小さいシグナルから先に到着する。
270 (つまり小さい番号のシグナルが高い優先順位を持つ。)  対照的に、一つのプロセスに対して複数の標準シグナルが処理待ちとなった場合、
271 これらのシグナルが配送される順序は不定である。
272 .PP
273 一つのプロセスに対して標準シグナルとリアルタイムシグナルの両方が 処理待ちの場合、POSIX はどちらが先に配送されるかを規定していない。 Linux
274 では、他の多くの実装と同様、このような場合には 標準シグナルが優先される。
275 .PP
276 POSIX によれば、1 プロセス毎に最低 \fB_POSIX_SIGQUEUE_MAX\fP (32)
277 個のリアルタイムシグナルをキューに入れられるべきとしている。 しかし、 Linux では違った実装になっている。カーネル 2.6.7 までは
278 (2.6.7 を含む)、全プロセスでキューに入っているリアルタイムシグナル の数の合計についてシステム全体での制限がある。 この制限は
279 \fI/proc/sys/kernel/rtsig\-max\fP ファイルで見ることができ、 (権限があれば) 変更もできる。 関係するファイルとして、
280 \fI/proc/sys/kernel/rtsig\-nr\fP を見ることで、いくつのリアルタイムシグナルが現在キューに入っているかを 知ることができる。
281 Linux 2.6.8 で、これらの \fI/proc\fP 経由のインターフェースは、 \fBRLIMIT_SIGPENDING\fP
282 リソース制限に置き換えられた。 これは、キューに入るシグナル数に関してユーザ単位に 上限を指定するものである。 詳しくは \fBsetrlimit\fP(2)
283 を参照。
284 .SS "非同期シグナルで安全な関数 (async\-signal\-safe functions)"
285 .PP
286 シグナルハンドラ関数には非常に注意しなければならない。 他の場所の処理はプログラム実行の任意の箇所で中断される可能性があるためである。 POSIX
287 には「安全な関数 (safe function)」という概念がある。 シグナルが安全でない関数の実行を中断し、かつ \fIhandler\fP
288 が安全でない関数を呼び出した場合、プログラムの挙動は未定義である。
289
290 POSIX.1\-2004 (POSIX.1\-2001 Technical Corrigendum (正誤表) 2 とも言う) では、
291 シグナルハンドラ内での安全な呼び出しを保証することが必須の関数として 以下が規定されている。
292
293 .in +4
294 .nf
295 _Exit()
296 _exit()
297 abort()
298 accept()
299 access()
300 aio_error()
301 aio_return()
302 aio_suspend()
303 alarm()
304 bind()
305 cfgetispeed()
306 cfgetospeed()
307 cfsetispeed()
308 cfsetospeed()
309 chdir()
310 chmod()
311 chown()
312 clock_gettime()
313 close()
314 connect()
315 creat()
316 dup()
317 dup2()
318 execle()
319 execve()
320 fchmod()
321 fchown()
322 fcntl()
323 fdatasync()
324 fork()
325 fpathconf()
326 fstat()
327 fsync()
328 ftruncate()
329 getegid()
330 geteuid()
331 getgid()
332 getgroups()
333 getpeername()
334 getpgrp()
335 getpid()
336 getppid()
337 getsockname()
338 getsockopt()
339 getuid()
340 kill()
341 link()
342 listen()
343 lseek()
344 lstat()
345 mkdir()
346 mkfifo()
347 open()
348 pathconf()
349 pause()
350 pipe()
351 poll()
352 posix_trace_event()
353 pselect()
354 raise()
355 read()
356 readlink()
357 recv()
358 recvfrom()
359 recvmsg()
360 rename()
361 rmdir()
362 select()
363 sem_post()
364 send()
365 sendmsg()
366 sendto()
367 setgid()
368 setpgid()
369 setsid()
370 setsockopt()
371 setuid()
372 shutdown()
373 sigaction()
374 sigaddset()
375 sigdelset()
376 sigemptyset()
377 sigfillset()
378 sigismember()
379 signal()
380 sigpause()
381 sigpending()
382 sigprocmask()
383 sigqueue()
384 sigset()
385 sigsuspend()
386 sleep()
387 sockatmark()
388 socket()
389 socketpair()
390 stat()
391 symlink()
392 sysconf()
393 tcdrain()
394 tcflow()
395 tcflush()
396 tcgetattr()
397 tcgetpgrp()
398 tcsendbreak()
399 tcsetattr()
400 tcsetpgrp()
401 time()
402 timer_getoverrun()
403 timer_gettime()
404 timer_settime()
405 times()
406 umask()
407 uname()
408 unlink()
409 utime()
410 wait()
411 waitpid()
412 write()
413 .fi
414 .in
415 .PP
416 POSIX.1\-2008 では、上記のリストのうち fpathconf(), pathconf(), sysconf()
417 が削除され、以下の関数が追加された。
418 .PP
419 .in +4n
420 .nf
421 execl()
422 execv()
423 faccessat()
424 fchmodat()
425 fchownat()
426 fexecve()
427 fstatat()
428 futimens()
429 linkat()
430 mkdirat()
431 mkfifoat()
432 mknod()
433 mknodat()
434 openat()
435 readlinkat()
436 renameat()
437 symlinkat()
438 unlinkat()
439 utimensat()
440 utimes()
441 .fi
442 .in
443 .SS シグナルハンドラによるシステムコールやライブラリ関数への割り込み
444 システムコールやライブラリが停止 (block) している間にシグナルハンドラが 起動されると、以下のどちらかとなる。
445 .IP * 2
446 シグナルが返った後、呼び出しは自動的に再スタートされる。
447 .IP *
448 呼び出しはエラー \fBEINTR\fP で失敗する。
449 .PP
450 これらの二つの挙動のうちどちらが起こるかは、インターフェイスにより依存し、 シグナルハンドラが \fBSA_RESTART\fP フラグ
451 (\fBsigaction\fP(2)  参照) を使って設定されていたかにも依存する。 詳細は UNIX システムによって異なる。 Linux
452 における詳細を以下で説明する。
453
454 .\" The following system calls use ERESTARTSYS,
455 .\" so that they are restartable
456 以下のインターフェイスのいずれかの呼び出しが停止している間に シグナルハンドラにより割り込まれた場合、 \fBSA_RESTART\fP
457 フラグが使用されていれば、シグナルハンドラが返った後に その呼び出しは自動的に再スタートされることになる。 それ以外の場合は、その呼び出しはエラー
458 \fBEINTR\fP で失敗することになる。
459 .RS 4
460 .IP * 2
461 \fBread\fP(2), \fBreadv\fP(2), \fBwrite\fP(2), \fBwritev\fP(2), \fBioctl\fP(2)  の「遅い
462 (slow)」デバイスに対する呼び出し。 ここでいう「遅い」デバイスとは、I/O 呼び出しが無期限に停止 (block) する
463 可能性のあるデバイスのことで、例としては端末、パイプ、ソケットがある (この定義では、ディスクは遅いデバイスではない)。 遅いデバイスに対する I/O
464 呼び出しが、 シグナルハンドラにより割り込まれた時点までに何らかのデータを すでに転送していれば、呼び出しは成功ステータス
465 (通常は、転送されたバイト数) を返すことだろう。
466 .IP *
467 停止 (block) する可能性のある \fBopen\fP(2)  (例えば、FIFO のオープン時; \fBfifo\fP(7)  参照)。
468 .IP *
469 \fBwait\fP(2), \fBwait3\fP(2), \fBwait4\fP(2), \fBwaitid\fP(2), \fBwaitpid\fP(2).
470 .IP *
471 .\" If a timeout (setsockopt()) is in effect on the socket, then these
472 .\" system calls switch to using EINTR.  Consequently, they and are not
473 .\" automatically restarted, and they show the stop/cont behavior
474 .\" described below.  (Verified from 2.6.26 source, and by experiment; mtk)
475 ソケットインターフェイス: \fBaccept\fP(2), \fBconnect\fP(2), \fBrecv\fP(2), \fBrecvfrom\fP(2),
476 \fBrecvmsg\fP(2), \fBsend\fP(2), \fBsendto\fP(2), \fBsendmsg\fP(2).
477 但し、ソケットにタイムアウトが設定されていない場合 (下記参照)。
478 .IP *
479 ファイルロック用インターフェイス: \fBflock\fP(2), \fBfcntl\fP(2)  \fBF_SETLKW\fP.
480 .IP *
481 POSIX メッセージキューインターフェイス: \fBmq_receive\fP(3), \fBmq_timedreceive\fP(3),
482 \fBmq_send\fP(3), \fBmq_timedsend\fP(3).
483 .IP *
484 \fBfutex\fP(2)  \fBFUTEX_WAIT\fP (Linux 2.6.22 以降; それ以前は常に \fBEINTR\fP で失敗していた)。
485 .IP *
486 POSIX セマフォインターフェイス: \fBsem_wait\fP(3), \fBsem_timedwait\fP(3)  (Linux 2.6.22 以降;
487 それ以前は常に \fBEINTR\fP で失敗していた)。
488 .RE
489 .PP
490 .\" These are the system calls that give EINTR or ERESTARTNOHAND
491 .\" on interruption by a signal handler.
492 以下のインターフェイスは、 \fBSA_RESTART\fP を使っているどうかに関わらず、シグナルハンドラにより割り込まれた後、
493 再スタートすることは決してない。 これらは、シグナルハンドラにより割り込まれると、常にエラー \fBEINTR\fP で失敗する。
494 .RS 4
495 .IP * 2
496 \fBsetsockopt\fP(2)  を使ってタイムアウトが設定されているソケットインターフェース: \fBaccept\fP(2), \fBrecv\fP(2),
497 \fBrecvfrom\fP(2), \fBrecvmsg\fP(2)  で受信タイムアウト (\fBSO_RCVTIMEO\fP)  が設定されている場合と、
498 \fBconnect\fP(2), \fBsend\fP(2), \fBsendto\fP(2), \fBsendmsg\fP(2)  で送信タイムアウト
499 (\fBSO_SNDTIMEO\fP)  が設定されている場合。
500 .IP *
501 シグナル待ちに使われるインターフェイス: \fBpause\fP(2), \fBsigsuspend\fP(2), \fBsigtimedwait\fP(2),
502 \fBsigwaitinfo\fP(2).
503 .IP *
504 ファイルディスクリプタ多重インターフェイス: \fBepoll_wait\fP(2), \fBepoll_pwait\fP(2), \fBpoll\fP(2),
505 \fBppoll\fP(2), \fBselect\fP(2), \fBpselect\fP(2).
506 .IP *
507 .\" On some other systems, SA_RESTART does restart these system calls
508 System V IPC インターフェイス: \fBmsgrcv\fP(2), \fBmsgsnd\fP(2), \fBsemop\fP(2),
509 \fBsemtimedop\fP(2).
510 .IP *
511 スリープ用のインターフェイス: \fBclock_nanosleep\fP(2), \fBnanosleep\fP(2), \fBusleep\fP(3).
512 .IP *
513 \fBinotify\fP(7)  ファイルディスクリプタからの \fBread\fP(2).
514 .IP *
515 \fBio_getevents\fP(2).
516 .RE
517 .PP
518 \fBsleep\fP(3)  関数も、ハンドラにより割り込まれた場合、決して再スタートされることはない。 しかし、成功となり、残っている停止時間を返す。
519 .SS 一時停止シグナルによるシステムコールやライブラリ関数への割り込み
520 Linux では、シグナルハンドラが設定されていない場合でも、 いくつかのブロッキング型のインターフェイスは、 プロセスが一時停止 (stop)
521 シグナルの一つにより停止され、 \fBSIGCONT\fP により再開された後に、エラー \fBEINTR\fP で失敗する可能性がある。 この挙動は
522 POSIX.1 で認められておらず、他のシステムでは起こらない。
523
524 この挙動を示す Linux のインターフェイスは以下の通りである。
525 .RS 4
526 .IP * 2
527 \fBsetsockopt\fP(2)  を使ってタイムアウトが設定されているソケットインターフェース: \fBaccept\fP(2), \fBrecv\fP(2),
528 \fBrecvfrom\fP(2), \fBrecvmsg\fP(2)  で受信タイムアウト (\fBSO_RCVTIMEO\fP)  が設定されている場合と、
529 \fBconnect\fP(2), \fBsend\fP(2), \fBsendto\fP(2), \fBsendmsg\fP(2)  で送信タイムアウト
530 (\fBSO_SNDTIMEO\fP)  が設定されている場合。
531 .IP * 2
532 \fBepoll_wait\fP(2), \fBepoll_pwait\fP(2).
533 .IP *
534 \fBsemop\fP(2), \fBsemtimedop\fP(2).
535 .IP *
536 \fBsigtimedwait\fP(2), \fBsigwaitinfo\fP(2).
537 .IP *
538 \fBinotify\fP(7)  ファイルディスクリプタからの \fBread\fP(2).
539 .IP *
540 Linux 2.6.21 以前: \fBfutex\fP(2)  \fBFUTEX_WAIT\fP, \fBsem_timedwait\fP(3),
541 \fBsem_wait\fP(3).
542 .IP *
543 Linux 2.6.8 以前: \fBmsgrcv\fP(2), \fBmsgsnd\fP(2).
544 .IP *
545 Linux 2.4 以前: \fBnanosleep\fP(2).
546 .RE
547 .SH 準拠
548 POSIX.1 (注記した内容以外)。
549 .SH バグ
550 \fBSIGIO\fP と \fBSIGLOST\fP は同じ値を持っている。 \fBSIGLOST\fP はカーネルのソースではコメントアウトされている。
551 しかし、ソフトウェアによってはビルドの過程でシグナル 29 を \fBSIGLOST\fP とみなしてしまうものがある。
552 .SH 関連項目
553 \fBkill\fP(1), \fBgetrlimit\fP(2), \fBkill\fP(2), \fBkillpg\fP(2),
554 \fBrt_sigqueueinfo\fP(2), \fBsetitimer\fP(2), \fBsetrlimit\fP(2), \fBsgetmask\fP(2),
555 \fBsigaction\fP(2), \fBsigaltstack\fP(2), \fBsignal\fP(2), \fBsignalfd\fP(2),
556 \fBsigpending\fP(2), \fBsigprocmask\fP(2), \fBsigsuspend\fP(2), \fBsigwaitinfo\fP(2),
557 \fBabort\fP(3), \fBbsd_signal\fP(3), \fBlongjmp\fP(3), \fBraise\fP(3),
558 \fBpthread_sigqueue\fP(3), \fBsigqueue\fP(3), \fBsigset\fP(3), \fBsigsetops\fP(3),
559 \fBsigvec\fP(3), \fBsigwait\fP(3), \fBstrsignal\fP(3), \fBsysv_signal\fP(3), \fBcore\fP(5),
560 \fBproc\fP(5), \fBpthreads\fP(7), \fBsigevent\fP(7)