OSDN Git Service

e4d0c344e092c4b70576f0cb922c5e27ae2f4424
[linuxjm/LDP_man-pages.git] / release / man2 / select.2
1 .\" This manpage is copyright (C) 1992 Drew Eckhardt,
2 .\"                 copyright (C) 1995 Michael Shields.
3 .\"
4 .\" %%%LICENSE_START(VERBATIM)
5 .\" Permission is granted to make and distribute verbatim copies of this
6 .\" manual provided the copyright notice and this permission notice are
7 .\" preserved on all copies.
8 .\"
9 .\" Permission is granted to copy and distribute modified versions of this
10 .\" manual under the conditions for verbatim copying, provided that the
11 .\" entire resulting derived work is distributed under the terms of a
12 .\" permission notice identical to this one.
13 .\"
14 .\" Since the Linux kernel and libraries are constantly changing, this
15 .\" manual page may be incorrect or out-of-date.  The author(s) assume no
16 .\" responsibility for errors or omissions, or for damages resulting from
17 .\" the use of the information contained herein.  The author(s) may not
18 .\" have taken the same level of care in the production of this manual,
19 .\" which is licensed free of charge, as they might when working
20 .\" professionally.
21 .\"
22 .\" Formatted or processed versions of this manual, if unaccompanied by
23 .\" the source, must acknowledge the copyright and authors of this work.
24 .\" %%%LICENSE_END
25 .\"
26 .\" Modified 1993-07-24 by Rik Faith <faith@cs.unc.edu>
27 .\" Modified 1995-05-18 by Jim Van Zandt <jrv@vanzandt.mv.com>
28 .\" Sun Feb 11 14:07:00 MET 1996  Martin Schulze  <joey@linux.de>
29 .\"     * layout slightly modified
30 .\"
31 .\" Modified Mon Oct 21 23:05:29 EDT 1996 by Eric S. Raymond <esr@thyrsus.com>
32 .\" Modified Thu Feb 24 01:41:09 CET 2000 by aeb
33 .\" Modified Thu Feb  9 22:32:09 CET 2001 by bert hubert <ahu@ds9a.nl>, aeb
34 .\" Modified Mon Nov 11 14:35:00 PST 2002 by Ben Woodard <ben@zork.net>
35 .\" 2005-03-11, mtk, modified pselect() text (it is now a system
36 .\"     call in 2.6.16.
37 .\"
38 .\"*******************************************************************
39 .\"
40 .\" This file was generated with po4a. Translate the source file.
41 .\"
42 .\"*******************************************************************
43 .\"
44 .\" Japanese Version Copyright (c) 1997 HANATAKA Shinya all rights reserved.
45 .\" Translated 1997-02-23, HANATAKA Shinya <hanataka@abyss.rim.or.jp>
46 .\" Modified 2000-03-12, HANATAKA Shinya <hanataka@abyss.rim.or.jp>
47 .\" Updated & Modified 2001-06-04, Yuichi SATO <ysato@h4.dion.ne.jp>
48 .\" Updated & Modified 2001-07-01, Yuichi SATO
49 .\" Updated & Modifedd 2002-01-14, Yuichi SATO
50 .\" Updated 2002-09-24, Akihiro MOTOKI <amotoki@dd.iij4u.or.jp>
51 .\" Updated 2003-01-19, Akihiro MOTOKI
52 .\" Updated 2005-03-17, Akihiro MOTOKI
53 .\" Updated 2006-04-16, Akihiro MOTOKI, LDP v2.28
54 .\" Updated 2006-07-23, Akihiro MOTOKI, LDP v2.36
55 .\" Updated 2007-09-08, Akihiro MOTOKI, LDP v2.64
56 .\" Updated 2008-08-06, Akihiro MOTOKI, LDP v3.05
57 .\" Updated 2012-05-30, Akihiro MOTOKI <amotoki@gmail.com>
58 .\" Updated 2013-05-06, Akihiro MOTOKI <amotoki@gmail.com>
59 .\"
60 .TH SELECT 2 2012\-08\-17 Linux "Linux Programmer's Manual"
61 .SH 名前
62 select, pselect, FD_CLR, FD_ISSET, FD_SET, FD_ZERO \- 同期 I/O の多重化
63 .SH 書式
64 .nf
65 /* POSIX.1\-2001 に従う場合 */
66 .br
67 \fB#include <sys/select.h>\fP
68 .sp
69 /* 以前の規格に従う場合 */
70 .br
71 \fB#include <sys/time.h>\fP
72 .br
73 \fB#include <sys/types.h>\fP
74 .br
75 \fB#include <unistd.h>\fP
76 .sp
77 \fBint select(int \fP\fInfds\fP\fB, fd_set *\fP\fIreadfds\fP\fB, fd_set *\fP\fIwritefds\fP\fB,\fP
78 \fB           fd_set *\fP\fIexceptfds\fP\fB, struct timeval *\fP\fItimeout\fP\fB);\fP
79 .sp
80 \fBvoid FD_CLR(int \fP\fIfd\fP\fB, fd_set *\fP\fIset\fP\fB);\fP
81 .br
82 \fBint  FD_ISSET(int \fP\fIfd\fP\fB, fd_set *\fP\fIset\fP\fB);\fP
83 .br
84 \fBvoid FD_SET(int \fP\fIfd\fP\fB, fd_set *\fP\fIset\fP\fB);\fP
85 .br
86 \fBvoid FD_ZERO(fd_set *\fP\fIset\fP\fB);\fP
87 .sp
88 \fB#include <sys/select.h>\fP
89 .sp
90 \fBint pselect(int \fP\fInfds\fP\fB, fd_set *\fP\fIreadfds\fP\fB, fd_set *\fP\fIwritefds\fP\fB,\fP
91 \fB            fd_set *\fP\fIexceptfds\fP\fB, const struct timespec *\fP\fItimeout\fP\fB,\fP
92 \fB            const sigset_t *\fP\fIsigmask\fP\fB);\fP
93 .fi
94 .sp
95 .in -4n
96 glibc 向けの機能検査マクロの要件 (\fBfeature_test_macros\fP(7)  参照):
97 .in
98 .sp
99 \fBpselect\fP(): _POSIX_C_SOURCE\ >=\ 200112L || _XOPEN_SOURCE\ >=\ 600
100 .SH 説明
101 \fBselect\fP()  や \fBpselect\fP()  を使うと、プログラムで複数のファイルディスクリプタを監視し、
102 一つ以上のファイルディスクリプタがある種の I/O 操作の 「ready (準備ができた)」状態 (例えば、読み込み可能になった状態)
103 になるまで待つことができる。 ファイルディスクリプタが ready (準備ができた) とは、 対応する I/O 操作 (例えば \fBread\fP(2)
104 など) が停止 (block) なしに実行可能な状態にあることを意味する。
105 .PP
106 \fBselect\fP()  と \fBpselect\fP()  の動作は同じであるが、以下の 3 点が異なる:
107 .TP 
108 (i)
109 \fBselect\fP()  では、タイムアウト時間の指定に構造体 \fIstruct timeval\fP (秒・マイクロ秒単位) を用いる。 一方、
110 \fBpselect\fP()  関数では、構造体 \fIstruct timespec\fP (秒・ナノ秒単位) を用いる。
111 .TP 
112 (ii)
113 \fBselect\fP()  は残り時間を示す \fItimeout\fP 引き数を更新することがある。 \fBpselect\fP()  はこの引き数を変更しない。
114 .TP 
115 (iii)
116 \fBselect\fP()  は \fIsigmask\fP 引き数を持たない。その動作は \fIsigmask\fP に NULL を指定した場合の
117 \fBpselect\fP()  と同じである。
118 .PP
119 3 つの独立したファイルディスクリプタ集合の監視を行う。 \fIreadfds\fP に入れられたディスクリプタについては、読み込みが可能かどうかを 監視する
120 (より正確にいうと、停止 (block) なしで読むことができるかを 調べる。ファイルの終端 (end\-of\-file) の場合も、
121 ファイルディスクリプタは読み込み可能として扱われる)。 \fIwritefds\fP に入れられたディスクリプタについては、停止せずに書き込みが
122 可能かどうかを監視する。 \fIexceptfds\fP にあるものについては、例外の監視を行なう。システムコール終了時に、
123 どのファイルディスクリプタの状態が実際に変化したか示すために、 集合の内容が変更される。
124 ある種別のイベントを監視したいファイルディスクリプタが一つもない場合には、 対応するファイルディスクリプタ集合に NULL を指定することができる。
125 .PP
126 集合を操作するために 4 つのマクロが提供されている。 \fBFD_ZERO\fP()  は集合を消去する。 \fBFD_SET\fP()  と
127 \fBFD_CLR\fP()  はそれぞれ指定したファイルディスクリプタの集合への追加、削除を行う。 \fBFD_ISSET\fP()
128 は集合にファイルディスクリプタがあるかどうか調べる; このマクロは \fBselect\fP()  が終了した後に使うと便利である。
129 .PP
130 \fInfds\fP は 3 つの集合に含まれるファイルディスクリプタの最大値に 1 を足したものである。
131 .PP
132 \fItimeout\fP 引き数で、ファイルディスクリプタが ready になるのを待って
133 \fBselect\fP() が停止する最小の停止時間を指定する
134 (この停止時間はシステムクロックの粒度に切り上げられ、
135 カーネルのスケジューリング遅延により少しだけ長くなる可能性がある)。
136 \fItimeval\fP 構造体の両方のフィールドが 0 の場合、 \fBselect\fP() はすぐに復
137 帰する (この機能はポーリング (polling) を行うのに便利である)。
138 \fItimeout\fP に NULL (タイムアウトなし) が指定されると、 \fBselect\fP() は無
139 期限に停止 (block) する。
140 .PP
141 \fIsigmask\fP は、シグナルマスク (\fBsigprocmask\fP(2)  を参照) へのポインタである。 \fIsigmask\fP が NULL
142 でない場合、 \fBpselect\fP()  は \fIsigmask\fP が指しているシグナルマスクで現在のシグナルマスクを置き換えてから、 "select"
143 関数を実行し、 終了後にシグナルマスクを元のシグナルマスクに戻す。
144 .PP
145 \fItimeout\fP 引き数の精度の違いを除くと、以下の \fBpselect\fP()  の呼び出しは、
146 .nf
147
148     ready = pselect(nfds, &readfds, &writefds, &exceptfds,
149                     timeout, &sigmask);
150
151 .fi
152 次のコールを \fIatomic\fP に実行するのと等価である。
153 .nf
154
155     sigset_t origmask;
156
157     pthread_sigmask(SIG_SETMASK, &sigmask, &origmask);
158     ready = select(nfds, &readfds, &writefds, &exceptfds, timeout);
159     pthread_sigmask(SIG_SETMASK, &origmask, NULL);
160 .fi
161 .PP
162 \fBpselect\fP()  が必要になる理由は、シグナルやファイルディスクリプタの状態変化を 待ちたいときには、競合状態を避けるために atomic
163 なテストが必要になる からである。 (シグナルハンドラが大域フラグを設定して戻る場合を考えてみよう。 この大域フラグのテストに続けて
164 \fBselect\fP()  を呼び出すと、 シグナルがテストの直後かつ呼び出しの直前に届いた時には \fBselect\fP()
165 は永久にハングしてしまうかもしれない。 一方、 \fBpselect\fP()  を使うと、まずシグナルを禁止 (block)
166 して、入ってくるシグナルを操作し、 望みの \fIsigmask\fP で \fBpselect\fP()  を呼び出すことで、前記の競合を避けることができる。)
167 .SS タイムアウト
168 これらの関数で使用される時間関連の構造体は、 \fI<sys/time.h>\fP で
169
170 .in +4n
171 .nf
172 struct timeval {
173     long    tv_sec;         /* 秒 */
174     long    tv_usec;        /* マイクロ秒 */
175 };
176 .fi
177 .in
178
179
180
181 .in +4n
182 .nf
183 struct timespec {
184     long    tv_sec;         /* 秒 */
185     long    tv_nsec;        /* ナノ秒 */
186 };
187 .fi
188 .in
189
190 のように定義されている。 (POSIX.1\-2001 での定義については下記の「注意」を参照)
191 .PP
192 秒単位以下の精度でスリープを実現する 移植性の高い方法として、 3 つの集合全てを空、 \fInfds\fP を 0 、 \fItimeout\fP を NULL
193 でない値に設定して \fBselect\fP()  を呼び出すという方法を使っているコードもある。
194 .PP
195 .\" .PP - it is rumored that:
196 .\" On BSD, when a timeout occurs, the file descriptor bits are not changed.
197 .\" - it is certainly true that:
198 .\" Linux follows SUSv2 and sets the bit masks to zero upon a timeout.
199 Linux では、 \fBselect\fP()  は \fItimeout\fP を変更し、残りの停止時間を反映するようになっているが、
200 他のほとんどの実装ではこのようになっていない (POSIX.1\-2001 はどちらの動作も認めている)。 このため、 \fItimeout\fP
201 を参照している Linux のコードを他のオペレーティング・システムへ 移植する場合、問題が起こる。 また、ループの中で \fItimeval\fP
202 構造体を初期化せずにそのまま再利用して \fBselect\fP()  を複数回行なっているコードを Linux へ移植する場合にも、問題が起こる。
203 \fBselect\fP()  から復帰した後は \fItimeout\fP は未定義であると考えるべきである。
204 .SH 返り値
205 成功した場合、 \fBselect\fP()  と \fBpselect\fP()  は更新された 3 つのディスクリプタ集合に含まれている
206 ファイルディスクリプタの数 (つまり、 \fIreadfds\fP, \fIwritefds\fP, \fIexceptfds\fP 中の 1 になっているビットの総数)
207 を返す。 何も起こらずに時間切れになった場合、 ディスクリプタの数は 0 になることもある。 エラーならば \-1 を返し、 \fIerrno\fP
208 に適切な値が設定される; 集合と \fItimeout\fP は未定義となるので、エラーが起こった後はそれらの内容を信頼してはならない。
209 .SH エラー
210 .TP 
211 \fBEBADF\fP
212 いずれかの集合に無効なファイルディスクリプタが指定された (おそらくは、すでにクローズされたファイルディスクリプタか、
213 エラーが発生したファイルディスクリプタが指定された)。
214 .TP 
215 \fBEINTR\fP
216 シグナルを受信した。
217 .TP 
218 \fBEINVAL\fP
219 \fIn\fP が負、または \fItimeout\fP に入っている値が不正である。
220 .TP 
221 \fBENOMEM\fP
222 内部テーブルにメモリを割り当てることができなかった。
223 .SH バージョン
224 \fBpselect\fP()  はカーネル 2.6.16 で Linux に追加された。 それ以前は、 \fBpselect\fP()  は glibc
225 でエミュレートされていた (「バグ」の章を参照)。
226 .SH 準拠
227 \fBselect\fP()  は POSIX.1\-2001 と 4.4BSD (\fBselect\fP()  は 4.2BSD で最初に登場した) に準拠する。
228 BSD ソケット層のクローンをサポートしている非 BSD システム (System V 系も含む) との間でだいたい移植性がある。しかし System
229 V 系では たいがい timeout 変数を exit の前にセットするが、 BSD 系ではそうでないので注意すること。
230 .PP
231 \fBpselect\fP()  は POSIX.1g と POSIX.1\-2001 で定義されている。
232 .SH 注意
233 \fIfd_set\fP は固定サイズのバッファである。 負や \fBFD_SETSIZE\fP 以上の値を持つ \fIfd\fP に対して \fBFD_CLR\fP()  や
234 \fBFD_SET\fP()  を実行した場合、 どのような動作をするかは定義されていない。 また、 POSIX では \fIfd\fP
235 は有効なファイルディスクリプタでなければならないと規定されている。
236
237 型宣言に関しては、昔ながらの状況では \fItimeval\fP 構造体の 2 つのフィールドは (上記のように) 両方とも \fIlong\fP
238 型であり、構造体は \fI<sys/time.h>\fP で定義されている。 POSIX.1\-2001 の下では、以下のようになっている。
239
240 .in +4n
241 .nf
242 struct timeval {
243          time_t         tv_sec;     /* 秒 */
244          suseconds_t    tv_usec;    /* マイクロ秒 */
245 };
246 .fi
247 .in
248
249 この構造体は \fI<sys/select.h>\fP で定義されており、データ型 \fItime_t\fP と \fIsuseconds_t\fP は
250 \fI<sys/types.h>\fP で定義されている。
251 .LP
252 プロトタイプに関しては、昔ながらの状況で \fBselect\fP()  を使いたい場合は、 \fI<time.h>\fP
253 をインクルードすればよい。 POSIX.1\-2001 の環境で \fBselect\fP()  と \fBpselect\fP()  を使いたい場合は、
254 \fI<sys/select.h>\fP をインクルードすればよい。
255
256 ヘッダファイル \fI<sys/select.h>\fP は libc4 と libc5 にはなく、glibc 2.0 以降に存在する。
257 悪いことに glibc 2.0 以前では \fBpselect\fP()  のプロトタイプが間違っている。 glibc 2.1 から 2.2.1 では
258 \fB_GNU_SOURCE\fP が定義されている場合に、 \fBpselect\fP()  が提供される。 glibc 2.2.2 以降では、
259 \fBpselect\fP()  を使用するには、「書式」に記載された要件を満たす必要がある。
260 .SS マルチスレッド・アプリケーション
261 \fBselect\fP() で監視中のファイルディスクリプタが別のスレッドでクローズされた場合、どのような結果になるかは規定されていない。いくつかの
262 UNIX システムでは、 \fBselect\fP() は停止 (block) せず、すぐ返り、ファイルディスクリプタが ready だと報告される
263 (\fBselect\fP() が返ってから I/O 操作が実行されるまでの間に、 別のファイルディスクリプタが再度オープンされない限り、 それ以降の I/O
264 操作はおそらく失敗するだろう)。 Linux (や他のいくつかのシステム) では、 別のスレッドでファイルディスクリプタがクローズされても
265 \fBselect\fP() には影響を与えない。
266 まとめると、このような場合に特定の動作に依存しているアプリケーションは「バグっている」と考えなければならない。
267 .SS "Linux での注意"
268 このページで説明している \fBpselect\fP() のインターフェースは、glibc に
269 実装されているものである。内部で呼び出される Linux のシステムコールは
270 \fBpselect6\fP() という名前である。このシステムコールは glibc のラッパー
271 関数とは少し違った動作をする。
272
273 Linux の \fBpselect6\fP() システムコールは \fItimeout\fP 引き数を変更する。
274 しかし、glibc のラッパー関数は、システムコールに渡す timeout 引き数と
275 してローカル変数を使うことでこの動作を隠蔽している。このため、glibc の
276 \fBpselect\fP() 関数は \fItimeout\fP 引き数を変更しない。
277 これが POSIX.1\-2001 が要求している動作である。
278
279 \fBpselect6\fP() システムコールの最後の引き数は \fIsigset_t\ *\fP 型の
280 ポインタではなく、以下に示す構造体である。
281 .in +4
282 .nf
283
284 struct {
285     const sigset_t *ss;     /* シグナル集合へのポインタ */
286     size_t          ss_len; /* 'ss' が指すオブジェクトのサイズ
287                                (バイト数) */
288 };
289
290 .fi
291 .in
292 このようにすることで、ほとんどのアーキテクチャがサポートしている
293 システムコールの引き数が最大で 6 個という事実を満たしつつ、
294 \fBpselect6\fP() システムコールがシグナル集合へのポインタとシグナル集合
295 のサイズの両方を取得することができるのである。
296 .SH バグ
297 glibc 2.0 では、 \fIsigmask\fP 引き数を取らないバージョンの \fBpselect\fP()  が提供されていた。
298
299 バージョン 2.1 以降の glibc では、 \fBpselect\fP()  は \fBsigprocmask\fP(2)  と \fBselect\fP()
300 を使ってエミュレートされていた。 この実装にはきわどい競合条件において脆弱性が残っていた。 この競合条件における問題を防止するために
301 \fBpselect\fP()  は設計されたのである。 最近のバージョンの glibc では、カーネルがサポートしている場合には、 (競合が起こらない)
302 \fBpselect\fP()  システムコールが使用される。
303
304 \fBpselect\fP() がないシステムにおいて、シグナルの捕捉を信頼性があり (移植
305 性も高い) 方法で行うには、 自己パイプ (self\-pipe) という技を使うとよい。
306 この方法では、シグナルハンドラはパイプへ 1 バイトのデータを書き込み、
307 同じパイプのもう一端をメインプログラムの \fBselect\fP() で監視する (一杯に
308 なったパイプへの書き込みや空のパイプから読み出しを行った際に起こるであ
309 ろう停止 (blocking) を避けるためには、パイプへの読み書きの際には 非停止
310 (nonblocking) I/O を使用するとよい)。
311
312 .\" Stevens discusses a case where accept can block after select
313 .\" returns successfully because of an intervening RST from the client.
314 .\" Maybe the kernel should have returned EIO in such a situation?
315 Linux では、 \fBselect\fP()  がソケットファイルディスクリプタで "読み込みの準備ができた" と報告した場合でも、 この後で read
316 を行うと停止 (block) することがある。このような状況は、 例えば、データが到着したが、検査でチェックサム異常が見つかり廃棄された時
317 などに起こりえる。他にもファイルディスクリプタが準備できたと間違って 報告される状況が起こるかもしれない。
318 したがって、停止すべきではないソケットに対しては \fBO_NONBLOCK\fP を使うとより安全であろう。
319
320 Linux では、 \fBselect\fP()  がシグナルハンドラにより割り込まれた場合 (つまり \fBEINTR\fP エラーが返る場合)、
321 \fItimeout\fP も変更する。 これは POSIX.1\-2001 では認められていない挙動である。 Linux の \fBpselect\fP()
322 システムコールも同じ挙動をするが、 glibc のラッパー関数がこの挙動を隠蔽している。 具体的には、glibc のラッパー関数の内部で、
323 \fItimeout\fP をローカル変数にコピーし、 このローカル変数をシステムコールに渡している。
324 .SH 例
325 .nf
326 #include <stdio.h>
327 #include <stdlib.h>
328 #include <sys/time.h>
329 #include <sys/types.h>
330 #include <unistd.h>
331
332 int
333 main(void)
334 {
335     fd_set rfds;
336     struct timeval tv;
337     int retval;
338
339     /* stdin (fd 0) を監視し、入力があった場合に表示する。*/
340     FD_ZERO(&rfds);
341     FD_SET(0, &rfds);
342
343     /* 5 秒間監視する。*/
344     tv.tv_sec = 5;
345     tv.tv_usec = 0;
346
347     retval = select(1, &rfds, NULL, NULL, &tv);
348     /* この時点での tv の値を信頼してはならない。*/
349
350     if (retval == \-1)
351         perror("select()");
352     else if (retval)
353         printf("今、データが取得できました。\en");
354         /* FD_ISSET(0, &rfds) が true になる。*/
355     else
356         printf("5 秒以内にデータが入力されませんでした。\en");
357
358     exit(EXIT_SUCCESS);
359 }
360 .fi
361 .SH 関連項目
362 \fBaccept\fP(2), \fBconnect\fP(2), \fBpoll\fP(2), \fBread\fP(2), \fBrecv\fP(2), \fBsend\fP(2),
363 \fBsigprocmask\fP(2), \fBwrite\fP(2), \fBepoll\fP(7), \fBtime\fP(7)
364
365 考察と使用例の書かれたチュートリアルとして、 \fBselect_tut\fP(2)  がある。
366 .SH この文書について
367 この man ページは Linux \fIman\-pages\fP プロジェクトのリリース 3.53 の一部
368 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は
369 http://www.kernel.org/doc/man\-pages/ に書かれている。