release/man7/raw.7

   1 .\" t
   2 .\" Don't change the first line, it tells man that we need tbl.
   3 .\" This man page is Copyright (C) 1999 Andi Kleen <ak@muc.de>.
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   6 .\" and in case of nontrivial modification author and date
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   8 .\" $Id: raw.7,v 1.6 1999/06/05 10:32:08 freitag Exp $
   9 .\"*******************************************************************
  10 .\"
  11 .\" This file was generated with po4a. Translate the source file.
  12 .\"
  13 .\"*******************************************************************
  14 .TH RAW 7 2008\-11\-20 Linux "Linux Programmer's Manual"
  15 .SH 名前
  16 raw, SOCK_RAW \- Linux の IPv4 raw ソケット
  17 .SH 書式
  18 \fB#include <sys/socket.h>\fP
  19 .br
  20 \fB#include <netinet/in.h>\fP
  21 .br
  22 \fBraw_socket = socket(AF_INET, SOCK_RAW, int \fP\fIprotocol\fP\fB);\fP
  23 .SH 説明
  24 raw ソケットを使うと、新しい IPv4 プロトコルをユーザ空間で 実装できるようになる。 raw ソケットは、リンクレベルヘッダを 含まない raw
  25 データグラムの送受信ができる。
  26
  27 IPv4 レイヤは、扱っているソケットで \fBIP_HDRINCL\fP ソケットオプションが有効になっていなければ、 パケットを送信するときに IP
  28 ヘッダを生成する。 \fBIP_HDRINCL\fP オプションが有効になっているときは、パケットには IP ヘッダが含まれていなければならない。
  29 受信時には、 IP ヘッダは常にパケットに含まれている。
  30
  31 実効ユーザー ID が 0 のプロセスか、 \fBCAP_NET_RAW\fP 権限を持つプロセスだけが raw ソケットをオープンすることができる。
  32
  33 この raw ソケットに指定された \fIprotocol\fP 番号にマッチする全てのパケットとエラーとが、このソケットに渡される。
  34 許可されているプロトコルのリストは RFC\ 1700 の割り当て番号と \fBgetprotobyname\fP(3)  を見よ。
  35
  36 \fBIPPROTO_RAW\fP のプロトコルは暗黙のうちに \fBIP_HDRINCL\fP を有効にするので、 渡されたヘッダで指定された、あらゆる IP
  37 プロトコルを送信できる。 \fBIPPROTO_RAW\fP 経由でのあらゆる IP プロトコルの受信は、 raw ソケットを用いては行えない。
  38 .RS
  39 .TS
  40 tab(:) allbox;
  41 c s
  42 l l.
  43 IP ヘッダフィールド。 \fBIP_HDRINCL\fP によって送信時に変更される。
  44 IP チェックサム:常に変更される。
  45 ソースアドレス:元の値が 0 の時に変更される。
  46 パケット ID:元の値が 0 の時に変更される。
  47 全体の長さ:常に埋められる。
  48 .TE
  49 .RE
  50 .sp
  51 .PP
  52 \fBIP_HERINCL\fP が指定されていて、 IP ヘッダに 0 でない送信先アドレスが記入されていた場合は、
  53 その送信先アドレスがパケットの経路を決めるのに用いられる。 \fBMSG_DONTROUTE\fP が指定されている時には、
  54 送信先アドレスはローカルなインターフェースを参照するものでなければならない。 さもないと、ルーティングテーブルの参照はいずれにせよ行われるが、
  55 ゲートウェイが必要な経路は無視される。
  56
  57 \fBIP_HDRINCL\fP がセットされていなければ、 raw ソケットの IP ヘッダオプションを \fBsetsockopt\fP(2)
  58 を用いて設定することができる。詳細な情報は \fBip\fP(7)  を見よ。
  59
  60 Linux 2.2 では、 IP ヘッダの全てのフィールドとオプションとを IP ソケットオプションによって設定できる。したがって raw
  61 ソケットが必要になるのは、新しいプロトコルを設計する場合か、 ユーザーインターフェースを持たないプロトコル (ICMP など) を扱う場合に 限られる。
  62
  63 パケットは、受信されるとまずプロトコルにバインドしている raw ソケットに渡され、 その後で他のプロトコルハンドラ
  64 (カーネルのプロトコルモジュールなど)  に渡される。
  65 .SS アドレスのフォーマット
  66 raw ソケットは標準の \fIsockaddr_in\fP アドレス構造体を用いる。定義は \fBip\fP(7)  でなされている。 \fIsin_port\fP
  67 フィールドを IP プロトコル番号の指定に用いることができるが、 Linux 2.2 ではこれは送信時には無視され、常に 0 にされる (バグ
  68 の項を参照)。 受信パケットに対しては、 \fIsin_port\fP はそのパケットのプロトコルにセットされる。 用いることのできる IP
  69 プロトコルは、インクルードファイル \fI<netinet/in.h>\fP を見よ。
  70 .SS ソケットオプション
  71 .\" Or SOL_RAW on Linux
  72 raw ソケットのオプションは、 \fBIPPROTO_RAW\fP ファミリーフラグを与えて \fBsetsockopt\fP(2)  を呼べば設定でき、
  73 \fBgetsockopt\fP(2)  を呼べば取得できる。
  74 .TP
  75 \fBICMP_FILTER\fP
  76 \fBIPPROTO_ICMP\fP プロトコルにバインドされた raw ソケットのための特殊なフィルタを有効にする。 この値は ICMP
  77 メッセージのタイプそれぞれに対して、どれをフィルターアウト するかを表したビットセットである。デフォルトでは ICMP
  78 メッセージは全くフィルターしない。
  79 .PP
  80 さらに、データグラムソケットに使える全ての \fBip\fP(7)  \fBSOL_IP\fP ソケットオプションがサポートされている。
  81 .SS エラー処理
  82 ネットワークで生じたエラーがユーザに渡されるのは、 ソケットが接続済みの場合か \fBIP_RECVERR\fP フラグが有効になっている場合に限られる。
  83 接続済みのソケットに対しては、 \fBEMSGSIZE\fP および \fBEPROTO\fP だけが渡される (互換性のため)。 \fBIP_RECVERR\fP
  84 を設定すると、全てのネットワークエラーがエラーキューに保存される。
  85 .SH エラー
  86 .TP
  87 \fBEACCES\fP
  88 ユーザーが broadcast フラグを設定していないソケットを用いて ブロードキャストアドレスに送信を行おうとした。
  89 .TP
  90 \fBEFAULT\fP
  91 不正なメモリアドレスが与えられた。
  92 .TP
  93 \fBEINVAL\fP
  94 引き数が不正。
  95 .TP
  96 \fBEMSGSIZE\fP
  97 パケットが大きすぎる。 Path MTU Discoverry が有効になっている (\fBIP_MTU_DISCOVER\fP ソケットフラグ)
  98 か、パケットのサイズが IPv4 で許されている パケットサイズの最大値 64KB を越えている。
  99 .TP
 100 \fBEOPNOTSUPP\fP
 101 ソケット呼び出しに不正なフラグ (\fBMSG_OOB\fP など) が渡された。
 102 .TP
 103 \fBEPERM\fP
 104 ユーザーは raw ソケットをオープンする権限を持っていない。 実行ユーザー ID が 0 のプロセスか、 \fBCAP_NET_RAW\fP
 105 属性を持つプロセスだけがこれを行うことができる。
 106 .TP
 107 \fBEPROTO\fP
 108 パラメータの問題を報告する ICMP エラーを受け取った。
 109 .SH バージョン
 110 \fBIP_RECVERR\fP と \fBICMP_FILTER\fP は Linux 2.2 で登場した。これらは Linux での拡張であり、
 111 移植性の必要なプログラムでは用いるべきでない。
 112
 113 Linux 2.0 では \fBSO_BSDCOMPAT\fP ソケットオプションをセットすると、 BSD の raw
 114 ソケットにあるバグに互換性を取ることができた \(em Linux 2.2 以降では、このオプションはもはや効力を持たない。
 115 .SH 注意
 116 デフォルトでは、raw ソケットは Path MTU Discovery を行う。 つまり、カーネルは特定の宛先 IP アドレスの MTU
 117 (Maximum Transmission Unit; 最大転送単位) を記録し、raw パケットの書き込みが MTU を超えた場合
 118 \fBEMSGSIZE\fP を返す。 \fBEMSGSIZE\fP を返された場合、アプリケーションはパケットサイズを小さくすべきである。 ソケットオプション
 119 \fBIP_MTU_DISCOVER\fP または \fI/proc/sys/net/ipv4/ip_no_pmtu_disc\fP ファイルを使って Path
 120 MTU Discovery を無効にすることもできる (詳細は \fBip\fP(7)  を参照)。 Path MTU Discovery
 121 を無効にした場合は、パケットサイズが インタフェースの MTU よりも大きいと raw ソケットはそのパケットを フラグメント化して送出する。
 122 しかしながら、性能と信頼性の理由から Path MTU Discovery を 無効にするのは推奨できない。
 123
 124 \fBbind\fP(2)  システムコールを用いると、 raw ソケットを 特定のローカルアドレスにバインドさせることができる。
 125 このバインドがされていない場合は、指定した IP プロトコルの すべてのパケットが受信される。 さらに、 \fBSO_BINDTODEVICE\fP
 126 を用いれば raw ソケットを特定のネットワークデバイスに バインドさせることもできる。 \fBsocket\fP(7)  を見よ。
 127
 128 \fBIPPROTO_RAW\fP ソケットは送信専用である。もしどうしてもすべての IP パケットを 受信したい場合は、 \fBpacket\fP(7)
 129 ソケットを \fBETH_P_IP\fP プロトコルで用いること。 packet ソケットは raw ソケットのように IP
 130 フラグメントを再構成しないことに注意。
 131
 132 datagram ソケットに対するすべての ICMP パケットを受信したい場合は、 特定のソケットに対して \fBIP_RECVERR\fP
 133 を用いるほうが良い場合が多い。 \fBip\fP(7)  を見よ。
 134
 135 raw ソケットは、 Linux のすべての IP プロトコルを受信することができる。 ICMP や TCP
 136 のように、カーネル内部にプロトコルモジュールを持つような ものも可能である。この場合には、パケットはカーネルモジュールと raw
 137 ソケットの両方に渡される (raw ソケットが複数あればそれぞれに渡される)。 移植性の必要なプログラムではこの機能に依存するべきではない。 他の多くの
 138 BSD におけるソケットの実装ではこの点において制限がある。
 139
 140 Linux はユーザーから渡されたヘッダを決して変更しない (ただし \fBIP_HDRINCL\fP の説明にあるように、 0
 141 をいくつか埋める場合を除く)。 これは他の多くの raw ソケットの実装では異なる。
 142
 143 一般に raw ソケットは移植性がないことが多いので、 移植性が必要なプログラムでは避けるべきである。
 144
 145 raw ソケットへの送信では、 IP プロトコルを \fIsin_port\fP から取得できなければならない。この機能は Linux 2.2
 146 では使えなくなった。 \fBIP_HDRINCL\fP を用いれば同様のことが実現できる。
 147 .SH バグ
 148 透過プロクシ (transparent proxy) 拡張については記述していない。
 149
 150 \fBIP_HDRINCL\fP オプションがセットされているとデータグラムはフラグメント化されず、 インターフェースの MTU の大きさに制限される。
 151
 152 .\" .SH AUTHORS
 153 .\" This man page was written by Andi Kleen.
 154 送信用の IP プロトコルの設定を \fIsin_port\fP にしておく機能は Linux 2.2 から使えなくなった。
 155 ソケットにバインドされているプロトコルか、最初の \fBsocket\fP(2)  コールによって指定されたプロトコルが常に用いられる。
 156 .SH 関連項目
 157 \fBrecvmsg\fP(2), \fBsendmsg\fP(2), \fBcapabilities\fP(7), \fBip\fP(7), \fBsocket\fP(7)
 158
 159 パス MTU 発見に関する情報は \fBRFC\ 1191\fP にある
 160
 161 IP プロトコルに関しては \fBRFC\ 791\fP とインクルードファイル \fI<linux/ip.h>\fP を参照。