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[linuxjm/LDP_man-pages.git] / release / man7 / packet.7
1 .\" This man page is Copyright (C) 1999 Andi Kleen <ak@muc.de>.
2 .\"
3 .\" %%%LICENSE_START(VERBATIM_ONE_PARA)
4 .\" Permission is granted to distribute possibly modified copies
5 .\" of this page provided the header is included verbatim,
6 .\" and in case of nontrivial modification author and date
7 .\" of the modification is added to the header.
8 .\" %%%LICENSE_END
9 .\"
10 .\" $Id: packet.7,v 1.13 2000/08/14 08:03:45 ak Exp $
11 .\"
12 .\"*******************************************************************
13 .\"
14 .\" This file was generated with po4a. Translate the source file.
15 .\"
16 .\"*******************************************************************
17 .\"
18 .\" Japanese Version Copyright (c) 1999 NAKANO Takeo all rights reserved.
19 .\" Translated 1999-12-06, NAKANO Takeo <nakano@apm.seikei.ac.jp>
20 .\" Updated 2001-02-13, Kentaro Shirakata <argrath@ub32.org>
21 .\" Updated 2005-02-21, Akihiro MOTOKI <amotoki@dd.iij4u.or.jp>
22 .\"
23 .TH PACKET 7 2014\-08\-19 Linux "Linux Programmer's Manual"
24 .SH 名前
25 packet \- デバイスレベルのパケットインターフェース
26 .SH 書式
27 .nf
28 \fB#include <sys/socket.h>\fP
29 .br
30 \fB#include <linux/if_packet.h>\fP
31 .br
32 \fB#include <net/ethernet.h> /* L2 プロトコル */\fP
33 .sp
34 \fBpacket_socket = socket(AF_PACKET, int \fP\fIsocket_type\fP\fB, int \fP\fIprotocol\fP\fB);\fP
35 .fi
36 .SH 説明
37 packet ソケットは、デバイスドライバ (OSI レイヤ 2) レベルで 生のパケット (raw packet) を送受信するために用いられる。
38 packet ソケットを使うと、ユーザー空間で物理層の上に プロトコルモジュールを実装することができる。
39
40 \fIsocket_type\fP には \fBSOCK_RAW\fP と \fBSOCK_DGRAM\fP のいずれかを指定する。 \fBSOCK_RAW\fP
41 はリンクレベルヘッダーを含む raw パケットを、 \fBSOCK_DGRAM\fP はリンクレベルヘッダーが削除された加工済みパケットを示す。
42 リンクレベルヘッダー情報は \fIsockaddr_ll\fP で共通のフォーマットで入手できる。 \fIprotocol\fP には IEEE 802.3
43 プロトコル番号を ネットワークバイトオーダーで指定する。 指定できるプロトコルのリストは、インクルードファイル
44 \fI<linux/if_ether.h>\fP を参照。プロトコルを \fBhtons(ETH_P_ALL)\fP
45 にすると、全てのプロトコルが受信される。 外部から来たパケットのうち指定したプロトコルのものは、
46 カーネルに実装されているプロトコルに渡される前の段階で、 packet ソケットに渡される。
47
48 packet ソケットをオープンできるのは、 実効ユーザーID が 0 のプロセスか、 \fBCAP_NET_RAW\fP
49 ケーパビリティを持つプロセスだけである。
50
51 \fBSOCK_RAW\fP パケットでは、パケットをデバイスドライバと受け渡しする際、 パケットデータに変更が行われることはない。
52 パケットの受信時には、アドレスの解析だけは行われ、 標準的な \fIsockaddr_ll\fP
53 アドレス構造体に渡される。パケットの送信時には、ユーザーが指定する バッファーに物理層のヘッダーが含まれている必要がある。
54 パケットはそのまま修正を受けずに、行き先アドレスから決定される インターフェースのネットワークドライバにキューイングされる。
55 デバイスドライバによっては、他のヘッダーを常に追加するものもある。 \fBSOCK_RAW\fP は Linux 2.0 の obosolete な
56 \fBAF_INET/SOCK_PACKET\fP と似ているが、互換性があるわけではない。
57
58 \fBSOCK_DGRAM\fP はやや高位のレベルで動作する。物理ヘッダーは、パケットがユーザーに 渡される前に削除される。 \fBSOCK_DGRAM\fP の
59 packet ソケットを通して送られるパケットは、 \fIsockaddr_ll\fP
60 の行き先アドレスの情報に基づき、適切な物理層のヘッダーが付加されてから、 キューに送られる。
61
62 デフォルトでは、指定したプロトコル型のパケットはすべて packet ソケットに送られる。特定のインターフェースからのパケットだけを
63 取得したい場合には、 \fIstruct sockaddr_ll\fP にアドレスを指定して \fBbind\fP(2)  を呼び、 packet
64 ソケットをそのインターフェースに結び付ける (バインドする)。 バインドの際には、アドレスフィールドのうち \fIsll_protocol\fP と
65 \fIsll_ifindex\fP だけが用いられる。
66
67 \fBconnect\fP(2)  操作は packet ソケットではサポートされていない。
68
69 \fBMSG_TRUNC\fP フラグが \fBrecvmsg\fP(2), \fBrecv\fP(2), \fBrecvfrom\fP(2)  に渡されると、
70 (バッファーサイズより大きかったとしても) 常に実際に通信された パケットの長さが返される。
71 .SS アドレスのタイプ
72 \fIsockaddr_ll\fP はデバイスに依存しない物理層のアドレスである。
73
74 .in +4n
75 .nf
76 struct sockaddr_ll {
77     unsigned short sll_family;   /* 常に AF_PACKET */
78     unsigned short sll_protocol; /* 物理層のプロトコル */
79     int            sll_ifindex;  /* インターフェース番号 */
80     unsigned short sll_hatype;   /* ARP ハードウェア種別 */
81     unsigned char  sll_pkttype;  /* パケット種別 */
82     unsigned char  sll_halen;    /* アドレスの長さ */
83     unsigned char  sll_addr[8];  /* 物理層のアドレス */
84 };
85 .fi
86 .in
87
88 \fIsll_protocol\fP は標準的なイーサネットプロトコルのタイプで、 ネットワーク
89 バイトオーダーで記述する。 インクルードファイル
90 \fI<linux/if_ether.h>\fP で定義されている。 これがこのソケットのプロト
91 コルのデフォルトとなる。 \fIsll_ifindex\fP はそのインターフェースの interface
92 index である (\fBnetdevice\fP(7) を参照)。 0 は (バインドが許可されている) 任
93 意のインターフェースにマッチする。 \fIsll_hatype\fP は、インクルードファイル
94 \fI<linux/if_arp.h>\fP で定義されている ARP 種別である。
95 \fIsll_pkttype\fP はパケット種別である。指定できる種別は以下のいずれかである:
96 \fBPACKET_HOST\fP (ローカルホスト向けのパケット)、 \fBPACKET_BORADCAST\fP (物理層
97 のブロードキャストパケット)、 \fBPACKET_MULTICAST\fP (物理層のマルチキャストア
98 ドレスに送るパケット)、 \fBPACKET_OTHERHOST\fP (他のホストに向けられたパケット
99 のうち、 無差別モード (promiscuous mode: 後述) のデバイスドライバにより補足
100 されたもの)、 \fBPACKET_OUTGOING\fP (ローカルホストから発信され、 packet ソケッ
101 トにループバックしてきたパケット)。 これらの種別が意味を持つのは受信時のみ
102 である。 \fIsll_addr\fP と \fIsll_halen\fP は、物理層の (つまり IEEE 802.3 の)
103 アドレスとその長さである。 厳密な解釈はデバイスに依存する。
104
105 パケットを送る場合は、 \fIsll_family\fP, \fIsll_addr\fP, \fIsll_halen\fP, \fIsll_ifindex\fP
106 を指定すれば十分である。 その他のフィールドは 0 にしておくべきである。 \fIsll_hatype\fP と \fIsll_pkttype\fP
107 には受信したパケットの情報が設定される。 バインドの際には、 \fIsll_protocol\fP と \fIsll_ifindex\fP だけが使用される。
108 .SS ソケットオプション
109 パケットソケットのオプションは、レベル \fBSOL_PACKET\fP を指定して \fBsetsockopt\fP(2) を呼び出すことで設定できる。
110 .TP 
111 \fBPACKET_ADD_MEMBERSHIP\fP
112 .PD 0
113 .TP 
114 \fBPACKET_DROP_MEMBERSHIP\fP
115 .PD
116 packet ソケットは、物理層のマルチキャストや 無差別モード (promiscuous mode) を設定して使うことができる。
117 \fBPACKET_ADD_MEMBERSHIP\fP はバインドを追加し、 \fBPACKET_DROP_MEMBERSHIP\fP
118 はバインドを削除する。これらはいずれも \fIpacket_mreq\fP 構造体を引き数に取る。
119
120 .in +4n
121 .nf
122 struct packet_mreq {
123     int            mr_ifindex;    /* インターフェース番号 */
124     unsigned short mr_type;       /* 動作 */
125     unsigned short mr_alen;       /* アドレスの長さ */
126     unsigned char  mr_address[8]; /* 物理層のアドレス */
127 };
128 .fi
129 .in
130
131 \fImr_ifindex\fP は、ステータスを変更したいインターフェースの インターフェース番号である。 \fImr_type\fP
132 パラメーターは実行する動作を指定する: \fBPACKET_MR_PROMISC\fP は、共有している媒体からの全てのパケットを受信できるようにする
133 (しばしば "無差別モード (promiscuous mode)" と呼ばれる)。 \fBPACKET_MR_MULTICAST\fP は、そのソケットを、
134 \fImr_address\fP と \fImr_alen\fP で指定される物理層のマルチキャストブループにバインドする。
135 \fBPACKET_MR_ALLMULTI\fP は socket を up にして、そのインターフェースに到達したすべての
136 マルチキャストパケットを受信できるようにする。
137
138 昔からある ioctl だけでなく、 \fBSIOCSIFFLAGS\fP, \fBSIOCADDMULTI\fP, \fBSIOCDELMULTI\fP
139 を同じ目的に用いることができる。
140 .TP 
141 \fBPACKET_AUXDATA\fP (Linux 2.6.21 以降)
142 .\" commit 8dc4194474159660d7f37c495e3fc3f10d0db8cc
143 ブール値のオプションを有効すると、 パケットソケットは、パケットと一緒にメタデータ構造体を \fBrecvmsg\fP(2) コントロールフィールドで渡す。
144 この構造体は \fBcmsg\fP(3) を使って読むことができる。 定義は以下の通りである。
145
146 .in +4n
147 .nf
148 struct tpacket_auxdata {
149     __u32 tp_status;
150     __u32 tp_len;      /* パケット長 */
151     __u32 tp_snaplen;  /* キャプチャした長さ */
152     __u16 tp_mac;
153     __u16 tp_net;
154     __u16 tp_vlan_tci;
155     __u16 tp_padding;
156 };
157 .fi
158 .in
159 .TP 
160 \fBPACKET_FANOUT\fP (Linux 3.1 以降)
161 .\" commit dc99f600698dcac69b8f56dda9a8a00d645c5ffc
162 スレッドにまたがって処理をスケールさせるため、 パケットソケットはファンアウトグループを構成することができる。 このモードでは、
163 マッチしたそれぞれのパケットはグループ内のいずれか一つのソケットにだけキューイングされる。 ソケットをファンアウトグループに参加させるには、 レベル
164 \fBSOL_PACKET\fP でオプション \fBPACKET_FANOUT\fP を指定して \fBsetsockopt\fP(2) を呼び出す。
165 ネットワーク名前空間毎に最大 65536 個の独立したグループを持つことができる。 整数のオプション値の先頭 16 ビットに ID
166 をエンコードすることで、 ソケットはグループを選択する。 あるグループへの最初のパケットソケットの参加があった時点で、
167 グループは暗黙のうちに作成される。 既存のグループへの参加が成功するためには、 それ以降にそのグループに参加しようとするパケットソケットは、
168 プロトコロ、 デバイス設定、ファンアウトモード、フラグが同じである必要がある (下記参照)。 パケットソケットがファンアウトグループから抜けるのは、
169 そのソケットをクローズした場合だけである。 ファンアウトグループは最後のソケットがクローズした場合に削除される。
170
171 .\" commit 2d36097d26b5991d71a2cf4a20c1a158f0f1bfcd
172 ファンアウトでは、 複数のソケットにトラフィックを分散させるアルゴリズムを複数サポートしている。 デフォルトのモードである
173 \fBPACKET_FANOUT_HASH\fP では、同じフローのパケットは同じソケットに送信され、 フロー単位の順序が維持される。
174 パケットごとに、パケットフローのハッシュの、そのグループのソケット数に対する剰余が計算され、ソケットが選択される。
175 なお、フローハッシュはネットワーク層のアドレスとトランスポート層のポートフィールドに対するハッシュである (トランスポート層ポートは存在する場合のみ)。
176 負荷分散モード \fBPACKET_FANOUT_LB\fP はラウンドロビンアルゴリズムが採用されている。 \fBPACKET_FANOUT_CPU\fP では、
177 パケットが到着した CPU に基づいてソケットを選択する。 \fBPACKET_FANOUT_ROLLOVER\fP
178 はすべてのデータを一つのソケットで処理し、 そのソケットで処理待ち (backlog) が発生した場合に次のソケットに移る。
179 \fBPACKET_FANOUT_RND\fP では擬似乱数発生器を使ってソケットが選択される。 \fBPACKET_FANOUT_QM\fP (Linux
180 3.14 以降で利用可能) では受信 skb に記録された queue_mapping を使ってソケットが選択される。
181
182 ファンアウトモードでは追加のオプションがある。 IP フラグメンテーションが起こると、
183 同じフローのパケットのフローハッシュが異なるハッシュを持つことになる。 フラグ \fBPACKET_FANOUT_FLAG_DEFRAG\fP
184 をセットすると、 パケットはファンアウトを行う前にフラグメント再構築が行われるようになり、 フラグメントがあった場合でも順序が維持される。
185 ファンアウトモードとオプションは、 整数のオプション値の下位 16 ビットで指定される。 フラグ
186 \fBPACKET_FANOUT_FLAG_ROLLOVER\fP を指定すると、 バックアップ戦略としてロールオーバー方式が有効になる。
187 元のファンアウトアルゴリズムが backlog ソケットを選択していれば、 パケットは次の利用可能なソケットにロールオーバーされる。
188 .TP 
189 \fBPACKET_LOSS\fP (\fBPACKET_TX_RING\fP で使用)
190 送信リングで不正な形式のパケットに遭遇した場合、 デフォルトではそのリングの \fItp_status\fP を
191 \fBTP_STATUS_WRONG_FORMAT\fP に戻し、その送信を直ちに中止する。
192 不正な形式のパケットにより、そのパケット自身とその以降にキューに入れられたパケットの送信がブロックされる。形式エラーを修正し、関連する
193 \fItp_status\fP を \fBTP_STATUS_SEND_REQUEST\fP に設定し直し、\fBsend\fP(2)
194 を使って送信処理を再開しなければならない。 しかしながら、 \fBPACKET_LOSS\fP がセットされている場合、
195 不正な形式のパケットはすべてスキップされ、 その送信リングの \fItp_status\fP は \fBTP_STATUS_AVAILABLE\fP
196 に設定し直され、送信処理は継続される。
197 .TP 
198 \fBPACKET_RESERVE\fP (\fBPACKET_RX_RING\fP で使用)
199 デフォルトでは、パケット受信リングはメタデータ構造体とアライメント用のパディングの直後にパケットを書き込む。
200 この整数オプションを設定すると、パケットの前に追加で領域が予約される。
201 .TP 
202 \fBPACKET_RX_RING\fP
203 非同期でのパケット受信用のメモリーマップされたリングバッファーを作成する。 パケットソケットはアプリケーションのアドレス空間に連続する領域を確保し、
204 そこにパケットスロットの配列を構成し、 (最大 \fItp_snaplen\fP 個の) パケットを順にスロットにコピーする。 各パケットの前には
205 \fItpacket_auxdata\fP に似たメタデータ構造体が置かれる。
206 プロトコルフィールドには、データの、メタデータヘッダーの先頭からのオフセットが入る。 \fItp_net\fP にはネットワーク層へのオフセットが格納される。
207 パケットソケットが \fBSOCK_DGRAM\fP 型の場合、 \fItp_mac\fP も同じである。 \fBSOCK_RAW\fP 型の場合、 \fItp_net\fP
208 にはリンク層のフレームへのオフセットが入る。 パケットソケットとアプリケーションは \fItp_status\fP フィールドを通してリングの先頭
209 (head) と末尾 (tail) の情報を受け渡す。 パケットソケットは \fItp_status\fP が \fBTP_STATUS_KERNEL\fP
210 のすべてのスロットを所有しており、 スロットにデータが入ると、
211 パケットソケットはそのスロットのステータスをアプリケーションに所有権を渡す状態に変更する。 通常の動作では、 新しい \fItp_status\fP
212 で少なくとも \fBTP_STATUS_USER\fP ビットがセットされていれば、 受信されたパケットが格納されたことを示している。
213 アプリケーションがパケットの処理を終えると、アプリケーションはそのスロットの \fBtp_status\fP を \fBTP_STATUS_KERNEL\fP
214 に設定し、そのスロットの所有権をソケットに返す。 パケットソケットは、複数バージョンのパケットリングを実装している。 実装の詳細は Linux
215 カーネルソースツリーの \fIDocumentation/networking/packet_mmap.txt\fP で説明されている。
216 .TP 
217 \fBPACKET_STATISTICS\fP
218 パケットソケットの統計情報を次の構造体形式で取得する。
219
220 .in +4n
221 .nf
222 struct tpacket_stats {
223     unsigned int tp_packets;  /* 総パケット数 */
224     unsigned int tp_drops;    /* ドロップパケット数 */
225 };
226 .fi
227 .in
228
229 統計情報を取得すると、内部カウンターはリセットされる。 \fBTPACKET_V3\fP のリングを使う場合には、統計情報構造体は違うものになる。
230 .TP 
231 \fBPACKET_TIMESTAMP\fP (\fBPACKET_RX_RING\fP で使用; Linux 2.6.36 以降)
232 .\" commit 614f60fa9d73a9e8fdff3df83381907fea7c5649
233 パケット受信リングでは常にタイムスタンプがメタデータヘッダーに格納される。
234 デフォルトでは、タイムスタンプはパケットがリングにコピーされた時点で生成されるソフトウェアによるタイムスタンプである。
235 この整数オプションによりタイムスタンプの種類を選択できる。 デフォルト以外では、 Linux カーネルソースツリーの
236 \fIDocumentation/networking/timestamping.txt\fP に説明がある 2
237 種類のハードウェアフォーマットがサポートされている。
238 .TP 
239 \fBPACKET_TX_RING\fP (Linux 2.6.31 以降)
240 .\" commit 69e3c75f4d541a6eb151b3ef91f34033cb3ad6e1
241 パケット送信用のメモリーマップされたリングバッファーを作成する。 このオプションは \fBPACKET_RX_RING\fP と同様で、同じ引き数を取る。
242 アプリケーションは \fItp_status\fP が \fBTP_STATUS_AVAILABLE\fP のスロットにパケットを書き込み、
243 \fItp_status\fP を \fBTP_STATUS_SEND_REQUEST\fP に変更することでそのパケットの送信を予約する。
244 パケットの送信準備ができたら、アプリケーションは続けて \fBsend\fP(2) 系のシステムコールを呼び出す。 システムコールの引き数 \fIbuf\fP と
245 \fIlen\fP は無視される。 \fBsendto\fP(2) や \fBsendmsg\fP(2) を使ってアドレスが渡された場合、
246 ソケットのデフォルト値ではなくそのアドレスが使用される。 送信に成功すると、ソケットはそのスロットの \fItp_status\fP を
247 \fBTP_STATUS_AVAILABLE\fP に戻す。 エラーの場合、 \fBPACKET_LOSS\fP がセットされていなければ、
248 直ちに送信を中断しエラーを上げる。
249 .TP 
250 \fBPACKET_VERSION\fP (\fBPACKET_RX_RING\fP で使用; Linux 2.6.27 以降)
251 .\" commit bbd6ef87c544d88c30e4b762b1b61ef267a7d279
252 デフォルトでは、 \fBPACKET_RX_RING\fP は \fBTPACKET_V1\fP
253 のパケット受信リングを作成する。別のバージョンのリングを作成するには、そのリングを作成する前に希望するバージョンが使われるようにこの整数オプションを設定すること。
254 .TP 
255 \fBPACKET_QDISC_BYPASS\fP (Linux 3.14 以降)
256 .\" commit d346a3fae3ff1d99f5d0c819bf86edf9094a26a1
257 デフォルトでは、パケットはカーネルの qdisc (トラフィック制御) レイヤー経由で渡される。 これは大半のユースケースに合っている。
258 ネットワークに対して可能な限りパケットを送信する (例えば pkggen と同様の方法で負荷対象のデバイスを試験する)
259 のにパケットソケットを使うトラフィック生成アプライアンスでは、この整数オプションを 1 に設定することで qdisc レイヤーを飛ばすことができる。
260 qdisc レイヤーでのパケットバッファーが行われなくなるという副作用がある。 これにより、
261 ネットワークデバイスの送信キューの使用量が高い場合にパケット廃棄が起きやすくなる。
262 .SS ioctl
263 .\" FIXME Document SIOCGSTAMPNS
264 \fBSIOCGSTAMP\fP を用いると、最後に受信したパケットのタイムスタンプを得ることができる。 引き数は \fIstruct timeval\fP
265 型の変数である。
266
267 さらに、 \fBnetdevice\fP(7)  および \fBsocket\fP(7)  で定義されている標準の ioctl はいずれも packet
268 ソケットに指定可能である。
269 .SS エラー処理
270 packet ソケットは、パケットをデバイスドライバに渡すときに 起きたエラーしか処理しない。遅延エラー (pending error)
271 に関する概念は持っていない。
272 .SH エラー
273 .TP 
274 \fBEADDRNOTAVAIL\fP
275 不明なマルチキャストグループアドレスが渡された。
276 .TP 
277 \fBEFAULT\fP
278 ユーザーが渡したメモリーアドレスが不正。
279 .TP 
280 \fBEINVAL\fP
281 引き数が不正。
282 .TP 
283 \fBEMSGSIZE\fP
284 パケットがインターフェースの MTU より大きい。
285 .TP 
286 \fBENETDOWN\fP
287 インターフェースが up でない。
288 .TP 
289 \fBENOBUFS\fP
290 パケットに割り当てるメモリーが足りない。
291 .TP 
292 \fBENODEV\fP
293 デバイス名が不明。あるいはインターフェースアドレスで指定された インターフェースインデックスが不明。
294 .TP 
295 \fBENOENT\fP
296 パケットを一つも受信していない。
297 .TP 
298 \fBENOTCONN\fP
299 インターフェースアドレスが渡されなかった。
300 .TP 
301 \fBENXIO\fP
302 インターフェースアドレスに不正なインターフェースインデックスが含まれている。
303 .TP 
304 \fBEPERM\fP
305 この操作を行うのに必要な権限をユーザーが持っていない。
306
307 上記以外のエラーが、低レベルのドライバで生成されることがある。
308 .SH バージョン
309 \fBAF_PACKET\fP は Linux 2.2 の新機能である。これより古いバージョンの Linux では \fBSOCK_PACKET\fP
310 のみをサポートしていた。
311 .PP
312 .SH 注意
313 移植性の必要なプログラムでは、 \fBpcap\fP(3)  経由で \fBAF_PACKET\fP を用いることをお薦めする。ただし、この方法では
314 \fBAF_PACKET\fP の機能すべてを利用することはできない。
315
316 \fBSOCK_DGRAM\fP packet ソケットは、IEEE 802.3 フレームの IEEE 802.2 LLC ヘッダーの
317 生成や解析を行おうとしない。 \fBETH_P_802_3\fP が送信プロトコルに指定されると、カーネルは 802.3 フレームを 生成して length
318 フィールドに書き込む。 完全に準拠したパケットを得るためにはユーザーが LLC ヘッダーを 与える必要がある。到着した 802.3 パケットでは、
319 DSAP/SSAP protocol の各フィールドは多重化 (multiplex) されていない。 代わりにこれらは LLC ヘッダーが前置された
320 \fBETH_P_802_2\fP プロトコルとして与えられる。したがって、 \fBETH_P_802_3\fP にバインドすることはできない。かわりに
321 \fBETH_P_802_2\fP にバインドし、自分自身でプロトコルの多重化を行うこと。 送信のデフォルトは、プロトコルフィールドを持つ 標準の
322 Ethernet DIX encapsulation である。
323
324 packet ソケットは入出力の firewall chain に影響をうけない。
325 .SS 移植性
326 Linux 2.0 では、 packet ソケットを得る方法は \fBsocket(AF_INET, SOCK_PACKET,
327 \fP\fIprotocol\fP\fB)\fP を呼ぶやり方しかなかった。この方法はまだサポートされているが、 用いないことを強く推奨する。現在の方法との主な違いは、
328 \fBSOCK_PACKET\fP ではインターフェースの指定に古い \fIstruct sockaddr_pkt\fP
329 を用いる点である。これには物理層からの独立性がない。
330
331 .in +4n
332 .nf
333 struct sockaddr_pkt {
334     unsigned short spkt_family;
335     unsigned char  spkt_device[14];
336     unsigned short spkt_protocol;
337 };
338 .fi
339 .in
340
341 \fIspkt_family\fP はデバイスのタイプ、 \fIspkt_protocol\fP は \fI<sys/if_ether.h>\fP
342 で定義されている IEEE 802.3 プロトコルタイプ、 \fIspkt_device\fP はデバイスの名前をヌル終端された文字列で与えたもの (例:
343 eth0) である。
344
345 この構造体は obsolete であり、 新しくコードを書く時には用いるべきでない。
346 .SH バグ
347 glibc 2.1 には \fBSOL_PACKET\fP の定義がない。回避策としては、以下のようにするとよい。
348 .in +4n
349 .nf
350
351 #ifndef SOL_PACKET
352 #define SOL_PACKET 263
353 #endif
354
355 .fi
356 .in
357 この問題はそれ以降のバージョンの glibc では修正されている。
358
359 IEEE 802.2/803.3 の LLC の扱い方は、バグと考えても良いだろう。
360
361 ソケットフィルターについて記載されていない。
362
363 .\" .SH CREDITS
364 .\" This man page was written by Andi Kleen with help from Matthew Wilcox.
365 .\" AF_PACKET in Linux 2.2 was implemented
366 .\" by Alexey Kuznetsov, based on code by Alan Cox and others.
367 \fBMSG_TRUNC\fP \fBrecvmsg\fP(2)  拡張は非常にまずい対処であり、制御メッセージで置き換えるべきである。 今のところ
368 \fBSOCK_DGRAM\fP 経由でパケットについていた宛先アドレスを得る方法がない。
369 .SH 関連項目
370 \fBsocket\fP(2), \fBpcap\fP(3), \fBcapabilities\fP(7), \fBip\fP(7), \fBraw\fP(7),
371 \fBsocket\fP(7)
372
373 標準 IP Ethernet encapsulation に関しては RFC\ 894 を、 IEEE 802.3 IP encapsulation
374 に関しては RFC\ 1700 を参照。
375
376 物理層のプロトコルに関する記述は \fI<linux/if_ether.h>\fP インクルードファイルにある。
377
378 Linux カーネルのソースツリー。 \fI/Documentation/networking/filter.txt\fP には Berkeley
379 Packet Filters をパケットソケットにどのように適用するかの説明がある。
380 \fI/tools/testing/selftests/net/psock_tpacket.c\fP には、 \fBPACKET_RX_RING\fP と
381 \fBPACKET_TX_RING\fP の利用可能なすべてのバージョンのサンプルソースコードがある。
382 .SH この文書について
383 この man ページは Linux \fIman\-pages\fP プロジェクトのリリース 3.79 の一部
384 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は
385 http://www.kernel.org/doc/man\-pages/ に書かれている。