release/man7/arp.7

   1 .\" t
   2 .\" This man page is Copyright (C) 1999 Matthew Wilcox <willy@bofh.ai>.
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   5 .\" and in case of nontrivial modification author and date
   6 .\" of the modification is added to the header.
   7 .\" Modified June 1999 Andi Kleen
   8 .\" $Id: arp.7,v 1.10 2000/04/27 19:31:38 ak Exp $
   9 .\"*******************************************************************
  10 .\"
  11 .\" This file was generated with po4a. Translate the source file.
  12 .\"
  13 .\"*******************************************************************
  14 .TH ARP 7 2008\-11\-25 Linux "Linux Programmer's Manual"
  15 .SH 名前
  16 arp \- Linux ARP カーネルモジュール
  17 .SH 説明
  18 このカーネルプロトコルモジュールは、 RFC\ 826 で定義されている Address Resolution Protocol を
  19 実装したものである。 ARP は、ダイレクトに接続されたネットワーク上で、 第 2 層のハードウェアアドレスをIPv4 プロトコルアドレスに
  20 変換するために用いられる。ユーザーは設定の場合を除いて 通常直接このモジュールに関ることはない。
  21 これはカーネル内部の他のプロトコルにサービスを提供するものである。
  22
  23 ユーザープロセスは、 \fBpacket\fP(7)  ソケットを用いれば ARP パケットを受信することができる。 ARP
  24 キャッシュをユーザー空間で管理することもできる。 これには \fBnetlink\fP(7)  を用いる。 ARP テーブルも制御可能で、これには任意の
  25 \fBAF_INET\fP ソケットに \fBioctl\fP(2)  を用いる。
  26
  27 ARP モジュールはハードウェアアドレスからプロトコルアドレスへの マッピングのキャッシュを管理する。キャッシュの大きさには制限が
  28 あるので、古いエントリや利用されないエントリはガベージコレクト される。 permanent (保存) マークがつけられたエントリは、
  29 決してガベージコレクタによって消去されない。 ioctl を用いればキャッシュを直接操作することもできる。 また後述の \fI/proc\fP
  30 インタフェースによりキャッシュの振る舞いを調整できる。
  31
  32 存在しているマッピングに対して、 正のフィードバックが一定時間ない (後述の \fI/proc\fP インタフェースを見よ) と、 近傍キャッシュエントリ
  33 (neighbor cache entry) は 古くなった (stale) とみなされる。 正のフィードバックは高位のレイヤーからも取得できる
  34 (例えば TCP ACK が成功した場合など)。 他のプロトコルは、 \fBsendmsg\fP(2)  に \fBMSG_CONFIRM\fP
  35 フラグを用いることによって、 フォワードプログレス (forward progress) をシグナルできる。 フォワードプログレスがなければ、 ARP
  36 は再びプローブを試みる。 まずローカルな arp デーモンに問合わせを行い、 更新された MAC アドレスを取得しようとする。 このリクエストに
  37 \fBapp_solicit\fP 回失敗すると、古い MAC アドレスがわかっている場合は、 unicast のプローブが
  38 \fBucaset_solicit\fP 回送られる。これにも失敗すると、新しい ARP リクエスト をネットワークにブロードキャストする。
  39 リクエストは、データが送信キューになければ送られない。
  40
  41 Linux は、あるアドレスへのリクエストを受信・フォワードし、 受信したインターフェースで代理 arp が有効になっている場合には、
  42 自動的にそのアドレスを nonpermanent な代理 arp エントリに追加する。 そのターゲットに reject route があった場合には、
  43 代理 arp エントリは一切追加されない。
  44 .SS ioctl
  45 すべての \fBAF_INET\fP ソケットでは、 3 つの ioctl が使用できる。 これらは \fIstruct arpreq\fP
  46 へのポインタを引数に取る。
  47
  48 .in +4n
  49 .nf
  50 struct arpreq {
  51     struct sockaddr arp_pa;      /* protocol address */
  52     struct sockaddr arp_ha;      /* hardware address */
  53     int             arp_flags;   /* flags */
  54     struct sockaddr arp_netmask; /* netmask of protocol address */
  55     char            arp_dev[16];
  56 };
  57 .fi
  58 .in
  59
  60 \fBSIOCSARP\fP, \fBSIOCDARP\fP, \fBSIOCGARP\fP は、それぞれ ARP マッピングを設定・削除・取得する。 ARP
  61 マップの設定と削除は特権が必要な操作であり、 \fBCAP_NET_ADMIN\fP 権限を持つプロセスか、実行ユーザー ID が 0 のプロセス
  62 でなければ実行できない。
  63
  64 \fIarp_pa\fP は \fBAF_INET\fP アドレスでなければならず、 \fIarp_ha\fP は \fIarp_dev\fP
  65 で設定されたデバイスと同じタイプでなければならない。 \fIarp_dev\fP はデバイスの名前を示す、ゼロで終端された文字列である。
  66 .RS
  67 .TS
  68 tab(:) allbox;
  69 c s
  70 l l.
  71 \fIarp_flags\fP
  72 フラグ:意味
  73 ATF_COM:参照完了
  74 ATF_PERM:エントリを peramanent にする
  75 ATF_PUBL:エントリを publish する
  76 ATF_USETRAILERS:trailer が必要
  77 ATF_NETMASK:netmask を用いる
  78 ATF_DONTPUB:回答しない
  79 .TE
  80 .RE
  81
  82 .PP
  83 \fBATF_NETMASK\fP フラグがセットされているときには、 \fIarp_netmask\fP が有効でなければならない。 Linux 2.2
  84 は代理ネットワーク ARP エントリをサポートしていないので、 これは 0xffffffff にセットしておくか、あるいは 現存の代理 arp
  85 エントリを削除したい場合には 0 にしておく必要がある。 \fBATF_USETRAILERS\fP は obsolete なので、用いるべきでない。
  86 .SS "/proc インタフェース"
  87 ARP では、グローバルなパラメータやインターフェースごとのパラメータを \fI/proc\fP インタフェースを通して設定することができる。
  88 これらのインタフェースには、 \fIproc/sys/net/ipv4/neigh/*/*\fP ファイルの読み書きによりアクセスできる。
  89 システムにあるそれぞれのインターフェースには、 それぞれ対応するディレクトリが \fI/proc/sys/net/ipv4/neigh/\fP 以下にある。
  90 "default" ディレクトリに対して設定をすると、 それ以降生成されるデバイス全てに対してその設定が用いられる。 特に指定がなければ、時間に関る
  91 sysctl の単位は秒である。
  92 .TP
  93 \fIanycast_delay\fP (Linux 2.2 以降)
  94 .\" Precisely: 2.1.79
  95 IPv6 の近傍要請メッセージ (neighbor soliciation message)  に応答するまでの最大遅延時間 (jiffy 単位)。
  96 anycast のサポートはまだ実装されていない。 デフォルトは 1 秒。
  97 .TP
  98 \fIapp_solicit\fP (Linux 2.2 以降)
  99 .\" Precisely: 2.1.79
 100 ユーザー空間の ARP デーモンに netlink を用いて探索させる最大回数。 これを越えるとマルチキャストによる探索に移行する
 101 (\fImcast_solicit\fP を見よ)。
 102 .TP
 103 \fIbase_reachable_time\fP (Linux 2.2 以降)
 104 .\" Precisely: 2.1.79
 105 近傍のホストがみつかると、そのエントリは \fIbase_reachable_time\fP/2 から 3*\fIbase_reachable_time\fP/2
 106 の間のランダムな値の時間、有効であるとみなされる。 エントリの有効性は、高位のプロトコルからポジティブなフィードバックを
 107 受け取ると延長される。デフォルトは 30 秒。 このファイルは現在は非推奨であり、代わりに \fIbase_reachable_time_ms\fP
 108 を使うこと。
 109 .TP
 110 \fIbase_reachable_time_ms\fP (Linux 2.6.12 以降)
 111 \fIbase_reachable_time\fP と同じだが、時間をミリ秒単位で測る。 デフォルトは 30000 ミリ秒である。
 112 .TP
 113 \fIdelay_first_probe_time\fP (Linux 2.2 以降)
 114 .\" Precisely: 2.1.79
 115 近傍ホストのエントリが古くなったと判断された後に 最初に探索を行うまでの遅延時間。デフォルトは 5 秒。
 116 .TP
 117 \fIgc_interval\fP (Linux 2.2 以降)
 118 .\" Precisely: 2.1.79
 119 ガベージ・コレクタを近傍ホストエントリに対して実行させる頻度。 デフォルトは 30 秒。
 120 .TP
 121 \fIgc_stale_time\fP (Linux 2.2 以降)
 122 .\" Precisely: 2.1.79
 123 古くなった近傍ホストエントリに対してチェックを行う頻度。 近傍ホストエントリが古くなったとみなされると、そのエントリに
 124 データを送る前には再度解決が行われる。 デフォルトは 60 秒。
 125 .TP
 126 \fIgc_thresh1\fP (Linux 2.2 以降)
 127 .\" Precisely: 2.1.79
 128 ARP キャッシュに保存するエントリ数の最小値。 この数より少ないエントリしかキャッシュになければ、 ガベージ・コレクタは実行されない。 デフォルトは
 129 128。
 130 .TP
 131 \fIgc_thresh2\fP (Linux 2.2 以降)
 132 .\" Precisely: 2.1.79
 133 ARP キャッシュに保存されるエントリ数のソフトな最大値。 キャッシュのエントリがこの数を 5 秒間越えつづけると、 ガベージ・コレクタが実行される。
 134 デフォルトは 512。
 135 .TP
 136 \fIgc_thresh3\fP (Linux 2.2 以降)
 137 .\" Precisely: 2.1.79
 138 ARP キャッシュに保存されるエントリ数のハードな最大値。 キャッシュのエントリがこの数を越えると、 ガベージ・コレクタはただちに実行される。
 139 デフォルトは 1024。
 140 .TP
 141 \fIlocktime\fP (Linux 2.2 以降)
 142 .\" Precisely: 2.1.79
 143 ARP エントリをキャッシュに保存する時間の最小値 (jiffy 単位)。 可能性のあるマッピングが一つ以上ある (たいていはネットワーク設定のミス)
 144 場合に、 ARP キャッシュのスラッシングが起きることを防ぐ。 デフォルトは 1 秒。
 145 .TP
 146 \fImcast_solicit\fP (Linux 2.2 以降)
 147 .\" Precisely: 2.1.79
 148 エントリを unreachable マークする前に、 アドレスをマルチキャスト/ブロードキャストで解決しようとする 試行回数の最大値。 デフォルトは
 149 3。
 150 .TP
 151 \fIproxy_delay\fP (Linux 2.2 以降)
 152 .\" Precisely: 2.1.79
 153 既知の代理 ARP アドレスに対して ARP リクエストを受信した場合に、 応答前に最大 \fIproxy_delay\fP jiffy
 154 まで遅延する。これは場合によって生じる ネットワーク・フラッディング (network flooding) を避けるために用いる。 デフォルトは 0.8
 155 秒。
 156 .TP
 157 \fIproxy_qlen\fP (Linux 2.2 以降)
 158 .\" Precisely: 2.1.79
 159 代理 ARP アドレスに対してキューイングできる最大のパケット数。 デフォルトは 64。
 160 .TP
 161 \fIretrans_time\fP (Linux 2.2 以降)
 162 .\" Precisely: 2.1.79
 163 リクエストを再度送るまでの遅延時間 (jiffy 単位)。 デフォルトは 1 秒。 このファイルは現在は非推奨であり、代わりに
 164 \fIretrans_time_ms\fP を使うこと。
 165 .TP
 166 \fIretrans_time_ms\fP (Linux 2.6.12 以降)
 167 リクエストを再度送るまでの遅延時間 (ミリ秒単位)。 デフォルトは 1000 ミリ秒。
 168 .TP
 169 \fIucast_solicit\fP (Linux 2.2 以降)
 170 .\" Precisely: 2.1.79
 171 ARP デーモンへの問い合わせを行う前に行う unicast 探索の最大試行数 (\fIapp_solicit\fP を見よ)。デフォルトは 3。
 172 .TP
 173 \fIunres_qlen\fP (Linux 2.2 以降)
 174 .\" Precisely: 2.1.79
 175 解決されていないアドレスに対して、 他のネットワーク層からキューイングできる最大パケット数。 デフォルトは 3。
 176 .SH バージョン
 177 Linux 2.0 で、 \fIstruct arpreq\fP に \fIarp_dev\fP メンバーが含まれるように変更があった。また同時に ioctl
 178 番号も変更された。古い ioctl は Linux 2.2 で用いることができなくなった。
 179
 180 ネットワークに対する代理 arp エントリ (netmask が 0xffffffff でない)  は、 Linux 2.2
 181 で用いることができなくなった。 これはカーネルによって設定される、別のインターフェースにおける 到達可能なすべてのホストに対する自動代理 arp
 182 によって置き換えられた (そのインターフェースでフォワーディングと代理 arp が有効になっている場合)。
 183
 184 \fIneigh/*\fP の各インタフェースは Linux 2.2 以前には存在しない。
 185 .SH バグ
 186 いくつかのタイマー設定は jiffy で指定されるが、 jiffy はアーキテクチャやカーネルのバージョンに依存する。 \fBtime\fP(7)
 187 を参照のこと。
 188
 189 ユーザー空間からポジティブなフィードバックを送る方法が存在しない。 つまり接続指向 (connection\-oriented)
 190 のプロトコルをユーザー空間で 実装すると、余計な ARP トラフィックの原因となる。 なぜなら ndisc は定期的に MAC
 191 アドレスを再探索するからである。 同様の問題はいくつかのカーネルプロトコル (NFS over UDP など) にも存在する。
 192
 193 この man ページでは IPv4 特有の機能と IPv4・IPv6 で共有される機能とがごっちゃになっている。
 194 .SH 関連項目
 195 \fBcapabilities\fP(7), \fBip\fP(7)
 196 .PP
 197 \fBRFC\ 826\fP: ARP に関する説明
 198 .br
 199 \fBRFC\ 2461\fP: IPv6 neighbor discovery に関する説明と、 利用されている基礎アルゴリズム
 200 .LP
 201 Linux 2.2 以降の IPv4 ARP は、 可能な場合は IPv6 のアルゴリズムを用いる。